↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
かまいたちの嫁~妖怪女子高生と退魔教師は今日も怪異を斬る~  作者: 鬼喜怪快
第七章 百鬼夜行の夜

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
58/80

58話 鬼に金棒



 社が勤める京都の高校——


 

 もうすぐ6限目が終わる頃——


 教科書を読み上げながら、

 社は空を見上げた。

 

 さっきまで明るかった空が、

 どんよりと曇っていく。



 「嫌な空だな……」



 数日前、

 氷花と出会った時を思い出した。

 

 社は空の雰囲気で、

 妖怪の接近を感知できる。



『亮介。

 今日もお前を目当てに、

 訪ねてくる者がいるようだ』


「えぇ、そのようですね」


『今日の奴は

 ……殺気の塊だ』



 社は教科書を閉じた。

 

 生徒たちが驚いて社を見上げる。



「残りの時間は自習だ」


「どうしたの? 先生」


「俺が戻るまで教室から出ないこと。

 ……いいね」



 教室を出ると、

 妖気の反応が集まっている

 グラウンドへと走る。

 

 その頃、

 グラウンドではすでに

 異変が起きはじめていた。


 土が盛り上がり、何かが姿を現す。

 全身が骨だけでできた

 骸の化け物たちが、

 次々と出現した。



 「キャアァァー!」



 悲鳴が校舎に響いた。

 

 生徒たちが

 骸骨の群れに驚いている。 


 社は3階廊下の窓から飛び降りた。



「先生!

 ここ3階やで!」 



 社は軽やかに着地し、

 そのまま走り出した。


 生徒たちは驚きと共に、

 安堵の息を吐いた。

 


「酒呑童子、結界を張ります」

 


 社が手を合わせる。

 巨大な結界が校舎を覆った。


 時間が止まったかのように、

 生徒たちの動きが止まる。



「これで今からのことは

 誰の記憶にも残りません」


『気を抜くなよ……

 ただの妖怪ではないぞ』



 酒呑童子が珍しく、

 社に警告をしてきた。


 今から迎え撃つ妖怪が

 普通の化け物ではない

 ということだ。



 グラウンドに降り立った社は、

 骸の群れに問う。

 

  

「お前たちは、ここに何をしに来た!?」


「……」



 反応がない——


 

「ただ操られているだけか?」


 

 社は印を切る。



『烈波の式!』


  

 ――ゴオオォォッ!


 

 炎の波が骸の群れを飲み込んだ。

 


「これで終わりではないよね?」 


『亮介、姿は見せてはいないが、

 邪気の塊が目の前で渦巻いている——

 用心しろ』

 


 社と酒呑童子は、

 心の中で会話を交わす。

 

 社は辺りを見渡した。

  


「骸の集団を自在に操る妖怪?」


『……と、なると鈴鹿御前か?』


「鈴鹿御前……

 新四天王の一角ですね」


『いや……この感じ……

 餓者髑髏《がしゃどくろ》か——』



 餓者髑髏とは、

 幾万もの怨霊が集まり生まれた巨大妖怪。

  

 その名を挙げると同時に、

 校舎よりも巨大な、

 全身が骸骨でできた妖怪が姿を現した。


 酒呑童子はそれを、

 餓者髑髏と呼んだ。



「オオォーン!」

 


 餓者髑髏は大きな口を開け、

 雄叫びを上げる。


 その声とともに、

 再び土の中から何体もの骸の群れが現れた。


 餓者髑髏は社を見下ろし、

 さらに顎を大きく開いた。


 口の中は底の見えない暗闇が広がっていた。


 噂に聞く、

 あの世へまで続くと言われる

 餓者髑髏の口内。


 飲み込まれれば

 抜け出すことは不可能、

 強制的に黄泉の世界へと誘われる。


 餓者髑髏はさらに大きく口を開き、

 すさまじい力で一帯を吸い込み始めた。

 


 黄泉送りの術——

 

 口内にブラックホールのような闇を発生させ、

 あらゆる物を吸い込んで黄泉へと送る術だ。

 


「とんでもない妖力だ!

 これが餓者髑髏ですか——

 相手にするのは初めてですよ!」


『そこらにいる妖怪ではない。

 奴は怨霊の塊のようなものだ……』


「そんな奴がどうしてこんなところに!」


『お前の足止め……あるいは抹殺』


「俺を?

 どうして!?」


『新四天王からすれば、

 お前は厄介者だ』


「なるほど……。

 風吹たちも

 狙われている可能性がありますね?」


『間違いあるまい』

 

「急がないと……」

 

『まずは目の前の相手だ亮介。

 お前の生徒たちが校舎ごと飲み込まれるぞ』

 

「!」

 

『奴らは戦い方をよくわかっている。

 心を乱すな』


  

 餓者髑髏は、

 校舎を覆い隠すほどの巨体。

 首を反らさなければ顔すら見えない。


 その巨躯をゆっくりと動かしながら、

 社に近づいて来る。


 骸の集団はさらに数を増やし、

 社を取り囲んだ。



『光矢の式《こうやのしき》』



 天より光の矢が雨のように降り、

 広範囲に骸たちを襲った。



 ——ズドドドドドーッ!



 骸の群れを、

 ことごとく吹き飛ばした。


 しかし、

 次々と土の中から骸が湧き出し続ける。


 

「埒があかないな……」


『亮介、金鬼丸《きんきまる》を召喚しろ』

 

「!」


『我がやる——』


 

 社は酒呑童子の言葉に

 小さく頷いた。


 そして、

 右手を天に掲げ——

 一言主神の力を解放する。


 

『いでよ!

 金鬼丸!』

 


 その声に反応し、

 大きな衝撃音とともに

 空より一筋の光が社の目の前へ落ちた。


 地面には、

 一本の鉄の棒が突き刺さっている。


 

 それは細身の金棒——


 名を、金鬼丸といった。

 


 鬼を象徴する武器だが、

 その細さは一般的な印象の金棒とは異なり、

 どこか静かな威圧感を放っている。


 1体の骸が、

 その金棒に手をかけた。

 


「!?」

 


 引き抜こうとするが、

 金棒は微動だにしない。


 その細さとは裏腹に、

 尋常ではない密度と質量を秘めている。



「金鬼丸を持ち上げるなんて無理だよ。

 ましてや、屍なんかじゃ話にならない」



 社は静かに金鬼丸へ歩み寄った。


 餓者髑髏は、

 さらに黄泉送りの術の力を上げ、

 校舎一帯を飲み込もうとしている。


 

「もう少し敵の数を減らしてからでも

 良かったかな?」


『入れ替われる時間は10を数えるまでの間、

 十分事足りる』


「……そのための金鬼丸ですもんね」 


『亮介。

 鬼に金棒、という言葉が

 人間界にあるのを知っておろう?』


「えぇ。

 もちろん知っています」



 次の瞬間——


 鋭い目つきに、筋肉質な身体。

 全身には鬼を表す黒い紋様。 


 圧倒的な鬼気を纏う、

 社が——

 

 いや、酒呑童子が立っていた。

 

 金鬼丸に触れる骸を、

 右拳で殴り潰し

 左手で軽々と金鬼丸を持ち上げた。

 

 それを大きな弧を描かせるように

 回転させ、

 右手へと握り替える。



「その言葉……

 昔、人間が我を見て作った言葉だ」

 


 酒呑童子が、

 餓者髑髏を見上げた。




 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。