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かまいたちの嫁~妖怪女子高生と退魔教師は今日も怪異を斬る~  作者: 鬼喜怪快
第三章 風の真実

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25話 今宵、嵐が吹く


 

「土蜘蛛……。

 フライドチキン屋の店長が、

 妖怪四天王の1体だって?」



 驚く社だが、

 気になることが1つある。


 それは成瀬の前で、

 普通に土蜘蛛を名乗っていることだ。



「成瀬さんの前で……

 いいのか?」


「こいつはかまへん。

 全部知っとるし」


「……」


「汽車にお前がいなかったら、

 俺が助けに行ってたくらいや」


「あの汽車のことを知ってたのか?」


「成瀬にはお守り持たせてるから、

 危険が迫れば俺に知らせが来る。

 まぁ、お前らでなんとかしてくれそうやったし、

 ほっといたけどな……」


「……」


「で……新四天王の話やけど」



 それは土蜘蛛が独自で掴んだ情報。


 さっき、

 八岐大蛇と嵐の名が上がった。

 最後に夜行の名も——


 八岐大蛇は大昔、

 妖怪と人間が手を組み、

 ようやく封印することのできた大妖怪だ。

 

 1つの身体に特殊能力を持つ龍が8匹存在し、 

 龍族でも最強の1体と言われている。

 

 夜行は、

 闇を自在に駆ける暗殺者。

 戦術を立てさせれば、

 右に出る妖怪はいない。

  

 

「夜行は参謀や、

 四天王は八岐大蛇、鈴鹿御前、麒麟、かまいたちの4体になる」


「嵐か……」


「この鎌切の兄貴やな」


「何を企んでいるんだ?」


「力尽くで、

 日本の妖怪を纏めようとしているな」



 沈黙が落ちる——


 風吹と成瀬も、

 はしゃいでいたのに静かになった。

 


「なんで今更まとめる必要がある?」


「そこまではわからんが、

 必死で戦力をかき集めとるで」


「珍しい妖怪が攫われ、

 瞳力を持つ妖の眼が奪われていると聞くが……」

 

「異国の者と戦争でも始めるつもりなんちゃうけ?」


「まさか……」


「俺と鵺のところには

 使い魔がよこされとる」


「?」


「配下にならへんかって……」


「……」


「店が忙しいから

 もちろん断ったがな……」


「理由がそれ……」



 風吹が割って入ってきた。



「にいに……

 嵐が新四天王に入った理由はなに?」


「さすがにそこまでは知らんなぁ……

 しかし……あのかまいたちは——」


「!」


「襲われている連中を

 守っているように見える……」


「えっ?」


「鵺も襲いながら、

 最終的には助けとったで……」



 その話を聞いた風吹の頭に、

 あの頃の優しくて強い自慢の兄が

 思い浮かぶ。



「絶対に、

 洗脳されてるんだと思うんだ……

 にいには悪いことをする

 妖怪じゃないもん」



 風吹の中では、

 今でもあの頃の兄が

 笑顔で戻ってくるような——


 そんな気がしていた。



 ——————



 来週からアルバイトが決まった風吹。


 今日は実家に泊まる予定だ。



「先生も泊まってけば?」


「いや、俺は帰る」


「なんでさ?」


「家壊れて大変だろ?」


「別館で生活してるから大丈夫だよ」


「別館のある家って……」



 2人は鎌切邸まで歩いて向かう。

 

 何気ない会話。

 平凡な夜の帰路。

 人気のない山道。


 黙り込む2人。


 そして、

 思い出す店長の最後の言葉。



「今夜……

 君ら2人の前に姿を見せるらしいで、

 お兄さん……」


 

 山道のずっと向こうに、

 黒い影が見えた。



「土蜘蛛の視覚共有って……すごいな」


「本当だよ。

 マジでにいにが姿を見せるなんて

 思わなかった」



 嵐のもとへ、

 社と風吹が立ちはだかった。



 会話はない。

 ただ黙って、3人は見つめ合った。



 嵐は大剣を顕現させ、

 構えをとった。


 その姿を見た風吹は声をかける。



「八岐大蛇に操られてるんだろ?

 わたしたちがぶっ倒してやるから

 正気に戻ってくれよ!」



 嵐は一度目を閉じて、

 ゆっくりと開けた。



「うしろに……

 八岐大蛇がいると知った上で、

 俺を倒すと言っているのか?」


「にいにのためじゃん!

 こっちには先生もいるし。

 鞍馬山の連中とも繋がり持ってるんだ。

 アイツらなら助けてくれるよ」


「……」


「だからさ——」


「他力本願」


「?」


「それでは何もなせないぞ、風吹」



 嵐の背後から、

 30体ほどの妖怪が姿を見せた。



「にいに……」


「この前は遅れをとった……

 しかし今回はそうはいかない」



 背後の妖怪たちが嘲笑う。



「こんな童と人間を殺すために、

 我らは遣わされたのか?」


「新四天王は、

 我らが保護者として付いておらぬと

 なにもできんのかのぉ!」


「ゲハハハハハッ!」



 下品な会話だった。


 社が一歩前に出る。



「お前たちの相手は俺がするよ……」



 その一言に、

 さらに大声で笑いが起こる。



「なんだこの人間は!」

 

「状況が理解できておらぬようだな!」


「気の毒にのぉ!

 今から死ぬことが理解できておらんようだ」



 雑音に耳も傾けず、

 社と嵐は睨み合った。



「先生……わたしも戦うよ!

 にいにには勝てないけど、

 後ろの連中くらいなら——」


「風吹からだ……」


「!」


「風吹から仕留める」



 嵐は風吹に向かって足を向けた。

 そこに社が立ちはだかる。



「お前にそんな選択権はないよ」


「……」



 そして、

 社が呪術を発動させようとした時——



『風吹と戦わせるがいい……』


『?』



 社の中の酒呑童子が語りかけてきた。



『危険です。

 鬼切丸を持っている風吹でも、

 嵐に勝てるかどうか?』


『……鈍いなお前は』


『?』


『お前の相手は、

 あの30体のバカどもで良いではないか……』


『しかし……』


「剣士には剣士の語る方法があろう……

 お前は招かざるものだ、亮介」



 嵐と風吹が向かい合った。

 風吹はまだ鬼切丸を顕現させていない。



「鬼切丸を抜け……風吹」


「操られてんだろ?

 弱みでも握られてるのか?

 なんでも手伝うよ。

 だから……」



 ——ズウォンッ!



 風吹の鼻先に漆黒の大剣を振り下ろした。



「3度目は言わんぞ……

 鬼切丸を抜け……風吹」



 嵐は全身から妖気をほとばらせた。



 

 

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