↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
かまいたちの嫁~妖怪女子高生と退魔教師は今日も怪異を斬る~  作者: 鬼喜怪快
第七章 百鬼夜行の夜

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
67/80

67話 数々の誤算


 


 青天の霹靂——

  

 八岐大蛇は大きく目を見開いた。

 

 麒麟の妖気が消えたことで

 結界が晴れ、

 状況を確認できるようになったからだ。

 


 それは彼にとって、

 あまりに想定外の出来事だった。


 妖狐と元人間に差し向けた麒麟が、


 ——まさかの敗北。


 神獣が殺されたのだ。


 八岐大蛇の理解が、

 現実に追いつかなかった。



「ほう、結界が解けて中がよう見えるわ。

 麒麟、死んでもうてるやん……」


「……麒麟が負けた?」


「誤算か?

 まぁ、俺からしても

 火鳥君と鎌切の強さは嬉しい誤算やわ」

 

「鎌切?

 妖狐の気が消えている」


「お前、ほんまに状況掴めてへんな。

 嵐の妹が助けに来て、

 妖狐は現場を離れたんや」 


「……」


「お前……采配が無茶苦茶やで。

 状況確認のためのサポート役も

 そばに置かんと、ひとりでいるし……」


「……多少の状況がわかれば

 こと足りる。

 わたしの戦いに、仲間など不要なのさ」


「それは計画通りに行ってる奴のセリフやで。

 狂い始めた時は、仲間おった方が

 いいに決まってるやん」


 

 新四天王の計画は、

 すでに大きく狂い始めていた。



 最初の大誤算は、 

 やはり鵺の参戦。


 なりを潜めていた鵺が、

 このタイミングで

 姿を見せるとは思っていなかった。


 そして夜行の独断——

 新四天王の頭脳である夜行が、

 かまいたち討伐ではなく、

 鵺討伐を優先してしまったこと。


 さらに、

 想像すらしていなかった、

 麒麟の敗北——



 新四天王の計画では、

 麒麟、鈴鹿御前、夜行率いる百鬼夜行は、

 任務を完了すれば、

 八岐大蛇のもとに集結する段取りだった。 


 その圧倒的な力を見せつけ、

 土蜘蛛の首を取るつもりだった。

 

 しかし今——


 八岐大蛇の計画は、

 確実に崩れ始めていた。


 

「どんな予定してたんか知らんけど、

 人間社会の仕事でも売上計画が

 狂ってきたら見直すもんやで……」


「……」


「俺と鞍馬山の連中を相手するのに、

 ちょいと計画が甘かったんちゃうか?」



 土蜘蛛が、

 バカを諭すような態度で

 八岐大蛇へダメ出しを喰らわせた。



 ―――――――



 鞍馬山の迷い家。


 九尾に覚醒し、

 金色の髪へと変わった氷花と

 鈴鹿御前が対峙している。

 

 先ほどまで冷静で冷淡だった鈴鹿御前は、

 明らかに表情を歪めた。



「玉藻の娘だって!?

 あの忌々しい女の娘かぁ!」


「母を……知っているの?」


「気に食わない女。

 なにをするにも、

 あの女のせいでわらわの存在は霞んでいた。

 本当に気に入らない化け物よ」


「そう……」


「いつかこの手で

 殺してやろうと思うていたわ。

 森羅万象を操るなどと仰々しい逸話が

 あるだけの化かし上手の狐風情が!

 わらわの死霊の術の前でも、

 そんなことが言えるものかのぉ!?」


「母のせいで、君は霞んでいたの?」


「そうじゃ!

 いつも御前と言えば玉藻!

 最強の女妖怪といえば九尾……

 わらわの名は、

 いつも玉藻の次に挙げられてきた!」


「それは気の毒にねぇ……

 でもさ」


「殺せるなら娘でも良しよ!」


「……お母様は君のことを知らないってさ」



 その言葉を聞いた

 鈴鹿御前は怒り狂った。


 冷静な佇まいは消え、

 鬼の形相で九尾を睨みつける。


 手のひらを地面に向け、

 妖気を集中させ始めた。



「いでよ……死霊たち。

 その姿を現し、

 忌まわしき敵の首をわらわへ捧げよ!」



 死者を蘇らせて傀儡のように扱う

 鈴鹿御前の秘術。

 

 死霊の術が発動する――


 

 はずだった。

 


 「……!」

 


 何も起こらない。


 

 「なぜ? なぜじゃ!?」

  


 鈴鹿御前は何度も

 術を発動させようとした。

 

 しかし死者からの応答はない。

 今まで一度もこんなことはなかった。


 死霊の術を諦め、

 妖術へ切り替えるしかない。

 


「!?」

 


 それも発動しない——

 


「どうして!?」

 


 氷花はまっすぐに見つめて答えた。



「呪いで……

 君の術の発動を禁じたからさ」 


「!?」 


「デバフというやつさ。

 わたし相手に呪い対策もせず、

 感情的に向かってくるなんて……

 かわいいところあるじゃないか——御前」



 鈴鹿御前は唇を噛んだ。


 鈴鹿御前は、

 九尾が最強と恐れられる理由を

 理解し始めることになる。


 森羅万象を操るなどの逸話は、

 決して大袈裟ではなかったのだ。


 九尾の狐は、

 すでにこの空間を支配していたのだから……

 

 

 ——誤算の始まり。


 

 計画では

 そもそも九尾の出現など

 想定すらしていなかった。


 しかし、

 鈴鹿御前には引けない理由があった。


 積年の恨み——


 いや……積年の嫉妬。



「わらわをまともに

 相手したくないわなぁ九尾よ……

 術を封じるなど姑息な手を

 使わねば怖いのだろう?

 日本最強の妖怪が聞いて呆れるわ……」

 


 負け惜しみに近い挑発。

 


「姑息な手だって?

 突然ひとの安息の地へ上がり込んで

 蹂躙した君のどの口が言っているの?」


「妖怪のくせに、

 こんなところでヌクヌクと

 生活している雑魚たちだ!

 準備していたとして、

 わらわに勝てはせん!」


「でも君は、

 こんなところでヌクヌクと生活していた

 わたしに今から殺される……」


「はぁ!?

 やれるものならやってみな!」


「安心しなよ。

 今から君は

 死んでも殺し続けてあげるから……」 



 牛丸を殺された氷花の怒りは、

 冷静な彼女を誰よりも冷酷に変えていった。



 ―――――――



 鵺の紫雷《むらさきいかずち》が天地を裂く。



 夜行は影に潜り続け、攻撃を躱す。


 夜行が引き連れていた

 使い魔はすでに全滅。

 

 すでに一騎討ちの構図が完成していた。


 雨女は、

 自身の回復に集中している。


 首を突かれたのが致命的だった。

 

 回復で辛うじて生きてはいるが、

 あと一撃でも喰らえば命はなかった。



 雨女は、

 ふたりの戦いを見続けるしかなかった。

 

 鵺の雷が四方八方へ飛び交うのに、

 雨女には当たらない。


 ——遮蔽物もないのに。


 まるで、

 雷が雨女を守っているようだった。



 そして、

 夜行のあの刀。


 呪刀。

 切った者へ深い呪いを付与するものだ。


 体力も妖力も削り、

 能力を乱す。

 解除に膨大な妖力が必要だった。


 鵺が来なければ、

 間違いなく雨女は死んでいた。



「ちまちま隠れやがって!

 これだから影使いとか

 陰気な連中は嫌いなんだ!」



 鵺は呪刀に気付いているのか?


 夜行を警戒し距離を

 取っているように見えた。

 


 ――その瞬間。


 

 雨女の背後の影から夜行が現れた。



「お前のような雑魚が、

 どうして鵺と手を組んでいるのか……

 お前は今のうちに殺しておく」 


 呪刀が振り抜かれる。

 

 バチバチッ――! 


 稲妻が割って入り、夜行を弾き飛ばした。



「チッ……」


 

 夜行は再び影に消えた。


 

 雨女には、

 一つだけ確信できたことがあった。


 

「麒麟の居場所がわからなかったって

 嘘じゃん……

 鵺はボクを助けに来てくれたんでしょ?」


「知るかよ。

 しょうもないこと言ってねーで

 とっとと回復して、どっか行きやがれ」

 


 鵺と夜行。

 怒れる稲妻が、闇を裂く。





  

 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。