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かまいたちの嫁~妖怪女子高生と退魔教師は今日も怪異を斬る~  作者: 鬼喜怪快
第五章 いつかあなたの心が太陽の輝く方へ

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45話 あの日の約束へ



 風吹たちが絶体絶命の中、

 助けに来たのは、最強の仲間たちだった。 

 


「狢の巣か……

 こんなところに飛び込むにしては

 準備不足なんじゃないか?」


「先生……。

 どうしてここにいるんだよ?

 夢見てるみたいなんだけど……」


 

 山に入ってから

 スマホは使用できなかった。

 

 風吹たちがこの場所に向かうことや、

 今の状況を伝えることは不可能だ。


 どうしてみんながここに集まれたのか、

 わからなかった。

 


「風吹が結界を破壊したから、

 ここに来ることになったんだよ」


「……どういうこと?」

 


 牛丸が、

 風吹の前へ歩み出た。


 そこで、風吹は牛丸の衣装を見て

 あることに気付いた。 


 あの木に刻まれていた

 結界の印――

 あれは牛丸の衣装や、

 迷い家で見た家紋と同じだったのだ。



 あれは——

 牛丸の結界術だったのか。


 

 牛丸は元人間——


 彼の妖気量なら、

 この広域結界を張った術者だと

 言われても納得ができる。


 

「風吹よ。

 まさかお前のお陰で

 今日、この忌まわしき村を解放する時が

 来ようとは思いもしなかったぞ」

 


 風吹が結界を解除したことで、

 結界を張った術者である

 牛丸へ知らせが届いたのだ。

 

 つまり――

 牛丸こそが、

 この村へ狢を封じた術者。 


 だからこそ、

 結界の開放が何を意味するのかを理解し、

 ここへ向かってきたのだ。

 

 何としてでも狢を食い止めるために、


 この面々を揃えて——



「一旦は結界を張り直した。

 これで狢が外に出ることはない……

 安心せい。風吹」


 

 牛丸は風吹の前に立ち、

 なぜ結界がこの場所に存在するのかを

 語り始めた。



 —————— 



 それは数百年前。


 牛丸は、己の強さを確かめるため、

 常に強者との戦いを求めていた。


 この地の守護者・なまはげへ

 勝負を挑みに来たところ、

 彼はすでに狢の群れと激戦を繰り広げていた。


 その頃、

 狢はこの地に集落を築き、

 他所から人間の女を攫っては

 子を産ませていた。

 

 土地神であるなまはげは、

 その悪行を見過ごせず

 討伐へ向かったのだ。


 しかし狢は、

 人に化けて命乞いを装い、

 不意を突く狡猾な相手だった。


 将軍狢は姿を現さず、

 群れだけでなまはげの体力を

 消耗させ続けた。


 多勢に無勢。


 戦況は悪化する一方だった。


 そこへ牛丸が加勢したことで、

 ふたりの縁が始まった。


 

「悪いが人妖の者よ。

 俺はお主を相手にしている余裕はない。

 ここにいれば、

 お前まで狢に巻き込まれるぞ」


 

 そう告げられた牛丸は笑って言った。


 

「狢を全滅させたら相手をしてほしい!

 この交換条件、飲んではくれぬか?」


 

 酔狂な申し出だったが、

 なまはげは承諾した。


 この状況を変える、

 何かが必要だと考えていたからだ。

 

 しかし共闘しても

 状況は変わらなかった。


 将軍狢は姿を見せず、

 群れだけが2体を追い詰めていく。


 

 正攻法では勝てない。

 

 だから牛丸は、一つの策を示した。


 ――広域結界だ。


 指定した範囲から

 敵を逃がさない結界。


 山3つを覆うほどの広域結界など、

 本来なら不可能。


 しかし、

 異常な妖力量を持つ牛丸だからこそ

 実現できる策だった。


 殲滅ではなく封印。


 将軍狢を討てない以上、

 他に道はなかった。

 


 ふたりは狢を結界へ閉じ込め、

 自分たちは外へ脱出することに

 成功したのだ。


 

「さぁ、これで戦えるのう!

 なまはげよ!」


「勘弁してくれ。

 あれほどの広域結界を張れる者に

 勝てるとは思えん。

 お前の勝ちでよい」


「なんだそれ!

 約束が違うではないか!」


「お前ほどの恩人に、

 刃は向けられん」


 

 数日に及ぶ共闘で、

 ふたりの間には深い信頼が生まれていた。


 だが、

 この結界には1つだけ弱点があった。


 ——外から侵入する者は防げない。


 そのため、なまはげは人が迷い込まぬよう、

 この地を見張り続けることにした。


 殲滅できなかった己への贖罪として。


 

 一方の牛丸は、


 

「いつか必ず、この地に平穏を――」


 

 そう誓って山を後にした。


 長い年月を経て、

 高等結界術を習得した牛丸は

 再び不知雪村を訪れ、

 人を迷わせる防護結界を重ね張りした。


 これにより、

 なまはげは長年背負ってきた

 見張り役から解放されたのだ。


 それでも、

 忘れることはなかった。


 

 ――いつか必ず、狢を殲滅する。

  

  

 その約束を胸に——

 あの頃のふたりは別れたのだった。



 ——————



「……という話だ」



 話が終わると牛丸は顔を上げ、

 雪原の奥へ目を向けた。


 

「風吹よ。

 お主が気に病む必要はないぞ」


「え?」


「この結界は、

 いつかわし自身の手で解くつもりだった」


 

 牛丸の目つきが変わった。


 

「何かを言い訳に、

 後回しにしすぎたことを

 反省せねばなるまい……」


 

 なまはげは二刀を抜いた。


 

「我が弟子に……。

 あの日の約束を思い出させられるとはな……」




 今夜——

 この地から狢を一匹残らず殲滅する。






 

 

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