33話 本日のクレーマー
嵐の葬儀以来の再会。
風吹はアルバイト先である、
ケンちゃんのフライドチキンの中で、
火鳥煉と出会った。
「なんであんたがいるのよ!」
「なんでって、
僕ここで働いてるからだよ」
「はぁ!?」
「君こそなんでここにいるのさ?」
「わたしは今日からここで働くんだよ!」
店内に沈黙が落ちる。
そこに店長が入ってきた。
「なんや、自分ら知り合いかい?
高校生同士仲良くしいや」
そのまま、
風吹は店長に連れて行かれた。
風吹は、
火鳥との再会を、
社に伝えようとスマホを取り出した。
「先生に報告しとかなくっちゃ」
「おい! 鎌切」
「!」
「勤務中にスマホ触んな!」
風吹はこっぴどく怒られた。
——————
風吹は、タブレットによる
自主学習を行なっていた。
火鳥は夕方のピークタイムに入り、
商品の調理を担当している。
客足が増える中、
店長は火鳥へ小声で話しかけた。
「火鳥くん、厄介なクレーマーが2人ほど
ご来店されるみたいやねんけど、
対応してもらっていいやろか?」
「……またですか?
普通、クレーム対応は
店長のお仕事だと思うのですが?」
「君、遅刻してきた割には偉そうやん」
店長は、
怖い顔を見せながら、
火鳥を睨みつけた。
「……かしこまりました」
「よろしく!
あぁそれと、
クレーム内容はしっかり聞いといてや」
「僕、これ系苦手なんですよ。
どちらかというと、
土蜘蛛の方が得意ではないですか?」
「こら!
土蜘蛛って言わない。
店では店長と呼びなさい。
時給下げるで」
「……すみません」
「あぁ、そうや!
鎌切さんも連れていきや。
うちの仕事教えたげて欲しい」
火鳥はどこか納得できないまま、
風吹に付いてくるように声をかけた。
風吹はなんのことかわからないまま、
火鳥に連れられて、
店舗の裏口からクレーマーのもとへ向かわされた。
——火鳥の左目が疼く。
それはクレーマーの接近を告げているのだ。
「あのさ、
クレーマー対応って何するの?」
「そうだね……。
まずは話を聞くことかな……」
「今、向かってる先に
話ができる奴いるのかよ?」
「一応話はできるみたいだよ」
「……本当かよ。
こんなに——」
先に見える曲がり角から
体格の良い男性が2人、
姿を見せた。
「——妖気を出している
奴らなのに?」
2人は明らかに様子がおかしかった。
顔色は悪く、瞳孔は開ききっている。
そして、腐敗臭。
生きている人間の匂いではなかった。
「話くらいできるよ。
サトリの眼は、
彼らの心をすでに読んでいるからね」
無表情の男性2人は、
風吹と火鳥の前に立ちはだかった。
「いったい何なの?
こいつら……」
「……殺意と空腹。
僕たちを持ち帰るか、
殺すかしか考えていないようだよ」
2人の身体が小刻みに震え始め、
皮膚が歪み、変色し、異様に
膨れ上がっていった。
バキバキ、と鈍い音が響き渡る。
今までかろうじて人の姿だったものは、
別の生物へと変貌した。
「……これって!?」
「下っ端の鬼だね。
でも力だけは強いよ。気をつけて」
身長は2メートルを超え、
額には角、土気色の肌、垂れる涎。
知性は感じられなかった。
とんでもない野生動物が目の前にいる――
そんな圧迫感だった。
「ウオオォォォッ!」
2体の鬼が咆哮を上げる。
腹の底から震わせるような威圧感を放った。
「なんだよ、お前ら!」
「……」
「何の用があるんだよぉ!?」
「……」
2体の鬼から返事がない。
意思疎通は難しいようだ。
「こいつら、言葉が通じないじゃん」
「いや……」
「!」
「ちゃんと鎌切さんの質問に、
心で答えているよ」
「えっ?」
火鳥はサトリの眼で、
鬼の心を読み取っていた。
「……妖怪攫いを命じていた
八岐大蛇が手を引いたせいで、
仕事を失ったんだって」
「はぁ?」
「飼い主に捨てられて自由を得た
殺人ペット……みたいなものかな?」
風吹は顔を歪めながら呟いた。
「なんだよそれ!
きっしょ!」
2体の鬼がゆっくりと近づいてくる。
「しかしすごい眼なんだな、
サトリの眼って」
「まぁね」
「よし!
ここはわたしもすごいってところを
見せてやるよ!」
風吹が鬼切丸を顕現させた。
すると、
はやる風吹を火鳥が制止した。
「なんだよ?」
「鎌切さんは、
今日が初日でしょ?
ここは僕がやるよ」
火鳥が一歩前に出た。
「!」
身体が熱を帯び、
全身から熱風を発する。
そして、
右手には炎が灯った。
「僕こう見えて、
まぁまぁ強いんだよね」
そう言うと、
2体の鬼に向かって1人歩いて行った。




