表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪魔の甘言、勇者の選択  作者: 千子


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
42/55

喪失

あの子だけじゃなくて魔族でも手強い子達相手に稽古した。

「これ以上強くなってどうするんですか?」

と、聞かれたので、僕は空を見上げて答えた。

「神に挑むんだ」

あの子だけはなんとなく察したようで、稽古が本気のものになった。

僕が稽古してきたからか、かなり強くなってきた。

「強くなったね」

「あなたのおかげです」

この子の仲間は魔族とアフタヌーンティーをしている。

これが最良の関係じゃなくてなんだというんだ。

神は何も分かっていない。

勇者のことも、人類のことも、魔族のことも、魔物のことも。

自分の創造物のなにもかも。

……神に言いたいことが出来た気がするな。

そうこうしている間に半月が経った。

悪魔が言った半月だ。

急く心を秘めながら悪魔の帰りを待つ。

早く神と対話したいと思う時に限って時間が遅く感じる。

「神よ、あなたの御言葉が聞こえなくなった理由だけでも教えていただけないでしょうか……」

「月に祈る前に本人に聞け」

振り向くと悪魔がそこにいた。

激しく疲れているようだった。

「悪魔!大丈夫か!?」

「なんとかな。でも、約束は守れたぜ」

「神と話が出来るのか!?」

「ああ」

すぐに行きたかったけれど、悪魔を休ませてやりたかった。

「それは明日でも大丈夫か?」

「俺の心配なんてするな。早く行くぞ。ずっと待っていたんだろう」

悪魔の気遣いに感謝して頷く。

「ああ。行こう。ありがとう。悪魔」

そうしてまた神殿に赴き、神の降臨を待った。

それはすぐに訪れた。

また神々しい光が辺りを包んだかと思うと、僕達の前に神がお姿を現した。

それは前に見た人型と違い、球体の姿をしていた。

「……神、お会い出来て光栄です」

「そちらの堕天使に礼を言いなさい」

「もう言いました」

そして一歩前へ出た。

「あなたは人類も何も信じていない。だから最良の人類はこれからも生まれない。あなたが認めないから」

「それの何が悪いのですか」

「最良は、信頼なしになり得ない。信じない神に、救いは作れない」

悪魔は黙ってそばにいてくれている。

「あなたが信じない限り、最良は生まれない。

でも、僕は信じます」

あの子も、あの子の仲間も、魔族も、出来れば反魔王派も仲良くしたい。

「人間も世界も私のもの。管理されるためにある」

神が断言すると、すかさず悪魔が反論する。

「違う。少なくとも、あいつは自分のものだ」

「そうです。みんなの心はみんなのもの。あなたは何も管理出来ていない」

神が黙った。

「ならばまたやり直せばいいだけです」

「え?」

「すべてを最初から。またあなた方に止められましたが、何度でもリセットすればいい。私にはその権能がある」

そして眩く光る神に思わず腰の剣を抜いた。

それからはどちらが先かの勝負だった。

一心で切り落としたものは、ごとりと音を立てて地面に転がった。

リセットを阻止できたんだろうか?

「悪魔……」

悪魔に尋ねようとして、悪魔がいないことに気が付いた。

「悪魔?悪魔!!」

どれだけ呼んでも悪魔から返答はなかった。

間に合わなかったのか?

悪魔と出会う前までリセットされたのか?

いや、それ以前にか?

僕は途方に暮れて、そういえば神殿が綺麗になって元の建物になっていることに気が付いた。

やがてノイズのような音が聞こえたと思ったら、あの子が殺した神殿の人間が生きてその場にいた。

どこまで巻き戻ったかは分からないが、僕は、悪魔と出会う前の世界に戻されていた。

悪魔と離れた恐怖で慌てて指輪を見ると、そこにはあの悪魔の瞳の色をした指輪が鎮座していた。

僕は、悪魔と出会う前の世界に立っていた。

「悪魔……」

神殿であることも忘れて悪魔を呼ぶ。

ぎょっとした表情で僕をそばにいた人が見てくる。

それは、悪魔を呼んだからか頬を伝う涙を見たからなのかは分からなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ