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かまいたちの嫁~妖怪女子高生と退魔教師は今日も怪異を斬る~  作者: 鬼喜怪快
第二章 四天王と新四天王

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24話 はじめまして、店長の土蜘蛛です



 

 ケンちゃんのフライドチキン——


 全国展開しているファーストフード店だ。


 風吹がそこでアルバイトをするために、

 今日は下見に来た。


 ところが——



「風吹……ここは妖怪の結界内だ。

 建物の中に妖怪がいるぞ」


「えっ……」


「あと、友達の成瀬さん、

 俺が記憶を消したのに俺のことを覚えていた。

 どういうことか説明できるか?」



 風吹は驚いたような表情を見せながら

 呟いた。



「言ってなかったっけ?

 成瀬って、記憶飛ばしの術とか

 陰術系統が効かない体質なんだって……」


「……はい?」


「で、この店は妖怪が店長してるんだって」


「……」


「言ってなかった?」


「聞いてない!」


「言ったと思ってたよ。

 ごめん、ごめん!」


「普通言い忘れないだろ?

 そんな大事なこと……」



 すると——



「お客さん。

 お席に付かれるんでしたら、

 商品の購入を先にお願いします」



 男性店員に声をかけられた。


 凄まじい妖気。

 背後を取られている。

 

 ただの妖怪ではないことがわかる。



「ごめん、店長!

 わたしの婚約者なんだ!」


「あぁ、なんや……

 かまいたちに求婚したっていう、

 変わった人間かいな」



 社が振り返ると、

 そこには長身で細身の店長らしき男。


 いや——妖怪が立っていた。


 鋭い目つきで社を見ているが、

 殺気はない。


 何より、

 コテコテの関西弁を使っている。


 

「妖怪の面接に

 人間の保護者が同伴って……

 聞いたことないで。

 あんた、この子を甘やかし過ぎちゃいますか?」



 調子が狂う。


 人間社会に、溶け込む妖怪は数多いる。

 

 風吹だってそうだ。


 しかし、

 人に化けてまで飲食店を営んでいる妖怪を、

 社は見たことがなかった。



「履歴書書けたか?」


「もうちょっとでできそうっす!」



 ——履歴書?



「ちょっと待って!

 今日は下見だったはずだ。

 それが履歴書って面接でもするのか?」


「店長も妖怪だしさ、

 ここでいいかなって思ってさ」



 社は店長に目を向けた。



「何を企んでいる?」


「企むて、何をやねん?

 この子が働きたい言うから

 面接するんやないか」


「妖怪が店長?

 この店を起点にして、

 人間の魂でも集めるつもりか?」


「何言うてんねん!

 飲食業界は人不足で常に困ってんねん!

 動ける者なら、シニアでも妖怪でもありがたいんや!」


「……?」



 その妖怪は、真剣に社へ反論をした。

 

 信じられないが、

 本気で店長をしているようだ。


 風吹は事務所に連れて行かれる。

 

 そこで面接が行われるようだ。

 

 社は、

 ぽつんとホールに取り残された。



「社さん」



 成瀬が声をかけて来た。


 彼女に誘導されるまま、

 従業員通路に連れて行かれた。



「君、記憶が残ったままなんだって?」


「うん。

 ごめんなさい。あの時何も言わなくて……」


「いや……。

 わからないことが多すぎて……

 あの店長のことは?」


「妖怪だって知ってるよ」


「なんだって?」


「でも、みんなには内緒って言われてるから、

 この店でそのこと知ってるのは

 わたしともう1人くらいだよ」


「みんな操られているとか?」


「違う違う!

 みんな普通にバイトしてるだけ」


「君はどうして妖怪の店って

 知りながら働いてるの?」


「ずっと前、店長に悪い妖怪から

 助けられたことがあったの。

 すごくいい人だったから、

 ここで働こうって決めて……」


「……」

 

「でさ、

 風吹っちって

 かまいたちって呼ばれる妖怪でしょ。

 アルバイト探しで困ってたからここを勧めたの」



 社は少しずつ、

 経緯を理解できてきた。

 


「汽車の中で風吹の正体や、

 凶悪な妖怪に出会っても冷静だったのは

 店長の影響?」


「全然冷静じゃなかったよ!

 最高に怖かったもん。

 カスミンは記憶消えてるから

 羨ましいくらい」



 もう1人の小田って子には、

 記憶飛ばしの術が普通に効いているようだ。


  

「あの店長は信用できるのか?

 何か怪しい動きとか見せてない?」


「社さんから見て、

 風吹っちって怖い?」


「……いや」


「それと一緒だよ」



 家業の関係で、

 妖怪絡みの案件をたくさん見てきた社だが、

 真面目に飲食店を営む妖怪など

 聞いたこともない。



「わたしから1つ聞いてもいい?」


「なに?」


「人間と妖怪って、

 本当に上手くやっていけるのかな?」


「!」



 社は質問の意図がわからなかった。

 


「一緒にいて、楽しい?」


「あっ……あぁ、楽しいよ」


「本当!」



 成瀬はそれを聞いて喜んだ。

 

 社は、その時の成瀬を見て気づいた。



「君……まさか店長のこと?」


「……風吹っちには内緒ね」



 社が想像していた以上に、

 最近の人間と妖怪の距離感は

 近いようだ。



 ——————



「ほな採用で、

 勤務は来週から頼むわ」


「了解!」


 社も事務所に通されて、

 あっさりと風吹の採用は決まった。


 成瀬が風吹に抱き付いて喜んでいる。


 店長は椅子に腰掛けながら社を見上げた。



「最近の怪異の発端、

 新四天王とかいう連中のこと教えたろか?」


「……新四天王?」


「そいつらの頭は八岐大蛇や。

 嵐も新四天王の1人で、夜行ってのが——」


「お前は何者だ?」


「?」


「それにどうして、

 そんな情報を持っている?」



 すると店長は、

 深く背もたれして腕を組んだ。



「そら、子飼いの蜘蛛どもに監視させてるからや」


「監視?」


「蜘蛛どもと視覚共有して、

 怪しい連中を監視してるねん」


「視覚共有……?

 答えろ、本当にお前は——」


「なんのための酒呑童子やねん。

 何にも教えよらんのか?」


「!?」



 酒呑童子は基本的に何も教えてくれない。

 

 誰にも頼らず、1人で解決しろ。

 

 それが酒呑童子の教育方針だ。



「俺は土蜘蛛や……

 聞いたことないか?」


「!」


「結構、有名やねんで」


「……まさか、土蜘蛛だって?」



 土蜘蛛——

 日本妖怪四天王の1体。

 平安の時代に、

 たった1体で都を地獄に落とした伝説の妖怪。



「日本妖怪の四天王の入れ替わりに

 動いてるみたいやで、

 俺には関係ないし、君らで対処してや」



 ただ目の前の土蜘蛛は、

 本当に伝説の妖怪かと思うくらい、

 長時間労働に疲れた

 店長にしか見えなかった。

 

 

 

 

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