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甘い

ケーキ。

※途中キスシーンあり。

 天使(あまつか)(わたる)三田(みつだ)頼之(よりゆき)の所に来て、家事をしていた。


「ぁ──」


 冷蔵庫を開けると、ケーキ屋の箱が目に入った。

 渉は昨日の頼之からのメールを思い出し、小さく笑う。


「サンタさんに聞いてみよう」


 いつ食べるか聞いたら、それまでに洗濯物を終わらせよう──そう思いながら、渉は仕事部屋に向かった。


 仕事部屋に入ると、頼之は伸びていた。


「ん……、どうした?」


 と掛けていた紺色のフレーム眼鏡を外して、渉を見る。

 渉は少し近づいて、頼之に訊いた。


「あの、ケーキいつ食べますか?」

「ケーキ? ……あぁ、じゃあ今やってるのが終わったらにしよう。テンシはもう終わったのか?」

「いや、あとは洗濯物だけです──」


 と渉は腕捲りをしながら答えた。

 頼之は、そうか。と頷くと、提案する。


「じゃあ、俺とテンシのやることが終わったら食べよう」

「わかりました。じゃ、干してきますね──」


 渉は笑って、仕事部屋を出て行った。


「……頑張るか──」


 頼之は眼鏡を掛けると、よし──とキーボードを打ち始めた。


         *


「……終わった──」


 ベランダで、ぐっと渉は伸びる。


「ん〜……うわ──」


 渉は振り返って驚いた。

 窓に寄りかかるようにして、頼之が立っていたからだ。


「びっくりした……声出してくださいよ」

「いや、いい天気だと思ったから──」


 と頼之もサンダルを履くと、渉の横に来る。


「雲一つないな」

「ですね……」


 と渉も空を見る。

 水色一色で、ずっと先まで続いている。


「昨日は、楽しかったか?」

「まぁ……、はい。(たく)が酔って大変でしたけど、楽しかったですよ」


 と渉は苦笑いして言う。


「そうか」

「はい──」


 しばらく空を眺めてから、ふと渉は頼之を見た。

 頼之も視線に気づいて、渉を見る。それからふっと微笑むと、そっと顔を近づけて、渉に口づけをした。


「……だ、誰かに見られたらどうするんですか!?」


 と渉は顔を赤くしながら言う。


「大丈夫だ──」


 誰もいない。と道路を見て頼之は言った。


「そういう問題じゃ」

「そろそろ入ろう。体が冷える──」


 頼之は渉の言葉を遮ると、サンダルを揃えて脱ぎ、部屋に入る。


「サンタさん……!」

 

 最後まで聞いてくださいよ! と渉もサンダルを脱いで部屋に入った。


         *


「……ん、おいしい!」

「そうだな──」


 テーブルで向かい合って座りながら、ショートケーキを食べる。

 

「テンシ」

「……はい?」


 とケーキを食べながら、渉は頼之を見る。


「メリークリスマス。昨日言えなかったから──」


 電話切られて。と頼之はフォークでケーキを一口サイズに切り、口に運ぶ。


「いや……あの時はちょっとばたばたしてて……」

「わかってる。携帯からでも十分伝わったからな」


 と頼之は苦笑いする。

 そんな頼之を見ると申し訳なくなって、渉は謝る。


「すいません……」

「いいよ──今こうやって、一緒に過ごせてるんだ」


 と頼之は微笑んでフォークをケーキに刺す。


「ん──」


 ほら、とケーキの刺さったフォークを渉に向けて、頼之は腕を伸ばす。


「ぁ、えっと……」


 渉は目を泳がせて、言葉に詰まる。

 これは……食べて良いのだろうか? でも恥ずかしいし……と躊躇していると、頼之が言った。


「腕が疲れる」

「え……。あっ、じゃあ……、いただきます──」


 少し顔を前に出して、ケーキの刺さったフォークを迎えにいき、ぱくっと食べる。


「おいしいか?」

「……甘いです……」


 もぐもぐと少し恥ずかしそうに俯いて食べる渉を見て、そうか。と頼之は微笑んだ──





渉「二十歳過ぎで、食べさせてもらうとは思ってなかった……(恥)」


次回は、今月の最終日か来月の始まりになります。

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