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かまいたちの嫁~妖怪女子高生と退魔教師は今日も怪異を斬る~  作者: 鬼喜怪快
第二章 四天王と新四天王

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22話 動き出す雷獣


 

 風吹が通う高校—— 


 今は昼休み。


 この日は風吹の機嫌の悪さに、

 小田と成瀬は困り果てていた。



「前にも言ったでしょ。

 彼氏のスマホは見ちゃダメだって……」

 

「……」


「風吹っち、遠距離だもんね。

 彼氏さんも魔が刺したんだねぇ」


「浮気はしてないって言ってたし!」



 機嫌の悪い原因は、

 社と妖狐の氷花のせいだった。


 昨夜、

 妖狐と会ったことがわかり、

 風吹が激怒している最中に、

 社のスマホに連絡が入ったのだ。



『昨日は楽しかったよ、発情鬼《はつじょうき》』



 まさかの氷花からだった。

 そして続け様に連絡が来る。



『忘れられない1日になったよ』

『今日のことは君とわたしだけの秘密ごと』

『かまいたちのお嬢ちゃんにはバレないように……』

『また連絡する』



 そこでようやく連絡は途切れた。 

 社は恐怖のあまり、

 震えていた。


 

 ——どこかでこの状況を見ている?


 

 氷花はどこかで監視をしていて、

 このタイミングでメッセージを送れば、

 大変なことになるとわかっていて

 送ってきている……。


 そう思うほど、

 劣悪なタイミングの連絡だったのだ。



「彼女は、お母さんの話を聞きに来ただけなんだ。

 決してやましいことは何もない。

 酒呑童子に誓って何もない!」


「楽しかったってどこか行ったの?」


「仕事があるだろ。

 どこに行けるんだよ」


「忘れられない1日って、何?」


「母親のことが聞けて、

 最高の1日だったってことだよ」


「かまいたちのお嬢ちゃんには

 バレないようにって……

 何をしたの?」


「何もしてないよ……

 文章がおかしい!

 氷花のこの文章には悪意がある!」


「発情鬼《はつじょうき》って呼ばれてるじゃん。

 鬼レベルの発情をしたってこと?」


「そんなわけないだろ!

 露出の激しい格好をしてる癖に、

 胸を見たとか言いがかりを付けてきて……」


「……乳見て発情したと?」



 何を言っても打ち返される。


 逃げ道は、

 あの世逝きの汽車の中よりもなかった。



「はっ、発情なんてしてないって!」



 また社のスマホが震えた。



『次会うときは、発情しないでね』



 社は膝から崩れた。

 

 解けない誤解のホームランを打たれた。


 社はもう、

 風吹の顔を見ることができなかった。



 ——————



 社が働く高校——


 廊下を歩く社を、

 生徒たちが驚くような顔を見せて

 挨拶をしていく。


 それもそのはず、

 無数の引っ掻き傷が見えるからだ。


 風吹にはまだ理性があったため、

 鬼切丸で斬り殺されることはなかった。


 ——が。


 爪で引っ掻き倒され、

 顔が傷だらけだった。



「先生、猫飼ってたっけ?」


「いや……」


「めっちゃ、引っ掻かれてるやん。

 何にやられたん?」


「かまいたちだ……」


「えっ?」


「……なんでもない。

 早く教室に入りなさい」



 完全な誤解から、

 風吹は心に傷を……

 社は身体に傷を

 負うことになった。



 

 しかしこの誤解は、

 怒り任せに実家へ帰った際に、

 父・風善からの言葉で解けることになる。 



「氷花ちゃんには、

 牛丸が決めた男性がいると聞いている……」


「本当に?」


「なんでも牛丸が死にかけていた

 その人間を助けたつもりが

 うっかり妖怪にしてしまったとか……」


「それヤバくない?

 うっかりレベルの話なの?」


「罪滅ぼしからか、そいつを鍛えに鍛えて、

 今では牛丸の後釜を任せられるくらいの

 実力者に育てたそうだ」


「……」


「そいつに氷花ちゃんを任せたいって、

 言っておったから、社に靡くとは思えんな」



 これにて、社の浮気疑惑は解消される。

 

 のちに社は、

 風善に心からのお礼を言いに行ったらしい。



 ——————


 

 それは遥か上空の、

 雲の上のさらに上にある結界内。


 その結界の中には、

 古風な小さな家が見える。

  

 そして、

 その家の中には

 身を潜める2体の妖怪の姿があった。



「鵺。

 何百年ぶりに姿を見せたと思えば、

 どうしてそんなに機嫌が悪いんだよ」


「雨降り小僧……

 俺は許せねぇんだよ。

 八岐大蛇と麒麟の野郎をよ……」


「ほっときなよ。

 鵺がいない間、いろんな妖怪が

 四天王のポストを狙って動いてたんだよ」


「馬鹿野郎!

 四天王とか別にどうだっていいんだよ。

 八岐大蛇どもに、いいように使われていたことが

 許せねーんだ!」

 


 そこは、雨降り小僧の結界内。

 

 鵺は、八岐大蛇の迷い家から逃れた後、

 ここに身を寄せていた。

 


「今の日本妖怪の情報を知っているのは

 天狗か、お前くらいだろ……

 新四天王だか八岐大蛇について

 知っていることを教えろや」


「だから知らないって!

 新四天王とか八岐大蛇が復活してるのも

 初めて聞いたんだから……。

 いきなり怒鳴り込んで来るからビックリしたよ」



 鵺は拳を握りしめた。



「俺を嵌めやがってよ、あいつら。

 絶対に許さねぇ」


「全員に仕返しするの?」

 

「決まってんだろ!

 あそこにいた新四天王だかを、

 全員ぶっ倒してやる!」


「でも、かまいたちは助けてくれたんでしょ?」


「けっ!

 そんなの偶然かも知れんだろ!」

 


 雨降り小僧は、

 鵺の顔を見つめた。



「かまいたちは……。

 鵺を逃すような戦いをしてくれていた?」


「……」



 粗野な鵺は、

 腕を組んで考えた。

 

 あの日、あの状況下で

 あの場から抜け出せたのは、

 かまいたちが巻き上げた砂埃が

 あったからこそだった。


 砂埃の中で、

 嵐は何もせず、

 ただ黙って鵺が去っていく様を見ていた。


 ——あれはどういう意図があっての行動だったのか。


 気がかり——


 鵺には解せない謎だった。

 


「とにかく、俺はやりたいようにやる!

 お前は情報を集めとけ!」



 そう言うと、

 鵺は結界を突き破って下界に降りていった。

 


「いつもこれだよ……

 どうして結界をわざわざ破壊して

 出ていくのかなぁ?」



 雨降り小僧は、呆れた顔を見せた。

 

 

「結界を直すのってさ、

 なかなかの妖気と手間がかかるんだよ。

 ……まったく」



 ——————

 

  

 雷雲に紛れて

 鵺が再び動き出した。 



「さぁーて、

 どいつから殺しに行こうかなぁ?」



 

 

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