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神の座と強引な継承

「神の座」とは、一体どこにあるのだろう。

 エリには想像もつかなかった。天国か、あるいはユートピアか。なんとなく雲の上のような高い場所にあるイメージを抱いていたが、(高いところだと寒いし、空気も薄そうよね……)などと現実的な心配をしているうちに、カラスが彼女を導いたのは、あろうことか山の中の薄暗い洞穴だった。


(えっ、この中に神の座があるの? 意外すぎる……!)


 半信半疑で洞穴を進むと、突き当たりに古びた小さな祠が安置されていた。首を傾げた瞬間、エリの体は抗いがたい力でその中へと吸い込まれていく。


 視界がひらけた先は、外見からは想像もつかない荘厳な神殿の広間だった。

「エリ、ここへ座りなさい」

 声をかけてきたのは、自分と瓜二つの姿をしたミリエルだ。促されるまま彼女の隣に腰を下ろすと、厳かな雰囲気の中で「会議」が始まった。


 ミリエルが立ち上がり、並み居る神々を見渡して告げる。

「この度は、私の眷属であったエリが女神としてこの会に参加することになりました。私共々、よろしくお願いいたします」


 紹介されたエリは、緊張のあまり心臓が跳ねた。隣のミリエルに小声で尋ねる。

「……私も、何か言わないといけませんか?」

「黙っていればいいわ」

 返ってきたのは、短く、拒絶に近いほど冷徹な返事だった。


「今日は女神エリの奇跡について、皆の意見を伺いたい」

 上座に座る、威厳に満ちた主神と思わしき男神が宣した。

(もしかして、私を断罪する場なの……!?)

 一瞬、恐怖で体が固まったが、ミリエルがそっと優しく手を握ってくれた。その温もりに、エリはわずかな安らぎを覚える。


 だが、会議の内容はエリの予想を斜め上に飛び越えていた。

 広間には、エリがこの世界に来てから起こした「奇跡」の数々が、鮮明な映像となって次々に映し出されていく。そして最後、あの火山噴火を鎮めた映像が流れると、参集していた神々の間に大きなどよめきが走った。


 主神が重々しく口を開く。

「これほどの奇跡をごく短期間に成し遂げた女神エリを、女神ミリシアの後継者として認めたい――女神ミリエルよりそう提案されている。異議のある神はいるか。沈黙をもって承認とする」


(ちょっと待って、後継者!? 私はそんなの聞いてない!)

 慌ててエリが異議を唱えようと口を開きかけたが、ミリエルが不可視の力で彼女の発言を封じ込めた。声が出ない。


「……異議なしと認める。では、女神エリは女神ミリシアの後継者として正式に承認された。本日はこれにて散会とする」


 主神の宣言とともに、神々が次々と姿を消していく。動けるようになった瞬間、エリはミリエルに向かって詰め寄った。


「ミリエル、ずるいわ! こんなの詐欺よ、私は認めない!」

「いくら騒いでも、もう決まったことよ」


 ミリエルはどこまでも涼やかな顔で、突き放すように言った。


「あなたには今日から、『戦争の神』としての使命が委ねられたの。逃げられはしないわよ」


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