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かまいたちの嫁~妖怪女子高生と退魔教師は今日も怪異を斬る~  作者: 鬼喜怪快
第七章 百鬼夜行の夜

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76話 吹鬼姫


 

 意識を取り戻した

 風吹の右手には——

 

 嵐の愛刀、

 漆黒の大剣が握られていた。



「これはにいにの大剣……

 どうして?」



 しかし風吹はすぐに理解する。



「やっぱ。

 こんなに可愛い妹のピンチは

 ほっとけないか!」



 八岐大蛇は足を止めて、

 風吹の右手にある大剣を見た。



「あれは……嵐の漆黒の大剣!

 どうしてあの小娘が?」



 風吹は立ち上がる。


 かまいたちが自身の刃を顕現するのに、

 妖気は必要ない。


 そして今の風吹には、

 鬼切丸から受け取った鬼気が宿っている。

 妖気が尽きる心配もなかった。


 今、懸念すべきことは——


 彼女に宿る鬼気に、

 心と身体が

 どれくらい耐えられるかだった。



「アイツ……ほんまようわからん奴やな。

 今度はえらいゴッツイ武器持ってるやん。

 あんなもん振り回せるんかいな?」



 風吹は立ち上がると、

 身の丈の2倍はある大剣を軽々と振りかざした。



「そうか!

 かまいたちの刃は身体の一部や。

 持ち主にとっては、重さなんて関係あらへんのか!」



 八岐大蛇が風吹を睨みつける。



「臆病者の嵐から受け継いだ刃など

 恐るるに足りん」


「キッショい顔したおっさん1人のくせに

 八岐大蛇って名乗ってるバカが、

 にいにを侮辱すんじゃねーよ」


「なんだと!」


「8竜姿の方が威圧感あって

 強そうなんじゃねーの?

 支配竜って名前は強そうだけど

 見た目陰気なおっさんじゃん!」


「兄妹揃ってバカどもがぁ!」



 今度は八岐大蛇から仕掛けてきた。

 全身を硬質化させた攻撃。



「武器を持ったところで、

 強さは変わらん!」


「……」


「今度は確実に殺してや——」



 ——斬っ!



 漆黒の大剣が、

 縦に一刀振り下ろされた。



 時間が一瞬止まったような感覚——


 飛びかかった八岐大蛇の

 頭頂から胸元まで、

 鎧のような皮膚を深々と切り裂いた。



「ぎゃあぁぁーっ!」



 八岐大蛇の全身から血が噴き出る。



「本気出して再生と進化されたら

 厄介だからな……

 じっくりコトコト煮込んでやるよ!」



 八岐大蛇は脱皮を繰り返し、

 再生を始める。



「鎌切はアホな顔してよく見とるな。

 進化は死にかけた時に再生することで

 発動しよる……

 それを見抜いての攻撃か」


「誰がアホな顔だぁ!」


「なんやお前!

 耳まで強なっとるんかい!」


「あったりまえでしょ!

 今のわたしは風吹改め——

 すべてが最強・吹鬼姫《ふぶきひめ》だもん」


「……大きく出たな。

 普通自分で言うことちゃうで!?」



 苦悶の表情を見せる八岐大蛇。


 岩魚坊主の封印陣と結界竜の

 2重の拘束術を発動させた。



「おらぁーっ!」



 吹鬼姫は気合いで破壊。

 そのまま斬撃に入った。



「……鎌切強いな。

 普通に戦ったらアイツの勝ちや。

 ただ再生と進化が厄介すぎる。

 1発で仕留めなあかんし、

 大技はミスれへん!」



 今のところ、風吹優勢——



「ちまちました攻撃ばかりなら

 消耗戦になってまう。

 そうなると鎌切不利や。

 かといって、大技出して進化されたら

 もう……」



 店長の心配は当たっていた。


 風吹は強い。

 ただ、その力は永続的な力ではない。


 鬼気を宿し、

 漆黒の大剣を振るう覚醒状態は

 長くは持たない。



 八岐大蛇はそれに気づいている。



「ふふふっ。

 その力、いつまで続くのかな?」


「ふん!

 一生だよ!」


「見栄を張るな。

 すごい汗だ……

 身体が悲鳴をあげているんだろう」


「再生だとか言って、

 皮膚をベロベロベロベロめくってる

 お前を見ての冷や汗だよ!」


「口だけは達者だ……」



 八岐大蛇は再び、

 岩魚坊主の封印陣と結界竜の

 拘束術を同時に発動させた。



「だからそれは効かないって!」



 再び風吹は気合いだけで破壊した。



「はぁ、はぁ、だるっ!」


「くくくっ。

 塵も積もれば山となる……

 人間は面白いことを言うものだ」


「……つまんね!

 何言ってんのお前?」



 八岐大蛇は3度目の、

 岩魚坊主の封印陣と結界竜の

 拘束術を発動させた。

 


「効かないって!

 うざったいなぁ!」



 3度目も、

 風吹は気合いだけで破壊した。



 しかしそれだけでは終わらない。


 4度目……5度目……6度目……


 八岐大蛇は、

 立て続けに2重の拘束術を発動させた。


 風吹はすべての術を弾き飛ばした。


 しかし——


 


「はぁ、はぁ、はぁ……」

 

「こういうことだ、

 かまいたち……」


「しつこっ!」


「戦闘経験の差が出たな。

 本気を出すタイミングを

 見計らっているせいで、

 思うようにお前は動けない……

 時間が経てば経つほど身体の負担は大きくなる」


「……」


「そこへ俺が封印術をかけ続ければ、

 お前の体力はいっそう削られていく」


「……削れてねーし!」


「簡単なゲーム攻略方法を

 見つけた時と同じ気分だよ……

 もうゲームクリアだ!」



 今度は風吹から突っ込む。


 八岐大蛇は笑いながら、

 結界の壁を5重に張った——


 風吹は大剣で、

 すべて破壊していくが、

 その間に八岐大蛇は後方に身を引いた。



「逃げんなよ!」


「逃げてない。

 これは戦略だ」



 突進する風吹に、

 結界の壁を張り続けて、

 体力を削ろうとする八岐大蛇。



「あかん……。

 経験値の差か……

 俺が動けたら……くそっ!

 あと少しなんや

 踏ん張ってくれ鎌切!」



 再び風吹を5重の結界が囲んだ。



「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」


 

 大剣を握る右手が震えていた。


 

「思ったより早い限界だったな」


「……まだまだっ!」


「もういい……

 その強がりは見飽きた」



 5重の結界が風吹を挟み込んだ。

 そして足元には岩魚坊主の封印陣が浮かぶ。



「おうらぁ!」


 ——結界が破れない。


「……あれ?」


 封印術も破壊できない。


 明らかに、

 風吹の体力は消耗していた。



「チェックメイト……」



 八岐大蛇の身体から、

 巨大な口を開けた竜が姿を現した。



 ——捕食竜。



「今からお前を食ってやる。

 これでお前の力を模倣できる……」


「お前がこの鬼気に

 耐えられる訳ねーだろ

 お腹壊して終わりだってーの!」


「それならそれで、

 お前だけ飲み込んで

 あとは吐き出すだけだ……

 そんなこともできないと思っていたのか?」


「……くっ!」



 店長はなす術がなかった。


 封印陣を内側から力いっぱい

 殴りつける。


 妖術が封印されているため、

 力が入らず

 どうしても抜け出すことができない。



「鎌切!

 なんとか抜け出して撤退せぇ!

 出直しや!

 火鳥くんと妖狐と作戦練って再戦したらええんや!」


「そんな時間、

 与える訳ないだろ!」



 捕食竜はさらに口を大きく開けて

 風吹へ襲いかかった。



「鎌切っ!」



 ——バクンッ!



 捕食竜の口が閉じられた。


 

 風吹を喰らうわけでもなく

 風吹の目の前で——


 

 捕食竜の頭に

 一本の棒が突き刺さっている。


 その金棒が捕食竜の口を閉じさせ、

 頭ごと地面へ縫い付けたのだ。



 その棒は、

 金棒と呼ぶには細すぎる鬼の得物。


 ——金鬼丸だった。



「なんやあれ!?」


「!」

 


 全員が、

 金棒の飛んできた空を見上げた。


 風吹は目を輝かせて歓喜する。



「先生!」



 そこには朧車に乗って駆けつけた——

 

 社亮介の姿があった。


 

  

 

 


 

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