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悪魔の甘言、勇者の選択  作者: 千子


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別の未来

村が滅んだ僕は、隣の村へ避難したけれど、僕の村が滅んだことは知れ渡っていたので、あたたかく迎え入れてくれた。

そして、いつこの村も襲われるか分からないからより遠くへ逃げることにし、今度辿り着いたのは大きな街だった。

そうだ。ここで神の御言葉を聞いて僕は勇者になろうって改めて決めたんだ。

……。

神はなんて仰るんだろうか。

与えられた部屋で膝を抱えて考え込んでいると、御言葉が聞こえた。

「私は今度こそ最良の人類を作ります。そのためにはあなたの協力が必要だと考えました」

「どういうことですか、神よ」

「あなたに私のパートナーになってもらいたいのです」

僕はいかりを通り越して呆れた。

「生憎と、パートナーは手間の掛かる悪魔一人で間に合ってますので」

そう言うと、神は黙る。

またリセットされるかと思ったけれど、そんなことはなく、僕はそのまま朝を迎えた。

「……まったく、あの神様はなにを考えているのやら」

とりあえず、僕はまた幼少期から悪魔との再会まで迎えないといけないらしい。

僕は、記憶の幼少期をなぞっていった。

しかし、記憶はあるもので、すっかり神童扱いされてしまった。

そんなつもりじゃなかったんだけどなぁ。

手加減って難しい。

そして僕は魔王を倒すべく旅に出た。

長く険しい旅だった。

もう経験したくないと思いながらも何度もリセットされて経験している。

最短ルートで魔王を目指した。

何度も戦った魔王との決戦。

勝敗は分かりきっている。

これで世の中に必要とされなくなって絶望したら悪魔が僕に甘言を吐きにきてくれるはずだ。

また会って、あの指輪の熱を感じられる。

そう思うだけで胸が高鳴った。

なのに、今度はアズガンダルの王にならないかと推薦された。

僕は、人類に必要とされてしまった。

世の中にはまだ魔族も魔物も残っていて、王侯貴族から金で買われて甚振られている。

それを思うと僕が王になって記憶の貴族達を捌けばいいのかもしれない。

けれどそれだと悪魔に会えない。

魔族や魔物のみんなを取るか、悪魔との再会を取るか。

僕は、みんなと悪魔の天秤に掛けられてしまった。

……どうすべきか。

そもそも僕は絶望していない。

これが今度の神の干渉なのだろう。

悪魔というパートナーがいなければ、僕が神に従うと思ったのだろうか。

だとしたら浅はかだ。

僕は王になった。

勇者で、人間の王。

そして、魔族を根気よく説得して奴隷になっていた魔族や魔物も解放して、法を改正し、魔王にもなった。

一番なりたかった悪魔の半身にはなっている。

あとは出会うだけだ。

魔族との共存は反対が多かったけれど、これも言葉を尽くす。

なんとか納得はいかないまでも、了承を得られた時は嬉しかった。

一緒に喜んでほしかった悪魔は隣にいないけれど、きっとまた会える。

数十年経っても、僕はそう思っていた。

けれど、人間達は姿形が変わらない僕を異質だと囁き恐るようになった。

魔族もやはり一度王と認めた者を外見だけで疑う人間に愛想が尽きていた。

僕はまた二種族間で悩む日々を送った。

悪魔がいたらなんて言うだろうか。

……悪魔の半身という肩書きまで得たら、人間は完全に僕を見限るだろう。

そうしたら、悪魔は迎えにきてくれるだろうか。

考えても分からない。

悪魔はまだ来ない。

僕は、何者になればいいんだろうか。

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