遠い日々
それからどれほどの月日が流れただろう。
僕は悪魔を探し求めた。
その間にアズガンダルの王は何代か代わりかつて僕たちと対立した王も死んだ、あの子も老いてかつての魔王城に仲間と共に弔い、勇者も変わった。
新たな魔王が生まれては倒され世界に平和が訪れたかと思ったら神がリセットしたのか過去に戻る。
すべてが幻かと思う日々だった。
その間、僕は孤独だった。
勇者にも魔王にもなれない。
ただひたすら悪魔を探すだけの存在だ。
そんな僕に価値なんてあるんだろうか。
いや、価値ならある。
悪魔の半身としての僕。
神に奪わせたままじゃいられない。
悪魔は、子供の頃から契約するときまで僕を探していてくれた。
それを考えたら今度は僕が探す番だ。
待っててくれ、悪魔。
……。
悪魔がこの世界のように、記憶を無くしてすべてリセットされていたらどうしよう。
そんな思いに震える夜もあったし、そんな夜は眠れなかった。
僕は眠れないけれど。
「おやすみ、悪魔」
悪魔との契約の指輪をそっと撫でる。
この指輪だけが慰めだった。
まだ悪魔はいる。
この指輪が何よりの証明だった。
時折指輪が熱くなる気がして、それが僕を奮い立たせた。
悪魔はいる。
それが僕の救いだと信じて、世界を回った。
悪魔。
僕の半身。
どれほど月日が流れても、勇者になれなくても魔王になれなくても、悪魔の半身なのは譲れない。
……いや、ぼくは欲張りなのかもしれない。
だから人々も助け、魔族も助け、弱いものはすべて助けた。
僕の選択だ。
神に言われたからではない。
代わりに悪きものは人間も魔族も裁いた。
内外から「悪魔」と呼ばれることもあった。
滑稽で笑ってしまう。
悪魔を求めてやまない僕が、悪魔と呼ばれるなんて。
それでも、指輪の熱さが僕を正気にさせる。
悪魔との繋がりが、分かち合う熱が、僕を正気でいさせてくれる。
「……僕は、いつからこんなに弱くなったんだろうな」
不意に溢れた言葉ががらんどうの玉座に響く。
僕はまた勇者で魔王になった。
それは最初の時から段々とうまく立ち回れるようになり、魔王と勇者の両立も出来るようになっていく。
幼かったあの子は一人にならないように先手を打ってご両親を助けた。
それでも僕に憧れて僕を勇者様と慕ってくれる。
何度リセットされても、あの子は変わらなかった。
それが眩しかった。
僕はあの子にとってなんだろう。
守っているのか、依存しているのか。
世界を放浪して、疲れたら帰ってくる。
そんな僕に「おかえりなさい」「いってらっしゃい」を言ってくれる。
だから僕も「ただいま」「いってきます」を言える。
他の魔族のみんなも優しい。
そんなとき、神の御言葉が聞こえた。
「何故ですか」と。
それはこちらのセリフです、神よ。
人間と魔族が共にいたらいけないのでしょうか。
これこそが最良の人類なのではないでしょうか。
……人間が悪魔の半身ではいけないのでしょうか。
僕の問いに神は答えない。
あなたは何を守ろうとしているのですか。
代わりにリセットが起きるだけ。
淡々とした日々だった。
昨日抱きしめた存在が、今日は他人の目をしている。
悲しみに泣きたい夜には指輪を撫でた。
その儀式はずっと続いた。
でも、何度問い掛けてもリセットされても僕は諦めが悪く悪魔を探してしまう。
悪魔と呼ばれる僕が、悪魔を探している。
僕はそれがおかしくて時々笑ってしまう。
悪魔だけいてくれてればいいと思う夜もあった。
僕の半身。
早く会いたいよ。
僕は、神よりもお前を選ぶ。




