快晴時々怒声
人間の勇者一行……あの子達はそれから何度も赴いては僕に戦いを挑んでくるので、そのどれも返り討ちにして時々ご飯やおやつを持たせて帰らせた。
「またねー」
手を振って送り返すと、頭を下げられる。
「まるで修行に来ているみたいだな」
「それはそれで楽しそうだね」
「現に楽しんでいるじゃねぇか」
「まぁね」
そう言って、持たせた晩ごはんの残りを食べる。
本当は一緒に食べたかったけれど、毎回頑なに拒まれてしまう。
まあ、人類の敵と人類の希望の勇者が一緒の食卓でご飯を食べていたら世間体が悪いか。
それに、この家も全員で入るとなると手狭になる。
増築しようかなぁ。
コテージを作って各人数、一人一部屋を与えて泊まれるようにするとか?
……いや、一緒に食事をするより悪いな。
「どうしたらいいと思う?悪魔」
「放って置け」
そう言ってオムライスを一口食べる。
「勇者同士、分かり合えると思ったんだけどなぁ」
僕も一口食べる。
うん。美味しい。やっぱり、自分のところで育てている鶏の卵って新鮮だからだろうか。
僕の料理の腕が上がったんだろうか。
「向こうに理解する気がないんだから無理だろ」
「……そんな冷たいことを言うなよ」
「慰めなんかいらねぇだろ」
しょんぼりしていると、悪魔に皿を出された。
「おかわり」
「はいはい。しょうがないなぁ」
最近の悪魔はよく食べる。
悪魔にも成長期ってあるんだろうか。
そんなことを考えて、そういえば悪魔は悪魔で魔術の稽古をしていたことを思い出した。
僕は魔術はあんまり得意ではないけれど、それでも悪魔が魔術を使う度に指輪が熱くなるのでお腹が空くんだろうか?
「まだか」
「はーい」
特盛に盛って、ふんわりと卵を乗せる。
うーん。我ながら美味しそうだ。
「はい、悪魔」
「おう」
そこはありがとうって言えよ。
とは思っても、何度言っても直らないから諦めた。
けれど、あの子達はいつになったら諦めてくれるんだろうか。
僕の理想とあの子達の理想は同じだと思うのに。
みんな。
魔族も人間も、仲良く暮らしてほしい。
誰かが誰かの犠牲になってほしくない。
もう悲しむ人も魔族もいてほしくない。
難しいことだとは思うけれど、僕を殺すために人間と魔族が手を組んだことはあった。
目的が何であれ、手を組むことは可能なはずだ。
「よし!とりあえず城を再建しよう!」
「なんでそこで城の再建になるんだよ」
「僕は何事も形から入るタイプなんだ」
「それで魔王城再建ってか?難儀だな」
それでも決めたからにはやるしかない。
オムライスをぱくりと食べて、決意する。
明日からは城造りだ!
……とは言ったものの、僕は城を作った経験なんてない。
道具もない。
どうしたものか。
「まあ、寝てから考えよう」
「お前って存外楽天的だな」
そうは言われても今はなんの考えも浮かばないから仕方がない。
オムライスを食べ終えた僕は、同じく食べ終えた悪魔の皿を台所に持って行き食器を洗うと、早々にお風呂に入って寝入った。
明日こそ好転しますように。
もう何度目かのお祈りをして、ベッドですやすやと寝息を立てる。
悪魔は本気で呆れたように、肩を竦めて寝ている僕を見ていた。
翌日。
外に出ると城ができていた。
何を言っているんだと思われるかもしれないけど、僕もなんで建っているのかわからない。
立派な城だった。
「えっ、なんで……」
「建てておいてやったぞ」
そう言って悪魔が欠伸をしながら家から出てきた。
「悪魔、お前……」
「なんだ、感激で声も出ないか」
「お前!こういうことが出来るなら最初から言え!」
僕の怒声に驚いたあの子達が、突如現れた城に再度驚くまであと数分。
悪魔は飄々と場内を案内して得意気だ。
僕が褒めると思うなよ。
「お前が書いた設計図通りだろ」
「なんで僕が書いた設計図を知っているんだ!?」
「大切なものは、鍵付きの机に閉まっても意味なんてないぜ」
指をくるくる回しながら悪魔が言う。
とりあえず、もう一度怒鳴り、悪魔に謝らせるまで僕は怒りで震えていた。
あの子も珍しく僕に勝負を挑まなかった。
新しい城が出来た日は、快晴時々怒声だった。




