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かまいたちの嫁~妖怪女子高生と退魔教師は今日も怪異を斬る~  作者: 鬼喜怪快
第七章 百鬼夜行の夜

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65話 覚醒



「鵺が来た?」


「!?」


 

 視覚共有している偵察用の蜘蛛が

 鵺の姿を捉えた。


 間違いない。

 鵺が夜行のもとへ降り立っている。


 

「鵺も動きだしとるやんけ?」


「鵺?

 どうして奴も?

 機会を狙っていたのか?」


「鵺が結界壊したからよく見えるわ、

 今から鵺と夜行のタイマンや」


「なに?」



 八岐大蛇が驚いている。


 そこで店長は理解した。

 

 八岐大蛇の計画に綻びが出たこと。

 

 そして——

 八岐大蛇は戦場の状況を

 感知しきれていないことに……

 


「なんか計画狂ってんのちゃう?」


「多少のズレは想定内だよ」


「……鵺の登場が多少のズレかいな」



 かくいう店長も、

 状況を把握しきれていない。


 店長として心配なのは、

 従業員の風吹と火鳥。


 

 彼らを助けるために、

 目の前の八岐大蛇を

 いち早く始末しなければならない——



 ——————

 


 麒麟の結界内。


 麒麟は妖術ではなく、

 神通力という術で攻撃してくる妖怪だ。


 重力を自在に操り、

 引力や斥力を武器にしている。

 接近戦が得意な風吹には、

 相性の悪い相手だった。


 しかし、

 煉は鳳凰の炎術で、

 距離を取りながら攻め込んでいた。


 大気中の火気を麒麟の周辺に集め

 爆発——



 ズドドドドーン!



 斥力の術で爆発は弾かれた。


 麒麟は無傷だ。



「隙ありーっ!」



 立ち昇る砂埃の中から

 風吹が斬撃で攻める。


 次の瞬間——

 引力の術で、

 引き寄せられたバイクが風吹に直撃する。



「ぐぁっ!」



 バイクもろとも

 民家の壁に吹き飛ばされた。



 煉は火球を連続で放った。



 「!」



 それもすべて弾かれた。


 弾かれた爆炎は麒麟の足元や周囲に散らばり、

 地面でメラメラと炎を上げた。



「つまらない戦いだな。

 直線的な攻撃ばかりで、

 あくびが出てくる……」


「……悪かったね。

 直線的な攻撃しかできなくて」



 爆炎を右手に纏わせて突進する。

 麒麟の懐に入り、

 勢いよく胸元へ手刀を突き込む!



 バチッ――!



 突きを繰り出した煉の身体ごと、

 斥力の術で弾き飛ばされて

 民家へと叩きつけられた。


 結界内の別空間だけあって、

 激しい衝撃を受けても

 建物や地面は壊れることはない。



 「!」



 急激に身体が重い。


 ——これは?



「お前たちの足元に引力の術を掛けた。

 通常の10倍ほどの重さだ。

 もう動けまい……」



「引力の術か……

 いろいろな使い方があるもんだ。

 確かに……動けない」


 氷花も同じように、

 あらゆる術を弾かれ、

 動きを封じられながら

 戦っていたのだろう。


 氷花の苦戦が容易に想像できた。



「妖狐は大したことがなかった。

 お前たちは期待したのだが……

 やはりこの程度か……」



 麒麟は先ほどから一歩も動かず、

 術だけでふたりと戦っている。

 

 余程自分の力に自信があるのだろう。



「自慢の炎は役に立たず、

 切り札の鬼切丸も届かない。

 このまま死ぬなど、

 悔しくて死に切れんだろう?」


「僕たちはいっぱい動いて

 攻撃しているのに、

 お前はそこから一歩も動かず

 僕たちを追い込んでいる……すごいと思うよ」


「ふん、それは賞賛か?

 それとも命乞いのつもりでいるのかな?」


「純粋に賞賛だよ」


「挑発しているな?

 それには及ばない。

 この距離でもお前たちを

 屠る力くらいあるのだよ。

 無暗に近づいて反撃の機会を

 与えるような真似はしない」



 麒麟。


 状況判断が早く、

 このような優勢な場面でも油断を見せない。


 そして、

 さらに身体へのしかかる重力を上げてくる。



「おらぁーっ!」



 風吹が突っ込んでいく。

 


「今は20倍の重力だぞ。

 それでも突進してくるとは

 大したものだ」


「!」



 ——パァーンッ!



「うわぁ!」



 風吹は斥力の術で弾き飛ばされ、

 地面に伏した。 



「鎌切さん!」


「他人を心配している場合か?」


「?」


 

 突然、煉の体内に何かが

 入り込んでくるような違和感が走った。



「なんだ?」


「鳳凰の死は身体の半分以上の欠損だったかな。

 いま、私の斥力の術をお前の体内に仕掛けた」


「!」


「私が妖気を解放すれば、

 斥力がお前の身体の中から発動し

 木っ端微塵だ——

 もう、復活など不可能だよ」



 麒麟が扱う重力の術は、

 引力と斥力の中心点を決めてから

 発動させている。

 

 今までは自身を中心に術を

 発動させていたが、

 今は煉の体内を中心点とし、

 内側から弾き飛ばすつもりだ。


 

 ――体内に時限爆弾を

 仕掛けられたようなものだった。



「今から妖狐を追う。

 伝えておくことはあるか?」


「気が利くことを言ってくれるね……」


「見ての通り、

 私は紳士なのさ」



 風吹が立ち上がる。

 不吉な予感が身を締め付ける。



「おい、火鳥!

 一旦逃げろ!

 やばい攻撃が来そうだ!」 



 風吹の声は煉に届かない——

 

 

「それじゃあ、お言葉に甘えるかな」


「長いセリフはお断りだがね」


「!」



 突然、煉の身体が赤く染まり、

 揺らめく炎そのものへと変わり始めた。


 次の瞬間——



 バーンッ!



 煉の全身が花火のように爆ぜた——



「火鳥ーっ!」



 飛び散った無数の火が、

 地面に落ちていく。



「あぁ!」


「最後に何か攻撃を仕掛けようとしていた。

 遺言を伝えるチャンスを失ったな……

 馬鹿な奴だ」


「くそっ!

 よくも火鳥を!

 動けよ、わたしの身体ぁ!」


「今は30倍ほどの重力だ。

 いつも通りになど動けないぞ」


「女狐になんて言えばいいんだよ!」


「ふふふっ。

 本当に愉快で馬鹿な生き物だ」


「お前は絶対に許さないからな!

 今から、

 その馬鹿の本気を見せてやる!」



 風吹がそう言うと、

 顕現されていた鬼切丸が、フッと消えた。


 そして、

 目は血走り、

 うっすらと牙が生える。


 顔と身体には鬼に見られる紋様が

 はっきりと浮かび上がった。


 風吹から感じられる妖気が、

 妖気ではなく、

 完全な鬼気へと変わっている。



「なっ……何だ?

 その姿は!?」


「ちょっと待ってよ鬼切丸!

 あんたから100%の鬼気を受けると

 あんた消えちゃうの!?」


「……これは鬼ではないか!?」

 

「あんたいないと、

 わたし素手で戦うことになるじゃん!」



 麒麟は咄嗟に判断した。


 このかまいたちは……

 いや、

 この鬼は——危険だと。



「まぁ、いいや。

 鬼切丸がそう判断したんだよな?

 100%の鬼気を発揮しないと、

 こいつに勝てないって!」


「50倍の重力をかける!」


「火鳥の仇はとってやるぞ!」



 50倍の重力など気にもせず、

 風吹が突進する。



「バカな!」



 ——バキッ!



 風吹の拳が麒麟の顔に入った。



「オラオラオラオラオラオラ!」



 麒麟を素手で打ちのめす風吹。



 誇り高き麒麟は無様な呻き声をあげた。



「うががががはぁーっ!」


「トドメだぁ!」



 鬼切丸の鬼気を100%授かった風吹の、

 渾身の一撃——



「いい気になるなよぉ!」



 麒麟が全力の斥力の術を放った。

 風吹の身体が吹き飛ばされて、

 地面に叩きつけられた。



「かまいたちと思ってはいけない!

 あれは真の鬼だ……

 鬼神……

 そうだ、酒呑童子を相手にしていると

 考えて——」


「……」


「!」


 

 麒麟の腹部に突き刺さる腕が見えた。


 それは爆炎を纏った煉の腕。


 斥力の術で木っ端微塵になったはずの煉が、

 火の神の姿となって

 放った突きだった――

  


 


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