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女神の掌の上

「女神エリよ! これは陛下との約束に従い採取したまでにございます。神殿の取り分は約束通り十枚、王と国のために九十枚。私は決してエリ様との約束を違えてはおりません。もし私に神罰を下せば、後で後悔することになりますよ!」


 カルミナは、まるで肺に空気を送り込むのと同じくらい自然に、真っ赤な嘘を吐き出した。その堂々たる態度は、傍らに立つ将軍を戦慄させる。


「将軍よ。カルミナの言葉が真実であれば、王の名代であるお前を罰しなければならなくなる。……カルミナの言葉は、真実か?」


 静謐せいひつながらも逃げ場のないエリの問い。将軍は即座に言葉を返すことができなかった。隣を見れば、カルミナが凄まじい形相でこちらを睨みつけている。「合わせろ」——その瞳が雄弁に語っていた。


「……カルミナ様の、仰せの通りにございます」


 将軍はがっくりと肩を落とし、消え入りそうな声で肯定した。その瞬間、カルミナの口角がわずかに吊り上がる。だが、女神の慈悲深い微笑みが消えることはなかった。


「それでは、これを見てもらいましょうか」


 エリの声が周囲に響き渡ると同時に、虚空に光の幕が展開された。そこに映し出されたのは、先ほど行われたばかりのカルミナと将軍の密談。強欲な企て、王への不敬、神を欺く算段——そのすべてが、衆人環視の中で鮮明に再生されたのである。


「陛下とは既に話がついています。神殿と王宮で五十枚ずつを分かち合うと。将軍、あなたは陛下から褒賞を授かることはあっても、罰せられることはありません……」


 突きつけられた動かぬ証拠。カルミナと将軍は、その場に崩れ落ちるように平伏した。言い逃れも、虚飾も、すべては無に帰した。二人は震える手で、不正に採取した九十枚の鱗を次々と海へと投棄するしかなかった。


 神殿に戻った後、事の顛末てんまつを聞かされたオーエンとナイトホークは、何よりも「あの映像」の正体が気になって仕方がなかった。


「なぁ、エリ。あの密談をどうやって録画したんだ? まるで幽霊になってカルミナに張り付いていたようなタイミングだったが」


 オーエンの問いに、エリは悪戯っぽく微笑んで種明かしをした。


「超小型の神の目を、こっそりカルミナの服に張り付けておいたのよ。期待通り、いい働きをしてくれたわ」


「……エリは諜報戦インテリジェンスにも長けているようだな。敵に回したくないものだ」


 ナイトホークは感心したように、あるいは戦慄を覚えたように、深く舌を巻いた。神の奇跡に見えたそれは、現代技術を駆使した容赦のない「罠」だったのである。


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