59話 迫り来る新四天王
酒呑童子は軽々と
金鬼丸を持ち上げた。
「鬼に金棒。
その言葉……
昔、人間が我を見て作った言葉だ」
酒呑童子は餓者髑髏を見上げ、
右から左へ横一線に
金棒を振り抜いた。
その瞬間――
周辺の空気と音が消し飛び、
空間が裂けるのが見えた。
ゆっくりと金棒を右肩に掛け、
餓者髑髏を見上げる。
餓者髑髏も無数の骸たちも、
完全に動きを止めていた。
「鈴鹿御前よ……
餓者髑髏を遣わすなど
つまらんことをするな。
用があるなら自ら来い」
踵を返す酒呑童子。
次の瞬間——
餓者髑髏と骸たちは塵となり、
払われた埃のように散って消えた。
金棒の一振りで、
すべてに決着をつけた。
『お見事です。酒呑童子』
「金鬼丸を振るうほどでもなかったわ」
『鈴鹿御前が
近くにいるのでしょうか?』
「餓者髑髏は鈴鹿御前の使い魔にすぎん。
様子見か、足止めか……」
『どうして我々を?』
「知らん……。
今は考えても仕方あるまい。
そろそろ身体を入れ替えるぞ」
金棒が消え、
社の身体へ戻る。
学校全体を覆っていた結界も解かれた。
結界の効果により、
生徒たちは何も覚えていない。
「風吹が心配です。
朧車は風吹が乗って帰っているので、
あちらに向かえない……」
『放っておけ。
必要なら迎えが来よう……』
「……風吹。
無事でいてくれればいいんだけど」
――――――
新四天王が集う迷い家。
「……おぉ」
「どうした、鈴鹿御前?」
「噂に違わぬ強さよ、酒呑童子。
餓者髑髏が瞬殺だ……」
八岐大蛇の迷い家に、
夜行、麒麟、鈴鹿御前が集っていた。
今宵の計画のため、
酒呑童子が動かぬよう
監視に向かわせた餓者髑髏。
それがいとも容易く
始末されたことは誤算だった。
「京都から動けぬ奴など
放っておけばよかったのだ。
これで大切な手駒をひとつ失った」
「黙れ夜行。
今ここで死にたいのかえ?」
「落ち着きなよ、ふたりとも」
八岐大蛇が制する。
「今夜だ……
今夜の百鬼夜行は予定通り決行する。
標的と配置は説明した通りだ」
「鵺はどうする?」
「あれから音沙汰無しだ。
今は放っておく」
「すべて始末していいのだな?」
「そうだね。
もし命乞いする者がいるようであれば
考えてやってもいい」
新四天王が、
この国の新たな妖怪の顔となるため、
今宵、百鬼夜行が行われる。
彼らの標的は、
旧四天王と、その仲間の妖怪たちだ。
——————
ケンちゃんのフライドチキン。
17時を過ぎた頃。
「店長、今日もよろしく!」
「よろしくお願いしますや!
どんな教育受けてきてん、お前!」
入店早々、注意される風吹。
「無視するよりいいだろ?」
「ええことあるかい。
もうちょい礼節を学んで来い」
「土蜘蛛がそれ言う?」
「……土蜘蛛言うなって。
ここでは店長や、あほんだら」
風吹はユニフォームに着替えるため
更衣室に入った。
「まだ成瀬来てないの?」
「あいつは18時から入っとる」
「よし!
こき使ってやるぞ!」
「こき使う前に、
お前が仕事覚えろや」
ふたりはこれから起こることも知らず、
いつも通りの会話を交わしていた。
油断をしていたわけではない。
今日もアルバイトが終われば、
氷花、火鳥と合流して、
情報交換をする約束をしていた。
氷花は牛丸の指示で、
新四天王への警戒のために
鞍馬山の妖怪たちの指揮にあたっている。
また、
氷花と牛丸が全国の妖怪に通達したことで、
各地の妖怪がそれぞれの方法で、
警戒網を敷いて襲撃に備えていた。
しかし――
その警戒網すら掻い潜り、
すでに新四天王は、
すぐそこまで迫っていたのだ。




