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かまいたちの嫁~妖怪女子高生と退魔教師は今日も怪異を斬る~  作者: 鬼喜怪快
第四章 境界の煉

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35話 沈黙の厄災


 

 牛丸からの迷い家への招集。


 突然、

 社の部屋にお屋敷の門が浮かび上がると、

 否応なく中に招かれた。


 拒否権などはなかった。


 客間にはすでに、

 牛丸、氷花、火鳥、風善、なまはげが

 鎮座している。



「風吹、社、急に呼び立ててすまなかった」



 牛丸が頭を下げた。



「ホントですよ。

 今から風呂入って

 寝るとこだったのに……」



 迷い家に初参加ながら、

 社は迷惑そうに答えた。



「それで、新四天王のことで話って何?」



 風吹が問いかけた。

 

 そこで牛丸が、

 みんなを集めた理由を話し始めた。



「土蜘蛛からの情報でな。

 新四天王を名乗る集団……

 どうやら姿をくらましたらしい」


「?」


「ここから先は、煉よ。

 お前が説明してくれ」



 火鳥は頷いて、

 みんなの方へ身体を向き直した。



「うちの店長……。

 妖怪・土蜘蛛なんですけど、

 常に子飼いの蜘蛛と視覚共有をして

 監視しているんです。 

 それでわかったらしいのですが、

 嵐さんが亡くなってから、

 新四天王のメンバーの行方がわからなくなったと」


「……どういうことだ?」



 風善が質問をする。



「八岐大蛇がボスらしいんですけど、

 彼も迷い家を持っていて、

 そこを我々のように集会所にしてるようなんです。

 それが、最近では完全に鳴りを潜めて

 集まっている気配すらないと聞いてます」


「……何か考えがあってのことだろうか?」


「店長曰く、

 妖怪たちの目が彼らに向いたことで、

 一旦、手を引いたのでは?

 って、言っていました」


「大注目を浴びながらの、

 行動は取りづらいだろうからな……」


「はい。

 それに嵐さんが抜けて、

 体制も整えなくてはいけないでしょうし、

 少し時間が必要なのだと思われます」


「……そんな時間はくれてやらん!

 今すぐ斬ってやりたいわ!」


「店長も、蜘蛛を使って

 監視は続けてくれるようです。

 また情報はもらえると思います」


「……しかし土蜘蛛がどうして

 そんなに協力的なのだ?

 過去、平安の都を

 たった1体で地獄に変えた妖怪だぞ」



 風善の言っていることは正しかった。

 

 日本四天王の一角・土蜘蛛。

 かつては最強にして最凶。

 

 とても、他の妖怪のために

 力を貸すような妖怪ではなかった。



「火鳥殿、

 土蜘蛛とどのような取引で、

 その情報を得ているのだ。

 もしやとんでもない交換条件を

 求められてはいないだろうな?」


「……土日の、

 長時間勤務が交換条件でした」


「長時間勤務?」


「うちの店、

 土日アルバイトする人が少なくって、

 土日に5時間以上の勤務をするって

 約束したら情報をくれました……」


「それって……随分と安い

 交換条件なのではないか?」


「店長からすれば、

 土日の労働力の方が大事みたいで」



 過去の土蜘蛛を知る、

 牛丸、風善、なまはげは、言葉を失った。



「時代は変わるというが、

 これほど変わる妖怪がいたものか?」



 なまはげがぽつりと呟いた。



「新しい動きがあれば、

 店長がまた知らせてくれると思います」


「アルバイトと交換条件でか?」


「……はい」



 話を聞いていた風吹が口を開いた。



「そんな情報のために、

 土日働くってあり得なくない!

 わたしは絶対に嫌だな」


「ごめん——

 鎌切さんも働かせるって約束で、

 この情報もらったんだ。

 だから次の土日は働いてね」


「なに勝手に話進めてんだよっ!

 日曜は先生とデートの予定してんだよ!」



「そんな予定してないよ、風吹……」



 風吹のようなアルバイトが多いから、

 土蜘蛛も苦労をしているのか……


 一同は少しだけ、

 土蜘蛛の苦労を理解した。


 氷花が口を開いた。

 


「言い換えれば、

 当分は平穏な日常だってことでしょ?」


「……平穏かはわからん。

 次の行動に対して、準備に入っているなら

 脅威は続いていることになる」


「なら、土蜘蛛だけじゃなく

 我々も地域主に声をかけて

 準備に入らないとねぇ……爺様」


「その通りだ、氷花。

 しかし、地域主の中に八岐大蛇と

 繋がりがある妖怪がいれば

 厄介だぞ」


「……それは怖いねぇ」


「だからこそ、

 今は最小限のメンバーで

 話を進めねばならん」



 新四天王を名乗る組織は、

 体制を整え、

 その時が来るのを待っている——


 風吹たちは、

 いつ来るかわからない厄災に備え、

 準備を始めるしかなかった。



 ——————



 その頃——



「かまいたちの兄貴が妹に討たれたか……」


「風吹ってかまいたち、

 かなり強いね。

 さすが鵺が逃げ出したほどだよ」


「逃げてねぇーよ!」



 そこは遥か上空の、

 雲の上のさらに上の結界内にある

 雨降り小僧の家。

 

 鵺は再び、

 この場所へと戻っていた。



「お前の広範囲感知術でも、

 八岐大蛇の行方はわからんのか?」


「うん、全員がしっかりと気配を消したね。

 絶対に何か企んでるよ」


「けっ!

 とにかく胸糞悪い。

 新四天王だか名乗ってる奴らは

 全員、俺が殺してやるぜ!」


「かまいたちはどうするの?」


「兄貴の方ならともかく、

 童の方なんかに興味はねぇ!」


「なんだかんだで、

 女妖怪には昔から甘いよね」


「甘かねーよ!」



 鵺からの指示で雨感知の術を使い、

 雨を降らして、その雨が触れたものを通じて

 新四天王を追っていた。


 しかし、今のところ反応はない。



「で、これからどうするの?

 出ていくにしても結界を破っていったら

 今度から本当に出禁にするからね」



 雨降り小僧は、

 結界を出入りする際に

 必ず結界を破壊していく鵺に対し

 ご立腹だった。



「もう……壊さねーよ」


「うん。

 ならよろしい」


「当分、ここから奴らの動きを

 ずっと監視してもらうからよ」


「?」


「それまではここにいるぜ」


「ずっと監視してもらう?

 誰が?」


「誰がって、

 そんなことできるの

 お前しかいねーだろ!」


「……なんでボクがそんなことしなくちゃいけないの?」


「なんでって、

 お前、俺の子分だろうがよ!」



 それは数百年前に遡る、

 ふたりしか知らない約束ごと。



「はぁ……

 あんな約束しなきゃ良かったよ」


「しっかりと見張れよな!」


「……八岐大蛇たち、

 早く動いてくれないかな。

 さもないと、

 鵺がずっとここにいるじゃん……」



 各々が、

 突如迎えるその時に備え、


 準備に入る——


 

 ——————



 八岐大蛇は、

 夜行とともに

 迷い家にある奥の一室で戦略図を眺めていた。


 その戦略図には、

 妖怪たちの名が浮かび上がっている。


 

「楽しみだね、夜行。

 時がくれば、日本妖怪のみんなが

 びっくりすることをしてやろう」



 八岐大蛇は不気味に微笑んだ。

 

  


 


35話までお読みいただき、ありがとうございます。

まだまだ物語は続きます。

ブックマークや評価、コメントをいただけると、とても励みになります。

今後とも『かまいたちの嫁』をよろしくお願いします。

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