女神の詰問
「セルブリオに行ってくるわ」
言い残すや否や、エリは転移魔法で境界を越えた。視界が揺らぎ、次に足がついたのはセルブリオの中央神殿だった。
突如として光の中から現れたエリの姿に、居合わせた神官たちは色を失い、すぐさま地を這うように跪いた。本物の「神の降臨」として、彼らは最大級の敬意をもってエリを迎え入れた。
「私がやって来たのは他でもない。セルブリオの指導者と話がしたいからよ」
その威風堂々とした宣言に神官たちは震え上がり、翌日、この国の政を司る男たちが神殿へと姿を現した。
「私がセルブリオの指導者、ロマーノと申します。此度は女神様のご降臨と聞き、一刻も早くと思い、慌てて駆けつけた次第にございます」
(慌てた割には、ずいぶんと身なりを整える余裕があったみたいだし、時間もかかったわね……)
エリは内心で冷ややかな感想を抱いたが、あえてそれを口に出すことはせず、本題を切り出した。
「私はアルセリアの女神エリ。戦いを統べる者として知られているわ。――アルセリア王フレデリックより、セルブリオとの戦における必勝祈願の請願があった。けれど、私はまずセルブリオにどのような罪があるのかを確認しに来たの。この戦いに、心当たりはあるかしら?」
その言葉が落ちた瞬間、ロマーノの顔から血の気が一気に失せ、土気色へと変わった。
「その顔……どうやら、心当たりがあるようね」
「め、滅相もございません! 我々のような小さな島国が、大国アルセリアに襲いかかられればひとたまりもない……。国中が荒廃し、一木一草たりとも残らぬ荒野と化す未来を想像し、恐ろしさに震えただけでございます!」
必死に弁明するロマーノを、エリは射抜くような視線で射すくめた。
「ならば、アルセリアとの戦を企図した者はこの国には居らぬということね。……もしそれが嘘であれば、アルセリアの手を煩わせるまでもない。今後千年の間、セルブリオに一切の人が住めぬよう呪いをかけることも厭わぬ。いいわね?」
エリは思いつく限り、最も苛烈な脅し文句を叩きつける。
ロマーノはその場に崩れ落ちるように平伏し、反論はおろか、一言も発することができぬまま、ただ震えて沈黙を守るしかなかった。




