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すべての爆弾の父、強制火山噴火

 村人たちの避難が始まった。彼らが目的地に着くまでの間、エリは火山の直上に陣取り、その「内側」を見通そうと意識を地下へと向けていた。


「地質調査用の機材があれば楽なんだけど……。さすがにマグマだまりまで正確にスキャンできるデバイスはこの世界にはないわね。結局、神力パワー頼みか」


 独り言ちていると、偵察から戻ったナイトホークが苦い顔で私の隣に降り立った。


「エリ殿。……悪い報告だ。我が仲間の竜族どもは、揃いも揃って頑固者でな。『火山の噴火ごときで我が一族が揺らぐはずがない』と、避難を拒絶しおった」


「……。竜族の頑丈さと生命力には敬意を払うけど、火砕流や火山ガスを舐めない方がいいわよ」


 私は溜息をついた。生物学的な強靭さと、惑星の物理エネルギーは次元が違う。


「構わん。あの頑固者どもは、実際に怖い目に遭わなければ道理を理解せぬのだろう」


 ナイトホークは突き放すように言ったが、その瞳には同胞への隠しきれない憂慮が浮かんでいた。私は視線を再び山体へと戻し、透視の深度を上げる。


「……見えたわ。地下約十キロメートル。流体反応あり……。間違いない、これがマグマだまりね」


「……エリ殿は、そんな地底深くまで見通せるのか?」


「ぼんやりとだけどね。高精度レーダーと重力計を脳内で合成レンダリングしてる感じかしら」


 それから一週間、私は地底の脈動を観察し続け、避難民の移動完了を待った。

 ナイトホークが時折竜化して空から様子を見てきてくれたが、避難所の報告を聞く限り、村人たちは意外と順応が早いようだった。召喚しておいた『野外炊具1号』で炊き出される温かい食事を囲み、OD色の天幕の下で規律正しく生活しているという。


「さて……。それじゃあ、火山噴火の『儀』を始めましょうか」


 私は恭しく、かつ凛とした動作で両手を高く掲げた。

 イメージするのは、かつてロシアが開発した、非核兵器として史上最大の破壊力を誇るサーモバリック爆弾。


「――『すべての爆弾の父(FOAB)』。マグマだまり中央へ座標指定により召喚」


 次の瞬間、足下の地底から、かつて経験したことのない衝撃と咆哮が突き抜けてきた。

 超高温・超高圧の熱圧力がマグマだまりの中で炸裂し、行き場を失ったエネルギーが火道を突き進む。火山の頂上付近を塞いでいた古い溶岩の「ラバ・ドーム」が、シャンパンのコルクのように空高く弾き飛ばされた。


 直後、山が吠えた。

 噴煙が数千メートルの高さまで噴き上がり、真っ赤な溶岩が火口から溢れ出す。


「わっ、……飛んできた」


 空から降ってくる巨大な火山弾。だが、私の周囲数メートルに展開した神力による結界は、それらを豆粒を弾くように虚空で粉砕していく。


 一方で、ナイトホークは必死だった。

 彼は竜の姿となり、空を舞いながら、逃げ遅れた頑固な同胞たちを背に乗せ、あるいは掴み、火砕流の届かない安全圏へと必死に運び出している。その美しい翼は降り注ぐ火山灰と熱風でボロボロになっていたが、彼は一度も弱音を吐かなかった。


(これでもう、地殻の圧力は臨界点を下回ったわね……)


 モニター越しに見るように冷静に分析する。

 急激な圧力解放デコンプレッションにより、大規模な山体崩壊の危険は去った。この分なら、数日中には噴火も沈静化し、安定期に入るだろう。


「ふう、……ミッション・コンプリート。やっぱり、全爆弾の父はいい仕事するわね」


 私は降り注ぐ火の雨の中、満足げに頷いた。

 あまりに危険なので奇跡を人々に見せられないのが残念だわ。カルミナが「これじゃ神殿や神の宣伝にならない」って怒りそうね。


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