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【第三章完結】ゲーマーはゲームのような異世界に転生して最高の人生を掴むようです  作者: 星海亘
第4章 飛び立つ鳩と紫の花

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第117話 ヨナの事情




 慈月ケセド(五月に相当)二十日。

 アルヒ王国西部にやってきた聖女の一団は、激しい大雨により、足止めを食らっていた。

 野営をしていたため、ずぶ濡れになって見張りをしていた者の一人が風邪を引いた。聖女の治癒によってすぐに治ったが。

 大雨が止んで、聖女の一団はまだ濁流で流れが激しい川の上に架かっている橋を渡ることになった。

 川の上流から何か、黒い影のようなものが見えた気がしたルクスはマップを開いた。

 それと同時に、流れの速い濁流から、身体を起こした魔物がいた。

 大蛇だ。

 丁度、橋を渡っていた聖女の馬車に、大蛇は突っ込んでいった。


「ヨナ!!」


 バートが飛翔して、馬車から投げ出されたヨナの元に向かうが、一歩遅く、ヨナは濁流に呑まれた。

 バートは自分の周りに水の球体のようなものを出して、躊躇いもなく川に突っ込んだ。

 そして、ルクスのように外部の魔素を操って、川の流れを操作し、自身の周囲の流れを速くして、ヨナの元に辿り着いた。

 ヨナを抱いたバートは、水の流れを操作して、自分たちを川辺に引き上げる。

 すぐに、バートはヨナの状態を確認する。

 ヨナは気絶したためか、水を飲んでいないようだ。

 ずぶ濡れなので早く服を乾かす必要があるだろう。

 生活魔法に乾燥があったことを思い出したバートは、ヨナの服と髪を乾燥させた。

 近くにある洞窟にヨナを運んだバート、ヨナの傍らに座って、彼女が目覚めるのを待った。

 十分ほどして、ヨナは目を覚ました。


「あ、目が覚めた?」

「……バート様。私、は」

「うんと、大蛇が馬車にぶつかってきて、ヨナ様は投げ出されて川に落ちたんだよね。それで、僕も川に入った」

「そんな危険なことを……私一人でも、大丈夫でしたのに」

「大丈夫じゃないよ!」


 ヨナの言葉に対して、バートは声を荒げた。びくり、と反応したヨナの肩を見て、バートは頭を抱えた。


「ごめん、声を荒げてしまって……。心配したんだ、君が死んでしまうのではないかって」

「……私は、神によって守られております。心配しなくても、大体のことは平気です」

「それでも、僕は心配なんだよ」


 バートは真剣な表情で、ヨナを見詰めた。


「バート様……」

「神のご加護だって、万能じゃないんだ。死ぬときは死んでしまうものなんだよ」


 バートは、トアル村で飢饉のときに死んでいった村人たちのことを思い出していた。

 実感の籠ったバートの言葉に、ヨナは反論することができず、口をつぐんだ。

 しばらく、沈黙が流れた。


「この前のことだけど」


 沈黙を破るようにバートが言葉を紡いだ。


「どうして、法国に戻るしか選択肢がない、って言ったの?」


 ヨナは悲し気な表情を浮かべた。


「長い話になりますが、大丈夫ですか?」

「え?うん」

「……私は法国の辺境、コットン村で産まれました」


 コットン村は綿花の産地で、村人は、綿花を育て、綿花で糸を紡ぎ、布を作るのを生業としていた。

 ヨナも幼い頃から、綿花から糸を紡いだり、布を作ったりして、村を支えていた。

 ヨナが五歳を迎えた春。

 法都から神託を受けたという神官たちが村にやってきた。

 神官たちは、村人一人一人のステータスを事実の石板で確認していった。

 そして、ヨナの番がやってきた。

 ヨナのジョブは聖女だった。神官たちは喜び、ヨナの両親に大金を見せて、ヨナを渡してくれたら、この大金は両親のものだと言った。


「私の両親は大金に目が眩んで、私を神官たちに売りました。姉は最後まで私のことを売らないでと両親に訴えてくれましたけど……」


 それから、ヨナは聖女として法都の神殿で修行することになった。聖句を暗記したり、聖書をそらんじられるように、読み込んだり。


「そして、私が聖女として、人々を癒し、名前が知られるようになったころ、ある人に声を掛けられました」


 ヨナが神殿の祈りの間にいたとき、声を掛けてきたのだ。


「ナダブ枢機卿。金欲の塊のような人です。ナダブ枢機卿は私の姉を人質として、私に命令するようになりました。両親が私にとっての人質にならないことを知っていたのでしょうね」


 それから、ヨナはナダブ枢機卿が金銭を得るために受けた治癒の依頼を遂行するようになった。

 昼は奉仕活動。夜はナダブ枢機卿の依頼を遂行するという、多忙な日々。


「何度も逃げたいと思いました。けど、姉の顔が過って、それもできません。どうすることもできないのです……」

「……ヨナ様のお姉さんの居場所が分かって、救い出せればいいんだよね?」

「え、えぇ」

「ルクスならできるかも……」

「無理ですよ」

「やってみないと分からないと思うよ。……そろそろ、助けが来る頃だし、洞窟の外に出ようか」


 立ち上がったバートはヨナに手を差し伸べた。

 ヨナはおずおずと、その手に自身の手を添えた。

 二人が洞窟の外に出ると、助けに来たのだろう、ルクスたちがやってきた。


「おーい!バート!」

「ルクス!」


 バートはヨナの手を引いて、ルクスたちのもとに歩いて向かった。


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