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深海の巨獣と18式の牙

「ナイトホーク、空から索敵に出るわよ。オーエンはここで待機。絶対に海には近づかないでね」


 エリの指示に、オーエンは不安げながらも「御意、お気をつけて……!」と深く頭を下げた。エリはナイトホークと共にふわりと宙に浮き上がり、灰色の海原へと飛び出した。


「よし、奴もまさかエリが討伐に来ているとは夢にも思うまい。今頃は海面近くで油断して、ぷっかりと浮いているかもしれんぞ」

「この世界では最強の魔物なんでしょう? その油断が運の尽きね」


 冷たい海風を切り裂きながら、エリたちは高度を上げていく。一面の曇り空と、それ以上に暗い灰色の海。しばらく広大な水面を走らせていたエリの視界に、異様な違和感が飛び込んできた。


「……見つけた。きっとあれね」

「ああ、水中にあるあの巨大なシルエット……間違いなくレヴィアタンだ」


 海面下に潜むその影は、あまりにも巨大だった。


「この高度から見てあのサイズ……世界最大の原潜オハイオ級原子力潜水艦もかくや、というサイズ感ね。この世界の基準じゃ別格の大きさだろうけど……」


 エリは虚空を見つめ、静かに意識を集中させる。

(エリは自前の武器カタログを検索中だな)ナイトホークは思った。


「私からすれば、ただの『大きな的』に過ぎないわ」

「エリ、油断するなよ。奴の竜鱗装甲は並の剣も魔法も弾き返すほど硬いぞ」

「大丈夫。面で叩くんじゃなくて、『点』で貫くから」


 エリは右手を海面へと突き出し、この世界には存在しない「鉄の魚」を呼び出す。


「――召喚。18式長魚雷、三発。目標、レヴィアタン型潜水艦」


 虚空から重厚な金属音と共に、三本の巨大な魚雷が出現した。


「エリ、その細長い鉄の柱は何だ」


「これは魚雷といって水中の敵に適応した最新の武器よ。こいつは優れモノで水中の敵が逃げても追いかけていくのよ」


 18式長魚雷は着水すると同時に強力な推進力を得て、低いシューというスクリュー音とわずかな白い航跡を残しながら、一直線に深海の影へと突き進んでいく。

 魚雷の接近に気がついた黒い影が逃げ出したが


「もう遅いこの18式長魚雷は速度70ノット(時速130km)の高速魚雷よ。生き物ではとても逃げ切れないわよ」


 その速度、そして正確無比な誘導。逃げる間もなく、魚雷はレヴィアタンの巨大な胴体へと吸い込まれていった。


「全弾、命中」


「どうだ、レヴィアタンの装甲を、あの固い鱗を破れたか」とナイトホークが自問している。


 しばしの静寂のあと、 ――ドォォォォォォン!!


 海中から響く、腹に響くような重低音。

 海面が大きく盛り上がり、レヴィアタンの巨体が内側から膨れ上がったように見えた。直後、その巨大な鰐のような口から、行き場を失った爆発ガスと鮮血が猛烈な勢いで排出された。


「……やれたのか?」


 ナイトホークが慎重に問いかける。

 静寂を取り戻しつつある海面に、エリとナイトホークはじっと目を凝らした。


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