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女神ミリエルを詰問

 王が去り、再び静寂を取り戻した神殿の私室。しかし、エリの心の中は嵐のように荒れ狂っていた。


「ミリエル。ちょっと、聞きたいことがあるんだけど」


 エリが低く、重い声で呼びかけると、脳内に緊張感のない声が響いた。


『なーに、エリ。聞きたいことって……なんか、ものすごく険悪な雰囲気なんですけど?』


「当たり前でしょ! 私が神になったなんて出鱈目を吹聴して回るから、こっちは大変な目に遭ってるのよ。王様まで平伏しちゃうなんて、どう責任取ってくれるのよ」


『エリ、往生際が悪いわね。神は神らしく、どっしり構えていればいいのよ』


「私は『神様詐欺』なんてしたくないの! 神でもない身で神を騙るなんて、立派な犯罪なんだから!」


 エリが語気を強めると、ミリエルは呆れたように鼻で笑った。


『まだそんなこと言ってるの? エリ、あなたの今は「現人神あらひとがみ」。その体が滅すれば、正真正銘の神として天に昇るのよ。……どう? 今すぐその身体、滅してみる?』


「冗談じゃないわよ。死んじゃうじゃない!」


 殺伐とした空気の中、不意に背後から低く鋭い声が割って入った。


「ミリエル。またエリをたぶらかしに来たのか」


「ナイトホーク……!」


 いつの間にか影から現れた守護者に、脳内のミリエルが露骨に嫌悪感を露わにする。


『げっ、トカゲの野郎。何しに来たのよ。神聖な神同士の対話に割り込まないでくれる?』


「何が神聖だ。性懲りもなく我が主、エリを人間から奪おうと画策しているだけではないか」


 一触即発の空気を遮るように、エリはナイトホークに縋るような視線を向けた。


「ナイトホーク、お願い。本当のことを教えて。私は……私は本当に、神様なの?」


 ナイトホークはしばし沈黙し、エリの瞳の奥をじっと見つめた。


「エリ。それは君次第なんだ。神力を自在に使いこなしている時点で、君が神に極めて近い存在であることは間違いない。だが……エリの魂は、まだ神であることを拒んでいる。拒んでいる間は、君は神ではない。だが、それを受け入れた瞬間、君は神になるだろう」


『だから! 私はエリがその気になりやすいように、周りの環境を整備してあげてるんじゃない!』


 ミリエルの開き直った言葉に、エリの堪忍袋の緒が切れた。


「噂を流すことが環境整備!? やめてよ……。いえ、止めなさい、ミリエル。これは命令よ!」


 その瞬間、空気が震えた。エリの言葉に、絶対的な強制力を持った黄金の波動が宿り、ミリエルの存在を押し出すように空間を支配した。


「……エリ。神託しんたくの使い方が板についてきたな」


「ナイトホークまで! そんなこと言わないでよ……!」


 エリは自分の言葉に宿った「力」の残滓に怯え、震える手で自分の肩を抱いた。否定すればするほど、彼女の振る舞いは「神」としての色を帯びていく。その皮肉な現実に、エリはただ眩暈を覚えるのだった。

 私はいつまで人の側でいられるのかしら。


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