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かまいたちの嫁~妖怪女子高生と退魔教師は今日も怪異を斬る~  作者: 鬼喜怪快
第七章 百鬼夜行の夜

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66話 番狂わせ



 

 麒麟は全力の斥力の術を放ち、

 風吹を吹き飛ばした。



 その際に生まれた一瞬の隙——


 

 麒麟の腹部には

 突き刺さる腕があった。


 爆炎を纏った煉の腕。


 斥力の術で、

 木っ端微塵にしたはずの煉の突きだ。

  


 火の鳥の型——

  

 火の鳥とは、

 鳥の姿をした火の神の名称。

 それを人の姿をした火の神へと変えたのが

 火の鳥の型になる。


 

 煉は、

 天狗の牛丸でも習得できなかった

 火の鳥の型を習得していた。


 そして今——

 実戦で初めて、その型を発動させた。



「……爆ぜる直前、

 身体が揺らめく炎に変化したのを見た。

 あれは……攻撃に移る動きでは

 なかったのか?」



 麒麟は足元に目を落とす。

  

 弾き落としたはずの火炎玉。 

 それは地面に落ちたあとも燃え続けていた。


 その炎の中から、煉が姿を現して

 麒麟の身体を貫いていた。



「どうして……

 どうしてこんな……ことが!?」


「なんだよ!

 燃えてるじゃん、馬!」



 立ち上がった風吹が驚いている。



「火鳥、お前生きてたのかよ!

 身体がスゲェー燃えてるじゃん!

 大丈夫かよ?」


「うん、

 ギリギリ大丈夫かな……」


 

 か細い声を上げながら

 後ずさる麒麟。

 

 しかし、煉の背中から生えた炎の尾羽が

 麒麟の身体を縛りつける。


 全身を振り乱して逃れようとするが、

 麒麟の身体は勢いよく燃え上がった。



「そんな……この私が!」


「これで終わりだ」



 麒麟の腹に突き刺した腕の炎が、

 さらに燃え上がり——



 爆発を起こした。



 ——ズドーンッ!

 

 

 麒麟の身体は、

 先ほどの煉と同様に吹き飛び、

 頭だけが転がった。

 

 それでもまだ、

 麒麟には意識はあった。



「全身を吹き飛ばした……はず。

 それなのに私がやられて……

 なぜ……だ?」


「この火の鳥の型は発動時、

 全身が炎のなって、

 完全な不死状態になれるんだ。

 妖力がある限り絶対に死ぬことがないんだよ」


「死なない……身体?」


「そして火の鳥の型の使用時には、

 飛び火の術で、瞬間移動みたいに

 炎間を自由に行き来できる」


 

 先ほど弾き落とした火炎玉の残火。


 その炎の間を、

 自由に飛び回る——飛び火の術。


 全身を弾き飛ばされても死なない火の神は、

 残火へと移動し——


 隙を見せた麒麟の腹を射抜いたのだ。


 

「……ふは……はっ

 ……ははっ」


「お前は警戒心が強いから、

 油断させる必要があった。

 でも上手くいったよ」


「まったく……

 情報とはぜんぜん違う強さだ」


「火の鳥の型は

 実戦で使ったことないから

 誰も存在を知らない切り札だった……」

 

「そうか、

 かまいたちの娘が鬼化までして

 攻めて来たのも、

 すべての意識をかまいたちに

 向けさせるための囮……だったか」



 風吹は、

 煉と麒麟の静かな視線に気づいた。



「……そっ、その通りだぜ!

 はははっ……」


 

 風吹はしっかりと空気を読んだ。

 

 麒麟はゆっくりと目を閉じながら

 呟いた。



「この神獣・麒麟。

 よもや、

 妖怪もどきとかまいたち風情に

 遅れをとったか……」



 すると、

 その言葉に風吹が応えた。


 

「そうやって馬もどきが、

 すぐにひとを見下すから

 負けるんだよ!

 バーカ!」

  


 麒麟は表情を変えることもなく——


 ただ黙って、

 静かに塵となって消えていった。



 風吹の全身から、

 鬼の模様が消え、

 鬼切丸が右手に戻った。



「うん!

 やっぱり、わたしは

 このスタイルが落ち着くかな」


  

 煉は麒麟の妖気が消えたのを確認して

 型を解いた。


 絶対に死なない火の鳥の型は

 妖力の消耗が激しい。


 そして——

 残火を自在に飛び回る

 飛び火の術の使用で、

 残る力はわずかだった。


 煉は、膝から崩れた。



「おい、大丈夫か?」


「……こんなところで

 かなりの妖力を使ってしまった。

 早く氷花さんのところに……

 行かないと」


「お前は休んでろって、

 わたしが代わりに行って来てやるからさ。

 迷い家への行き方教えてくれよ」


「……」


「おい?」


「通行用の木札も、

 朧車も……

 氷花さんが持ってった……」


「ん?

 どういうこと?」


「……僕たちだけじゃ、

 迷い家に向かえない……」


「エェッ!」


「……なんてバカなんだ僕は」



 移動手段がないふたり。

 

 風吹は腕を組んで考える。


 肌感知では、

 距離があって周りの状況がわからない。



「火鳥。

 時間がもったいないから、

 とにかくお前はここで休んでろ」


「鎌切さんはどうするの?」


「他の場所でも百鬼夜行が

 行われてるらしいからさ、

 わたしはそこに行ってくる」


「……場所は?」

 

「さっき店長が北の方にも

 妖怪の群れがいるって言ってたんだ。

 北に向かえばなんかわかるっしょ」



 風吹のスマホが揺れた。



「おっ、先生からだ!

 もしもーし!」


「うん!

 無事だよ。

 うん!

 倒した!

 うん!

 倒す!

 うん!

 OK!

 はーい!」


「おし!

 これで元気いっぱい!

 愛情いっぱい!」

 


 煉は、

 今のやりとりが妙に気になった。



「社さんは……なんて?」


「こっちに来たいから、

 朧車を回してくれだって」


「来てくれるんだ。

 それは助かるよ」



 風吹が煉の肩に手をおいた。



「火鳥は少し休んどけよ」


「……」

 

「とりあえず朧車を召喚して、

 店長のとこ行くよ。

 それから先生のところへ

 朧車を向かわす」


「……すみません。

 少し休んだら

 僕もすぐに向かいます」


「先生が来てくれるんだ。

 あんたが復活する頃には、

 わたしと先生で全部解決だぜ!」



 そう言うと、

 風吹は北へと向かって走っていった。


  

 新四天王の一角を崩した

 風吹と煉。

 

 この勝利は、

 新四天王に大きな衝撃を与える。

 


 ――――――



 落雷の音とともに

 目を開けると、

 夜行の50体もの使い魔たちが

 死んでいた。


 鵺が雨女の前に立ち、

 夜行へ殺意と怒りを露わにしている。



「子分が世話になったみてぇだな!

 こら、夜行!」



 雨女はぐったりした様子で、

 顔をあげた。


  

「鵺……」


「おうおう、

 弱いのに無理すんじゃねーよ!」


「無理してないよ……

 逃げ回ってただけ……」



 夜行が鵺を睨んでいる。


 

「都合がいい……

 ノコノコと戻ってくるとはな」


「強がんなよ雑魚が。

 今からあっさり殺してやるわ」


「ここでお前を始末すれば、

 俺たちは俺たちの夢に

 さらに近づける——」


「夢だのなんだの言って、

 死んでいったバカを山ほど見てきたぜ!」 



 鵺と夜行。

 新旧の四天王の戦いが、

 始まろうとしていた。





 

 

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