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かまいたちの嫁~妖怪女子高生と退魔教師は今日も怪異を斬る~  作者: 鬼喜怪快
第二章 四天王と新四天王

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23話 妖しいバイト先



 

 季節外れのロングコートを羽織り、

 嵐は人目を避けるように山道を歩いていた。


 嵐は歩みを止めず、

 正面を見据えたまま、小さく呟いた。



「用があるならそのまま話してくれ。

 俺は監視されている……」


『……ほう。

 気付いたか、さすが新四天王様だ』



 嵐は、気配を消しながら

 彼に近付いて来る鵺に気づいていた。


 しかし、

 それを警戒するどころか、

 受け入れるかのように、鵺へ話しかけた。



『あの時、どうして追ってこなかった?』


「お前の逃げ足が早かった。

 それだけだ……」


『たわけ……

 殺気がなかったことくらいわかる。

 お前は、あいつらの仲間じゃねーのか?』


「……仲間さ」


『そうかい……

 どうもお前だけ違和感がある。

 今でも、俺と戦おうともしない』


「……」


『しかも、

 仲間から監視されてるとは穏やかじゃねー』



 嵐は視線を動かさず、

 歩く速度も変えず進んでいく。



「俺を殺しに来たのか?」


『殺すつもりだったんだが、

 やる気なさそうだなお前……』


「!」


『お前の妹なんて、

 俺の妖気を感じるなり、

 すぐに戦闘態勢に入りやがったぞ。

 兄貴より好戦的だったぜ』


「……」


『俺は今から八岐大蛇か麒麟を

 殺しにいってくる。

 報告したいならすればいい……』


「……しないよ」


『!』


「好きにしてくれ……」


『やっぱり変わってるな、お前……』


「……」


『それじゃ、

 遠慮なくお仲間をぶち殺してくるぜ』


「鵺」


『あん?』


「風吹……

 妹は強かったか?」


『鬼切丸が無けりゃ、ただの雑魚だ』


「……」


『ただ調子を狂わされたのが、

 その鬼切丸の鬼気を操れてるってところだ。

 普通なら鬼気に飲み込まれて

 鬼落ちか、夜叉落ちしちまうはずなのによぉ』


「そうか……」


『お前がそんなだから

 妹も変わってるんだろうな』



 その時、

 初めて嵐は微笑んだ。



「あいつは俺よりも強い心の刃を持っている。

 だから鬼気なんぞに飲み込まれない。

 本当に強い奴というのは、

 風吹のような奴のことを言うんだよ」


『……なんで殺すつもりの妹が強くて

 嬉しそうな顔してんだよ、お前』


「……そろそろ怪しまれそうだ」


『ふん……あいつら片付けたら、

 次はお前ら兄妹の首を獲ってやるぜ』



「……あぁ、楽しみにしている」



 嵐は鵺の気配が消えたことを確認すると、

 一度歩みを止めて、空に舞う鴉を見上げた。



「そろそろ潮時か……」



 ぽつりと呟くと、

 再び歩み始めた。



 ——————



 社たちの住むマンション——


 誤解の解けた風吹はご機嫌だった。



「先生、あの女狐にはいい男がいるらしいぜ。

 残念だったな!」



 残念も何もあったもんじゃない。


 誤解が悪化するように、

 氷花が操作しているようにしか

 思えなかった。



「もう他所の女に目移りするなよ、先生!」


「……」


「あんな性格の悪い狐と一緒にいられる男、

 顔が見てみたいよな」


 

 とりあえずご機嫌なので、

 社は一安心だった。

 

 そんなご機嫌な風吹は、

 スマホでずっと何かを検索している。



「ところで、さっきからスマホで何を調べてるの?」

 

「バイトだよ」


「バイト?」


「そう、バイト」


「……」


「いいのがねーんだよ」


「なんでバイトを探してるの?」


「ダブルインカムの方が生活助かるじゃん!」


「ダブルインカム……?」


「成瀬が働いているところにしようかなぁ」


「……初めてのバイトなら、

 紹介先とかがいいんじゃないか?」


「よし!」


「!」

 

「明日さ、一緒に成瀬のバイト先に行こうぜ!

 先生にも見てほしいんだよ。

 わたしに合ってるかをさ」


「……めんどくさいな」


「なんか言ったか?

 発情鬼……」


「なんでもない……

 一緒に見にいくよ」



 こうして2人は、

 風吹の希望するバイト先を

 下見に行くことになった。



 ——————



 翌日。

 学校の仕事が終わると、

 朧車を使って社が、風吹のもとへと向かった。


 時間は20時過ぎ——


 風吹はすでに客として店に入っていた。


 外から風吹の場所を確認する。

 

 何やら従業員と、

 話をしているようだ。


 彼女には見覚えがある。


 あの従業員は、

 あの世逝きの汽車の中で会った、


 ——成瀬だ。 



「いらっしゃいませーっ!」



 自動扉が開くと、

 元気な挨拶が聞こえた。


 

 ところが、

 社が店の中に入った瞬間——



「!」



 何者かの結界内へ入った感覚に襲われた。


 立ち尽くす社。

 

 辺りを見渡して警戒する。


 

 すると——



「先生ーっ!

 こっちこっち!」



 元気な風吹の声が社を招いた。


 風吹は気付いていない?

 どういうことだ?

 

 社は警戒しながら、

 風吹の席に向かう。

 

 成瀬は仕事に戻るために風吹から離れた。


 社と成瀬が通路ですれ違う——



「京都ではお世話になりましたーっ!」


「!」



 驚きのあまり、

 再び立ち止まる社。


 

「2人が婚約するとかびっくり!」



 成瀬はそう言って、

 バックヤードに消えていった。



「先生、遅いよ」


「……どうしてだ?」


「えっ?」


「あの日記憶を消したはずなのに、

 どうして俺のことを覚えているんだ?」


「……」


「この結界……

 それに強力な妖気も感じる。

 この店は……一体何なんだ?」



 至るところから視線を感じる。


 風吹が紹介されたバイト先——

 そこは、社が思っていた

 ただのバイト先ではなかった。





 


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