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かまいたちの嫁~妖怪女子高生と退魔教師は今日も怪異を斬る~  作者: 鬼喜怪快
第二章 四天王と新四天王

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16話 九尾の娘



 突然、

 風吹は天狗の迷い家に招かれた。


 風善と共に客間に案内される。


 

「今日は天狗さんに会いに行くって

 言ってたよね?」


「そうだ。

 会って話を聞いている最中に、

 鵺に襲われてると天狗が教えてくれてな。

 それでここまで来たというわけだ」


「鵺と戦ってる時にみんなが来てくれてもさ。

 あれ勝てたかな?

 ヤバいくらいに強かったけど……」


「それはお前……。

 やってみなければわからんだろう。

 知らんけど……」

 

「……なによそれ」


「しかし鬼気を取り込むとは、

 凄いことを思いついたものだ。

 普通ならそれだけで生きておれんぞ」


「えっ?

 そうなの?」



 天狗の牛丸が客間に入ってきた。

 後ろに誰かがついている。


 風吹の肌がヒリ付いた。


 ——強い妖気の持ち主だ。



「待たせたな。

 鎌切の愛娘を見せられては、

 こちらもと思うて連れてきた」



 一緒に現れたのは、

 崩した着こなしをした

 着物姿の女性だった。


 長い黒髪。

 妖艶な雰囲気。

 すべてを達観したような目線。


 そして——

 何より美人だった。



「氷花ちゃんか!?」


「おじさま、お久しぶりでございます」


「これは参った!

 なんと、氷花ちゃんがこんなに美人に……

 いやはや昔から美人ではあったが、

 これはまた一層!」


「いやですわ、おじさま」



 鼻の下を伸ばす父親に呆れる風吹。


 

「ゴフッ!」


 

 風吹は風善の横腹に

 パンチを叩き込んだ。



「で、なんか天狗さんから聞けたの?」



 涙目の風善は、

 腹をさすりながら話し始めた。



「利用価値のある妖怪たちが、

 攫われるか殺されているらしい」


「どういうこと?」


「瞳力を持つ妖怪が殺されて

 目を奪われていたり……。

 特殊な能力を持つ妖怪が

 行方不明になっているようだ」


「なんで?」



 牛丸が話に加わった。



「ここからはわしが話そう。

 おそらく能力を調べるための実験か、

 特殊な妖怪そのものを

 海外へ横流ししているのだろう」


「?」


「先日の夜汽車の件も聞いているが、

 人間の魂はさまざまな使い道がある。

 妖怪からすれば、餌にもなるし金にもなる。

 何者かが暗躍しているように思える」


「なんでそんなことを……?

 どうしてそれに、

 にいにが加担してんだよ!?」

 

「それはわからない……

 敵の存在の輪郭すら見えていない」


「わたしが鵺に襲われた

 理由とかもわかってないの?」


「鵺の出現には驚かされた。

 ここ数百年……

 まったく姿を見せなかった奴だ。

 てっきり海を渡ったものだと思っていたが」


「わたしを殺した後は、パパ……

 その次は人間だって言ってた。

 絶対、にいにと繋がりがあると思う……」


「?」


「人間って先生のことだよ。

 先生のこと知ってるの、

 パパとにいにだけだもん」



 天狗は腕を組み首を傾けた。


 

「風吹、先生とは誰だ?」


「……わたしの婚約者の人間だよ」


「ほう……

 かまいたちの娘が人間と婚約か」


「なんだよ……。

 人間とは無理だって言いたいんだろ?」


「そうではない。

 この氷花にも見習ってもらいたいと思ってな」



 その瞬間、

 恐ろしいほどの殺気を氷花から感じとった。

 

 牛丸は言ってはいけないことを

 言ったようだ。

 

 

「言っとくけど鬼切丸を差し出して、

 向こうから求婚してきたんだからな!」


「鬼切丸!?

 その人間とは……

 まさか、社亮介か?」


「天狗さん知ってるの?」


「あぁ、もちろんだ」


「やっぱ先生は有名だなぁ!

 かっこいいし、

 強いし当然だな!」


「直接会ったことはないが……

 わしの知る限り、

 あれほど強い人間はおらん。

 奴が妖怪に求婚して来るとは、また驚きだ」


「夜汽車の中でさ、

 鬼切丸を貸してくれるだけじゃなくて、

 くれたんだよ。

 何回も確認したんだぞ。

 本当にいいのかって?」


「ふむ」


「そしたら、酒呑童子様からも

 許可をもらったって言うしさ」


「誠に驚きよ。

 社は役小角の血統……。

 鬼を宿す一族の者だ」


「誰?

 役小角って?」


「その昔いた、

 鬼を従えた伝説の呪術師だ」


「先生はどっちかっていうと、

 酒呑童子様に怒られてた気がするけど」


「酒呑童子が鬼切丸を

 他者に譲るわけがないと思っていた。

 ましてや鬼切丸自身も、

 その刀身を誰かに見せることなどないと……」


「先生も鬼切丸が抜けた時は、

 びっくりしたって言ってた」


「ふふっ。

 やはりお前には何か特別な力が

 あるのかもしれんな」


「わたし絶対に何か持ってるよね。

 だって、なにげに四天王の2体と喋ってるじゃん!

 これって絶対に自慢できることでしょ!」

 


 すると、

 今まで黙っていた氷花が口を開いた。



「酒呑童子……四天王の1体よね。

 そんな奴を宿す人間がいるの?」


「あぁ……

 酒呑童子ならお前の母のことも

 知っておるかもしれんな」


「……」



 その時、風善が何かを思い出した。



「そうか。

 氷花ちゃんの母親は九尾の玉藻御前だったな」



 それを聞いて風吹は目を丸くした。


 この氷花の佇まい——

 

 何か他の妖怪と違う雰囲気だとは思っていたが、

 四天王最強の1体、

 九尾の狐の娘だったのだ。



「四天王が親とかすご……

 勝ち組じゃん」


「そうでもないよ……お嬢ちゃん。

 わたしは妖狐の中でも落ちこぼれ……」


「とても落ちこぼれの

 妖気には思えないけど……」


「尾がね。

 わたしは5本までしか出せないの……

 親がすごいっていうのもコンプレックスなのさ」



 風吹はそのセリフを聞いた時、

 兄・嵐を思い出した。


 優秀過ぎる家族。

 いつも比べられる存在。


 氷花の苦労が、

 自分ごとのようにわかった。



「なんか、

 その気持ちわかるよ」


「そう……」



 氷花が風吹の方を向いた。



「近々、あなたのフィアンセに

 会いに行かせてもらおうかしら」


「えっ?」


「母のこと……

 知ってるかもしれないからね」


「……別にいいけど、

 色仕掛けとかしないでよね」


「人間の男でしょ?

 心変わりなんて最も多い生き物……

 奪ってしまったら御免なさいね」


「!」


「やっぱり絶対に会わせない!」



 怒る風吹を見て、

 氷花は意地悪そうに笑った。



「こら!

 静かにしないか風吹!」


「幼きものを揶揄うのはよさぬか、氷花!」



 互いに怒られる始末だった。



 ——————



 結局、嵐について——

 

 また、暗躍する組織について——


 なにもわからないまま、

 解散することになった。


 

 牛丸から聞いた情報の中に、

 嵐が襲ったと思われる地域では

 死者数が極めて少ないという話があった。


 攫われた妖怪もおらず、

 殺された妖怪はもちろんいるが、

 団三郎狸のように一命を取り留めた

 妖怪も多いという。


 何か考えがあってのことなのだろうか?


 今のところ、

 それは誰にもわからない。


 ただ、

 嵐の中に一抹の良心があるのでは——?


 そんな期待を持ってやまない風吹だった。

 

 


 一方その頃——

 氷花は母のことを知るため、

 社のもとへ向かう支度を始めていた。

 


 

 


 

 

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