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かまいたちの嫁~妖怪女子高生と退魔教師は今日も怪異を斬る~  作者: 鬼喜怪快
第二章 四天王と新四天王

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21話 姿を見せた黒幕




 洋館を模した迷い家の端々から、

 妖怪たちが姿を見せた。


 

 塀に叩きつけられていた鵺は、

 即座に戦闘体勢に入った。

 


「やってくれたなぁ!

 コラァ!」


「多少脳があって、

 扱いにくそうなら殺す予定だったんだ」


「死ねや!」


「君がね……」



 ――ズドドドドーン!


 

 鵺は四方八方に稲妻を落とし、

 妖怪たちを蹴散らした。


 動き回る鵺の後を追うように、

 うねる複数の影が見えた。



「蛇臭いから蟒蛇《うわばみ》とばかり

 思っていたらテメェーッ!」

 

「我らがこの国を治めるには、

 四天王と呼ばれる妖怪が邪魔で仕方ないのさ」


「いつ封印を解かれやがった!

 八岐大蛇《やまたのおろち》!」



 洋館の迷い家の主、

 その正体は八岐大蛇だった。


 若い人間の姿をしたその背中から、

 巨大な8匹の竜が姿を見せている。


 3匹の竜が牙を剥き出しにして鵺へ襲いかかる。

 しかし、

 鵺の速さに追いつけるはずもなかった。

 

 そこに4匹目の竜の口から炎が放たれた。



 ——ゴオオォォー!



 広範囲に炎が吐き出される。

 鵺は炎を躱し、八岐大蛇の懐へ飛び込んだ。



「遅いぜ……」



 全身から紫の稲妻を放つ。


 その瞬間、

 八岐大蛇の胸から5匹目の竜の顔が現れた。


 その竜が雄叫びを上げると、

 稲妻はすべてかき消されたのだ。



「なっ……なんだ?

 稲妻が消えただと!」


「馬鹿の一つ覚えの雷など、

 恐れるに足りん」



 鵺は素早く距離を取り、

 洋館の屋根の上へ飛び移った。

 

 八岐大蛇は鵺を見上げて微笑む。



「四天王が聞いて呆れるよ」


「知るか!

 周りが勝手にそう呼んでるだけで

 興味がねぇわ!」


「永く封印されていたものでね。

 久しぶりに外界へ出てみれば、

 私を知らぬ塵芥の妖怪が挨拶もせず歩いている」


「封印される程度の妖怪を誰が覚えてんだよ!

 うぬぼれんじゃねぇ!」


「どの妖怪も私を恐れはしないくせに、

 四天王と呼ばれるお前たちのことは

 一目置いている。

 その四天王を駒にするか殺すかすれば、

 塵芥も一斉に私の存在を知ることになるだろう?」


「なんだお前、

 この国の王にでもなりたいのか?」


「王は必要さ。

 いずれ異国の者とも

 相対する時が来ようからな」



 言い終わらぬうちに、

 鵺は八岐大蛇へ雷を放った。


 しかし——


  

「ぐはぁ!」


 

 突如、鵺はクロス状に切り裂かれ、

 胸から大量の血を噴き出した。


 八岐大蛇の攻撃ではなかった。

 妖怪の気配を感じた途端、

 斬られていた。


 鵺は雷光の如く動き、

 その場から距離を取ろうとした。

 

 しかし、

 1つの影が凄まじい勢いで迫ってくる。



「ちっ……お前は!」


「俺の尻拭い……すまなかったな」


「かまいたち!

 あの女の兄貴かぁ!」



 嵐は漆黒の大剣を振りかざし、

 鵺を迷い家の隅に追いこもうとしている。


 だが鵺は身体を雷へと変え、

 空高くへと移った。



「いい気になりやがって!

 ここから特大の稲妻を食らわせてやるわ!」



 鵺は妖気を溜め、

 八岐大蛇と嵐へ雷を落とそうとする。



「迷い家ごと吹き飛ばしてやるぜ!」


「!」


 

 その瞬間――

 鵺の身体が動かなくなった。


 ——金縛りの術。



「俺に金縛りだぁ……。

 一体誰が……?」



 鵺が周囲を見渡す。


 すると雲間から、

 巨大な角を携えた白馬の姿が見えた。

 

 その神々しい姿は、

 神獣と呼ばれる妖だった。


 

「……おいおい。

 麒麟じゃねーか」



 鵺の身体が、

 引き寄せられるように迷い家へ落ちていく。



「身体が動かん、

 それに重い……引力の術か?」



 急降下——



「クソがぁー!」



 地面へ叩きつけられ、

 砂埃が舞い上がる。


 そこへ5匹の竜が襲いかかる。

 鵺は全身から稲妻を放出し牽制しつつ、

 体勢を立て直した。

 

 麒麟が声を上げた。


 

「八岐大蛇、かまいたち!

 鵺は逃げる気だ!」



 竜巻のような風を巻き上げて、

 嵐が迫る。


 

「しつこいかまいたちだ!

 お前だけでもぶっ殺しておくか!」



 鵺は紫の雷を嵐に向けて放った。

  

 嵐は雷をも躱す身のこなしを見せる。


 躱された雷はすべて地面に落ち、

 砂埃を巻き上げた。


 そこに——


 

「鎌切流剣術——大鎌切!」



 嵐の大剣から放たれた刃風が、

 鵺を襲った。



 ——ズバーンッ!


 

 刃風は鵺ではなく

 鵺の足元の地面を深く斬った。

 

 さらに大きな砂埃が巻き上がり、

 煙幕のように一帯を包み込んだ。



「!」



 砂埃に飲み込まれた鵺と嵐。


 その中で、2体は目があった。


 しかし、

 嵐はそれ以上攻めて来ようとしない。



 ならばその隙にと――


 鵺は霞へと溶け込み、

 その身を隠した。



「!」


「鵺の気配が消えた?」


「まさかな……

 この面子から逃げ通したと?」



 八岐大蛇と麒麟は、

 鵺の気配が消えたことを察知した。

 

 鵺は、

 3体の妖怪に囲まれながらも

 この迷い家から見事に逃げ切ったのだ。


 

 砂埃で視界と注意が遮られた時、

 霞から黒雲へ紛れて消えていった。

 

 並の妖怪なら、

 絶対に対処不可能な状況だった。


  

 八岐大蛇がゆっくりと口を開く。


 

「さすがは四天王と

 呼ばれるだけのことはある。

 ……というわけか」


「結界を張る準備をしていたが

 大したものだな。

 雷光のような動きに攪乱され、

 我らが動きを封じられていたようだ……」


「まぁ良い。

 これで四天王の力はある程度わかった。

 問題なく計画を進めよう」


「……」


「嵐、すまないが、

 会議室から一部始終を傍観していた

 姫を呼んできてくれるかい」



 その時、

 八岐大蛇の背後に影が立った。


 煌びやかな羽織を着た、

 美しい女性の姿。



「呼びに来ずとも、わらわはここにおる」


「君の悪いところだよ……

 仲間なのに行動を共にしようとしない」


「ふふっ。

 鵺ごときに、そなた達は大げさなのだよ。

 その時が来ればわらわも動く。

 安心しておくれ」


「もちろんさ……。

 期待しているよ――鈴鹿御前」



 ——————



 その頃、

 社の部屋では、風吹が夕飯の支度をしていた。


 ところが——


  

「狐の匂いがする……」


 

 ——ギクッ!


 社は心臓が止まりそうになった。

 

 氷花が来たことは、

 内緒にすることになっている。

 

 もちろん風吹には言っていない。 



「なんか先生から

 性格の悪い女狐の匂いがするんだけど……」


「なっなんだよ。

 狐の匂いって……」


「……牛丸っていう、

 天狗のお爺さんの家にいた妖狐だよ」


「……へぇ、

 そうなのか」


「こっそり会ってないよな?」



 ガシャン!


 飲んでいたコーヒーをこぼす社。



「何やってんだよ先生!」


「うわわっ!

 拭く物を貸してくれ!」



 風吹がタオルを持ってやってきた。

 社のズボンと足元を拭き始める。



「ズボン、履き替えてくるよ」



 立ちあがろうとした社の耳元に、

 風吹が顔を寄せて小さく呟いた。



「狐に……会ったな」


「!」


「獣の妖怪同士、

 匂いには敏感なんだ……」


 

 その時の風吹の目は、

 嵐より、

 酒呑童子よりも怖かったという。



「きき……聞きたいことがあるって……」


「会ったんだな……?」


「会ったっていうか、

 質問をしに来ただけ——」



 すでに鬼切丸が抜かれていた。



「なっなんで!

 なんで抜けるの鬼切丸!?」


「先生の……」


「落ち着け風吹、

 お前は何か大きな勘違いをしている!」


「浮気者ーっ!」



「ぎゃあぁぁぁー!」



 社の悲鳴は、

 かなり遠くまで響いたらしい。




 

 

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