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かまいたちの嫁~妖怪女子高生と退魔教師は今日も怪異を斬る~  作者: 鬼喜怪快
第七章 百鬼夜行の夜

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73話 八岐は尚も生きる


 

 放たれた火球は切断され、

 店長の目の前で消滅した。

 

 店長の目の前に、

 前髪を焦がされて怒る

 ヒーローが到着したのだ。


 

「おいおい!

 カッコ良すぎる登場やん。

 こんなできるアルバイト、

 うちにおったかいな?」

 

「縮れてない?

 こっちの前髪、絶対に縮れてるよね!?」


「そんなんええから、前の奴に集中せえや!」

 

「ええことないわ!

 前髪にはいつも気合入れてんだよぉ!」

 

 

 店長のピンチに現れたのは、

 鬼切丸を携えた風吹だった。



「先生から今日も可愛いねっ、て

 思われなくなったらこいつのせいだ!」


「想像の話で機嫌を損ねるな!

 お前は少し危機感を持てや!」


「?」



 風吹は店長が封印陣の中で

 封印されていることに

 ようやく気づいた。



「店長、封印されたの?」


「そや!

 俺を封印するくらいの敵っちゅうこっちゃ!」


 

 ——風吹爆笑!



「店長、ダッサッ!」


「笑うな!

 八岐大蛇は喰うた妖怪の能力を

 コピーしよるんや」


「八岐大蛇?」


「俺が召喚した妖怪を喰って、

 そいつが使う封印術を返されてこのざまなんや!」


「こいつが八岐大蛇かよ!」


「驚くとこそっち!」


 

 風吹は八岐大蛇を睨みつけた。

 兄・嵐が臆したと言った大妖怪が目の前にいる。



「にいに……

 こんな奴に偉そうに使われて」


「嵐の妹か……」


「ぶん殴ってやりたいと思ってたんだ!」


「ふふっ。

 兄がお世話になりました。

 が先だろう……教育がなってないな」


「うるせぇーっ!」



 風吹が飛び掛かろうとする。



「待て!

 とにかく俺の封印を解け!

 お前じゃ勝てん!」


「店長はそこで大人しくしてろって!」


「せやから動けへんねん!」



 風吹突進——


 

 火を吐いていた竜は、

 風吹に向かって

 凍てつく風雪を吐き出した。


 風吹はその攻撃をかわし、

 素早く竜の懐まで移動する。


 鬼切丸で竜の腹を

 斬り裂こうとした瞬間——


 すべてを食らう竜が、

 横から飛びかかってきた。


 迫り来る大きな口を回避し、

 距離をとる。

 すかさず抜刀の構えに入り、

 再び突進——


 鬼切丸を振り抜く瞬間、 

 新たな竜が現れた。

 5匹目の竜だ。


 風吹の斬撃から他の竜を庇うように、

 5体目の竜が自らの身体を盾にした。


 

 ——ガキンッ!


「!」



 鬼切丸が弾かれた。


 何度も斬りつける——


 しかし、

 甲羅のように硬い皮膚を持った

 その竜に刃は通らず、

 ダメージを与えられない。


 

 防御特化型の竜のようだ。


 

「鎌切!

 八岐大蛇は8つの頭を持っとるけど、

 1匹の竜なんや!

 そこに突っ立っとる目付きの悪い人型が

 本体で司令塔や!」


「あのニヤニヤしてる

 キッショい奴を斬れってことね!」


「そやけど、

 とりあえずこの封印を解けって!」


「どうやって解くのさ!?」


「そらお前、術者を倒すか

 解印の術を!」


「ここってさ、コイツの結界内だろ?

 さっきから妖術が上手く練れないんだよ!」


「なんやて!」


「妖術がわたしも使えないしさ、

 物理攻撃でぶっ倒さないと

 封印陣が解けないんだよ!」


「この程度の結界で術を封じられんなよ!」


「はぁ!

 自分の術で封じられてる店長に

 言われたくないし!」


「岩魚坊主の封印術は、

 半端ないホンマもんの封印なんや!

 八岐大蛇の即席結界とは訳が違うんじゃ!」


「言い訳は口答えー!

 ダッサッ!」


「お前絶対に時給下げたるからな!」



 風吹の目は血走り、

 うっすらと牙が生えた。


 全身に鬼に見られる紋様が

 浮かび上がる。


 風吹は鬼切丸の鬼気を身体に宿した。

  

 とにかく本体を叩かなければ倒せない。


 今は5つの頭に翻弄されているが、

 “5つの能力を持つ1匹の竜”と

 戦っていると思えばいい。


 風吹は考えを切り替えた。

 


「いっくぞー!」



 鬼気を纏った風吹は、

 先ほどまでとは別人のような速さで駆けた。


 5体の竜の猛攻を躱し、

 即座に斬撃を返す——



「妖抜刀術・旋毛切!」


「ぐおおーぉぉーっ!」



 防御特化型の竜は、

 甲羅のような皮膚を斬り裂かれ、

 叫び声を上げた。



「まさか!」


 

 人間体の八岐大蛇も驚いている。

 

 続けざまに——


  

「妖抜刀術・乱切!」



 他の4体にも斬撃を与え、

 次々に竜の頭が地に落ちていく。



「なんだよ……

 術を封じた相手には強いけど、

 わたしみたいな物理攻撃使いには

 てんで弱いじゃん!」


「舐めるなよ!」



 まだ姿を見せない

 残りの3竜——


 風吹はその力を出される前に

 勝負をつける。


 本体である人間体の八岐大蛇へ——


  

「妖抜刀術・大鎌切!」 



 横一閃。



 身体はあっさりと切断され、

 上半身が崩れるように転がった。



「ばっ……馬鹿な……

 この俺が!」



 八岐大蛇は現実を

 受け入れられない表情を見せた。


 

「おいおい!

 アイツやりよったで!」



 店長も予想外の結末に

 ただ驚いている。



「鵺の方が、

 お前よりよっぽど強えーし!」



 そう言いながら、

 鬼切丸の刃先を転がる人間体の顔に向けた。


 すると、

 店長が風吹に向かって声を上げた。


 

「鎌切!

 はよトドメをさせ!

 何しよるかわからんぞ!」


「大丈夫だって!

 何もできないよ、こんなやつ!」


「アホか!

 コイツは八岐大蛇やぞ!

 ややこしいで有名な奴や!」


「平気だって……」



 焦る店長を横目に、

 風吹は八岐大蛇を見下ろした。

 

 新四天王のボス。

 日本の妖怪の王を目指した者の姿には

 とても見えない無様な姿だった。



「なんでこんな奴に、

 にいにはビビっちまったんだよ……」


「……」


「遺言聞いてやるよ。

 何かある?」


「クソが……

 何が遺言だ……」



 八岐大蛇は地面を掻きむしりながら、

 悔しさを滲ませた。



「ないなら斬るけど……」


「……そうだな。

 1つだけ言っておこうか……」


「?」

 


「年配者の言うことは

 しっかりと聞くべきだ!

 かまいたち!」

 


「!」



 次の瞬間——


 上半身の背から新しい2体の竜が

 姿を見せた。



「往生際が悪いな!

 またぶった斬ってやるよ!」



 2竜に向かって鬼切丸を

 振るった。



 ——ガスッ!



 刃が通らない。



「えっ?」



 そのまま、

 八岐大蛇の上半身は

 吸い付けられるように

 下半身へ戻っていく。



「なっ、なんだ!?」



 気がつけば、

 何事もなかったように

 八岐大蛇が立ちはだかっていた。



「ほら……

 すぐにトドメを刺さないからぁ……」



 八岐大蛇が笑みを浮かべた




  

 

 

 

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