魔術の国
その昔、神々が人々に与えた魔法の欠片より、新たなる力を見出した女王の王国があった。女王は結晶から魔力を、星々から雷を見出し、それらを「魔術」と名付けた。神の子たる星々から得られたこの力こそ、天が振るう魔法に最も近き存在である。そう信じた女王は、結晶の叡智と権威の雷をもって国を豊かに導き、魔術師たちが治める千年王国の実現を夢見た。しかし、生まれたばかりの魔術は未だ不安定であり、いつ暴走して世界に災厄をもたらすか分からぬ危うさを秘めていた。女王はその脅威を取り除くべく、魔術の源たる魔力を細かく、さらに細かく分解し、融合させる研究を重ねた。そうして生み出されたのが、純粋なる結晶を扱う「結晶魔術」、天の力を操る「雷の魔術」。そして人間の本質を蝕む代償と引き換えに、強大な力を引き出す「闇の魔術」であった。
闇の魔術は、呪術すら超える禁忌とされた。これを野放しにすれば、魔術がもたらすはずの繁栄は、やがて世界を蝕む災厄へと変わるだろう。そう考えた女王は、千年王国の理想を守るため、闇の魔術を封印し、その研究と創造を固く禁じた。たとえそれが、かつて自らを支えた忠実なる配下たちを追放する結果になろうとも、彼女はその決断を覆さなかった。厳正なる魔術主義を掲げながらも、女王は異なる思想を持つ者を迫害せず、誰一人として不当に傷つけることはなかった。その慈悲深さと英知をもって国を治める彼女を、国民は尊敬と感謝をもって慕い、王国には確かな繁栄と平穏がもたらされていた。
誰もが、女王の夢見る千年王国は必ずや実現すると信じていた。
だが、その理想は永遠ではなかった。
闇に魅入られた一人の賢者が、女王の築き上げた王国に牙を剥いた。千年の繁栄を目前にして、女王の夢は砕かれ、彼女自身もまた、深き闇の中へと呑み込まれていくのだった。




