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かまいたちの嫁~妖怪女子高生と退魔教師は今日も怪異を斬る~  作者: 鬼喜怪快
第一章 嵐と風吹

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10話 嵐が吹く




 大きなお屋敷の客間から、

 立派な庭が見える。


 そこは鹿威しの音が響く、

 なんとも風流な作りの家だった。



「もうすぐパパ来るからさ」


「……」



 今日は日曜日——

 社が風吹の実家に顔を見せる日だ。



 ——————



 社には、

 父親に嫌われて破談になる。

 

 ——という大きな目標があった。


 しかし、

 そんな目標を

 忘れてしまいそうなくらいの立派な屋敷。


 座っているだけでも緊張するくらいだった。



「なんかさ、

 うちの会社で開発した新薬が

 国から承認が下りたらしくて

 大忙しなんだって……ごめんね」



 KAMAGIRI製薬——

 日本でも指折りの製薬会社だ。


 まさか風吹が、

 そこの令嬢だったとは社も知らなかった。



「!」



 社は強力な妖気に気がついた。

 

 明らかに社を威嚇するように、

 発せられている。


 襖の向こうに、

 それはいる——。



「……ご主人様が入られます」



 その声と同時に襖が開かれた。


 威厳と貫禄のある男が、

 社を睨みつけながら入ってきた。



 人間年齢で言えば、

 見た目は50代半ばほどだろうか。

 

 社から片時も目を離さず、

 風吹と社の向かい側に座った。


 そして第一声——



「娘はやらん——帰れ人間!」



 だった。



「なっ、なんてこと言うんだよ!

 せっかく先生が家まで来てくれたのに!」



 怒る風吹。



「風吹……

 お前はまだ子供だ。

 だからわからないのだ、

 この人間の考えていることが……」


「なんだよ、考えてることって!?」


「財産目当てだ……。

 そうでもないと、よほどの覚悟がない限り

 人間と妖怪が結婚なんかするもんか!」


「ママも人間だったろ!?

 パパは結婚してたじゃないか!」


「うちは数少ない成功例だ!

 ほとんどの夫婦が失敗に終わってる!」

 


 社は様子をうかがいながら、

 出されたお茶に口をつける。



「わたしたちだって、

 絶対に上手くやって見せる!」


「そう言って、

 数多の妖怪と人間は失敗に終わっているのだ!」


「わたしたちは違う!

 そうだろ!

 先生!」



 急に話を振られた社。

 すべてが突然だったため

 自己紹介もできていない。


 これが社の第一声となる—— 

   

 

「……そうですよね。

 おっしゃることはごもっともです。

 財産目当てなどではありませんが、

 覚悟が甘かったように思います。

 それでは今回のお話は無かったということで、

 私は、これにて……」



 社はここぞとばかりに席を立ち、

 一礼をして出て行こうとした。



「ちょっ……。先生ってば!」



 風吹が慌てて追いかける。


 風善は追い討ちをかけるように

 言い放った。



「根性なしめ!

 どうしても風吹と結婚したいのなら、

 風吹の好きなところをせめて100個くらい

 言えるようになってから出直して来い!」



 社は無視して玄関へと向かった。


 風吹が追いかけてくる。



「先生!

 帰んないでよ!

 結婚相手の父親とはよく揉めるらしいぞ!

 きっと時間をかければ——」


「風吹……

 君のお父さんから帰れと言われた。

 これでは結婚などできない」


「……結婚には多少の障害は付きものだって、

 なんかの本に書いてあったぞ!」


「俺じゃダメなんだよ……

 君にはもっと素敵な男がいるはずだ。

 俺とは今日でお別れなんだよ」

 

「なんで、そうなるんだよぉ!」



 風吹は困り果てた表情を見せた。

 

 すると、

 客間の方から再び強力な妖気が

 押し寄せてくる。


 まさか風吹の父親が、

 風吹の好きな部分100個を

 言わせに来たのだろうか?


 社は身構えた——



「?」



 ——いや、違う!



 殺気だ。

 

 先ほどの風善からは感じられなかった、

 とんでもない殺気を感じた。

 

 次の瞬間だった——


 玄関一帯の屋根と天井が、

 爆音と共に吹き飛んでいった。



 ——ドオォオン!



 建物全体が激しく揺れ、崩れてゆく。



「きゃあぁぁーっ!」



 風吹は何が起こっているのか

 理解できずに叫んだ。


 そして、

 風吹の立っている廊下の天井が

 屋根ごと崩れ落ちてきた。



「これはまずい……」



 社が一言主神の術を発動させようとした、

 その時、


 崩れ落ちてきた天井が、

 今度は吹き上がるように

 風に飛ばされていった。



 風吹を救った妖気の出どころ——。

 

 社は庭の方へ目を向けた。


 そこには風吹の父親、

 風善が立っていた。



 そして、

 風善の向かいに立つ者がいる。 


 そいつは、

 凄まじい殺気を露わにしていた。


 奴が屋敷を吹き飛ばした元凶に

 間違いなかった。



「この妖気は!?」


 

 目の前の禍々しい妖気に、

 社は身構えた。


 すると——


 

「にいに!」



 突然、

 風吹が笑顔を見せながら声を上げた。



「風吹……。

 彼が君の言っていた

 行方不明のお兄さんなのか?」


「うん!

 もう何十年も行方不明だったんだ。

 それがなんでいるんだろ!?」


「……これは普通の状況ではないよ」


「まさか!

 わたしがフィアンセを

 連れて帰って来ることを知って、

 帰ってきたとか?」


「それなら間違いなく

 俺を殺すための登場の仕方だよね……これ」



 風善と嵐が庭で対峙している。



「久しぶりに顔を出したと思えば、

 大切な家をぶっ壊しおって、

 このバカ息子が!」


「……久しぶりだね。

 お父さん」


「ずいぶん雰囲気が変わったな。

 嫌な目つきになった。

 好かん顔だ——」



 すると嵐は微笑んだ。



「この家の真実を知ったからだよ——」


「あん?」


「時代は変わるものなんだ」


「何を言っている……?」


「この家は目立ち過ぎた——」


「……何か、良からぬ者に憑かれたか?」



「俺が殺してあげるから……

 ねぇ——

 お父さん」




  


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