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王宮からの支援要請

「王宮より、エリ様へ至急登城いただきたいとの要請が届いております!」


 静寂を破り、受付係の神官が血相を変えて飛び込んできた。その必死な形相に、ソファでくつろいでいたエリはわずかに眉を寄せた。


「……随分と騒々しいわね。王宮が私に用なんて、一体何ごとかしら」

「厄介事の臭いがするな。俺も同道しよう」


 隣で剣を磨いていたナイトホークが、鋭い眼光を向けて立ち上がる。その言葉に、執事のように控えていたオーエンも深く頷いた。


「ナイトホーク殿が行かれるのでしたら、私も参りましょう。エリ様は王宮での作法をご存じありませんからな。粗相があっては大変です」

「じゃあ、三人で行きましょうか。なんだか放っておけそうにないし」


 エリは腰を上げ、三人は足早に王宮へと向かった。


 王宮の白亜の壁が見えてくるにつれ、周囲の空気は目に見えて重苦しく変貌していった。エリは門をくぐる直前で足を止め、顔をしかめる。


「……何かしらこれ。この間来た時とは違って、言葉にできないけど、すごく嫌な雰囲気がするわ」

「エリにも分かるか。王宮の地下にある封印が弱まっているようだな」


 ナイトホークが忌々しげに城の地下を見据えた。


「王宮の封印?」

「建国の王は、かつてこの地を蹂躙していた『魔』を討伐した勇者だった。だが、奴を完全に滅ぼすことはできず、封印を施した上に城を築き、自らがその番となったのだ。代々の王はその役目を引き継いできたのだが……どうやら、その力も限界のようだな」


 ナイトホークの解説に、エリはどこか事務的な感想を漏らす。


「古代の封印ね……。まあ、何にでも寿命はあるし、そろそろ交換時期が来たってことかしら」


「勇者が滅ぼしきれなかった魔物となれば、相当な強敵でしょうね」

 オーエンが不安げにエリを振り返る。


「エリ様の手に負えるでしょうか?」

「大丈夫よ。もし王宮が吹き飛んでもいいっていうなら、上空から地中貫通爆弾の『バンカーバスター』でもお見舞いしてあげるわ」

「……それは王が許さぬと思うぞ」


 ナイトホークが即座にツッコミを入れ、一行は城内へと足を踏み入れた。


 王宮内部では、宮廷魔法使いたちが総出で結界を維持しようと必死に呪文を唱えていた。床に描かれた魔法陣が激しく明滅し、焦燥感が空間を支配している。


 そこへ、顔色の悪い宰相が駆け寄ってきた。


「お待ちしておりました! エリ殿! 地下に封じていた古代の魔に復活の兆しが見え始め……ぜひとも、聖魔法の使い手であるあなたの力をお貸しいただきたい!」

「聖魔法……? 何それ」


 聞き慣れない単語にエリが首を傾げると、横からオーエンが小声で補足した。


「エリ様が普段お使いになっている魔法のことですよ。呼び名など、今は気にする必要はありません」

「ふーん、まあいいわ。それで、その『魔』とやらと対峙してる最前線はどこなの?」


 宰相は震える指で、さらに深淵へと続く階段を指し示した。


「こ、こちらです……」

「王様は? この中にいるの?」


 エリの問いに、宰相は申し訳なさそうに視線を泳がせた。


「……王族の方々に万が一があってはなりませんので、既に離宮の方へ避難していただいております」


 その言葉を聞いた瞬間、エリの口角が皮肉げに上がった。


「建国の勇者様とは、ずいぶん格好の付け方が違うのね」

「……申し訳ございません」


 平伏する宰相を尻目に、エリは迷いのない足取りで地下への階段を下り始めた。


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