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かまいたちの嫁~妖怪女子高生と退魔教師は今日も怪異を斬る~  作者: 鬼喜怪快
第五章 いつかあなたの心が太陽の輝く方へ

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49話 終幕へ


  

 なまはげの刃は、

 狢の主を瞬く間に始末した。



 狢の主が死に、

 操心の術から解き放たれた群れは、

 統制の取れない烏合の衆へと変わっていく。

 

 恐怖を恐怖だと感じないように

 操られていたが今は違う。

 

 牛丸、氷花、煉の力を

 目の当たりにした狢たちは、

 ようやく恐怖して逃げ惑い始めた。



「どうやら、

 うまくやったみたいだねぇ」


「氷花、煉よ!

 1匹たりとも逃がすでない。殲滅するぞ!」


 

 そこからは圧巻の光景だった。

 

 駆逐という言葉が相応しいのだろう。

  

 牛丸たち4人は、

 狢の群れを一方的に追い詰めていった。

 

 逃げる狢にも、

 容赦なく攻撃を浴びせ続けた。


 氷花の氷が足を奪い、

 牛丸の風が追い込み、

 煉の炎が焼き払う。

 

 社もまた狢を次々となぎ倒した。

 

 4人の、

 完璧に連携の取れた戦いだった。


 

「見事な強さだよ……本当に」


 

 感心する白粉婆のもとへ、

 風吹となまはげが

 狢の主を討ち取って戻った。


  

「狢の頭を倒せたのかい……?」


「あったりまえでしょう!」



 風吹が満面の笑みを浮かべた。


  

「風吹よ、

 広域に妖気感知を頼む。

 1匹たりとも外には出させない」


「OK!」

 

 

 なまはげも加勢すべく、

 戦場へと走り出した。


 

「もうすぐだよ。

 もうすぐ、ばあばの積年の願いが叶えられる!」



 その時、

 白粉婆はほんの少しだけど、


 ——微笑んだ。


 

 ――――――

 


 もう1体の将軍狢の前に、

 氷花が立ちはだかった。


 

「将軍狢か。

 これなら一気にポイントを稼げるねぇ」


 

 今、氷花は尻尾3本分の力を解放している。

 妖狐は尻尾の数で格が決まるらしい。


 氷花は妖狐の中でもずば抜けた力を持ち、

 5本の尻尾を解放できるだけでもエリートなのだ。


 

「せっかく3本目の尾を解放してるんだ。

 久しぶりに爺様の術でも使ってみようかねぇ」


 

 周囲の風が氷花を中心に集まっていく。

 これは牛丸が得意とする、

 風舞いの術だ。


 氷花は普段、

 氷と火を主軸に戦っているが、

 尾を増やすことで使える術の幅が広がる。


 

「天と地と海より招かれし妖精たちよ、

 我が声に耳を傾け、

 汝らの力を与えたまえ……


 ——風の術・風舞い!」


 

 目に見えない風の大刃が無数に飛び交い、

 将軍狢と周囲の狢や大狢を含め

 10匹ほどを一瞬で葬った。


 まさに牛丸直伝の圧巻の妖術だった。

 

 風吹は広域に妖気探知を行ったが、

 周辺に狢の気配は見られなかった。

 

 すべての狢はここに集まりきっている。

 

 白粉婆となまはげを、

 何百年もの間苦しめ続けた元凶が、

 もうすぐ取り除かれる。

  

 家族と住処を失ったあの日、

 後悔が降り積もった雪のように

 彼女の心を閉ざしてしまった。


 しかし、

 ようやく彼女の心を覆っていた雪が、

 少しずつ溶け始めようとしていた。


 

 「これが最後の1体!」


 

 煉の炎によって、

 最後の狢が爆殺された。


  

 この瞬間、

 何百年もの間この村を荒らし

 根城にしていた狢の

 完全駆除に成功したのだった。

 


 ――――――

 


 すべての戦いが終わった。


 皆は解放していた力を収め、

 勝利を称え合った。


 

「牛丸、そして仲間たちよ。

 今日のこと、心の底より感謝する。

 積年の恨みが今日で晴れた」


「いやいや、

 風吹のおかげだ。

 風吹が結界を解いてくれたから、

 この重い腰を上げるに至った」


「風吹、白粉の……

 なんと礼を言えばよいのか。

 何か願いはないか?

 このなまはげ、できる限りの礼をさせてもらいたい」


 

 お礼——

 

 風吹は普段、

 そのような願いを口にすることはない。


 しかし今回は、

 無理を承知でお願いしたいことがあった。



 ——白粉婆の家族探し。



 そんなことをお願いしていいのだろうか?

 

 この村のどこにあるかも分からない人骨を、

 土の中から掘り出したい。


 今回の旅行は、

 ここに来てから、

 それが目的に変わったから――。


 

「鎌切さん、

 僕は家族探しを手伝うよ」



 突然、煉が声をかけてきた。


 

「火鳥!

 どうしてそれを……?」



 煉は自分の左眼を指差した。


 

「あぁ!

 わたしの心を読みやがったな?」

 

「ごめん!

 すごい深刻な顔していたから、つい……」


 

 その会話に、

 なまはげが問いかけた。


 

「手伝うとは何だ?

 如何様なことでも力を貸そう」


「……そ、それはだなぁ」


 

 風吹は、

 なぜこの土地まで白粉婆と足を運んだのか、

 そしてなぜ狢と戦っていたのか、

 すべてを話した。

 

 なまはげは黙って耳を傾け、

 最後まで聞いていた。


 

「あの時代は、

 妖怪に対する人間の偏見は酷いものだった。

 家族を殺されたお前が、

 すべてを見限ってこの村を離れたとしても、

 仕方のないことだっただろう」


「ばあばには、

 家族の思い出になるものがないんだ。

 せめて墓でも作ることができればって、

 思うんだよ……」


「気持ちだけで充分さ。

 いくらなんでも、

 ここから家族の骨を掘り出すなんて不可能だ。

 馬鹿なわたしでも、それくらい分かるさ」


 

 確かに、風吹の考えは浅はかだった。


 狢さえどうにかできれば、

 人骨を探し出せるかもしれないと思っていた。

 

 だが現実はどうだ。

 

 数百年前の人骨に、

 妖力や気など残っているはずもない。

 

 掘り出すどころか、

 場所さえ特定できない。



 すると、

 何かを思い出したように

 なまはげが口を開いた。


  

「牛丸よ、朧車を貸してもらえるか?」


「なまはげよ、構わぬが……

 何か妙案でもあるのか?」


「うむ。

 俺の仲間なら、

 何とかしてくれるやもしれん」


 

 そう言うと、なまはげは朧車に乗り込んだ。


 

 ――すぐに戻る。


 

 そう言い残し、

 なまはげを乗せた朧車は

 夜空へ消えていった。


  

 風吹たちは、

 なまはげが戻るまでの間、

 白粉婆の家族が埋められたであろう

 場所まで案内してもらうことにした。






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