第16話「六人、そろう」
蒼鷹と玄墨は、炊煙をたどって、山を登ってきた。
小屋の前まで来て、この四人を、見た。
蒼鷹が、足を止める。
ひと目、ながめて――
一、二、三、四。
二本の指で、宙を、とん、と点いた。
その動作に、みなが、いっせいに、こちらを見た。
蒼鷹。「……」
自分でも、なぜその動作をしたのか、わからない。
玄墨が、わきへ歩いてきて、この場所を、ひととおり見た。
隅に、古ぼけた冊子が、何冊か。
手に取って、めくり、また置き、また取り上げる。
ブルース。「何してんだ?」
玄墨。「好奇心だ」
蒼鷹。「それ、誰の本だ?」
曜吾郎は、手を止めずに。
「小屋に、もとからあった。誰のかは、知らない」
玄墨は、めくりつづける。
咳払いを、ひとつ。
何も、言わない。
六人が、こうして、同じ場所に、はじめて、全員、そろった。
「やっと集まれたな」と、誰も、言わなかった。
曜吾郎は、人数を、ざっと見て。
うつむいて、できたての餅を、いくつか、多めに、手に取った。
ひとりごとのように、言う。
「ここの景色がいいから、来たんだろう」
「この山には、いい場所が、たくさんある。歩いてみるといい」
ブルースが、まっさきに。
「いいな」
智也が、続く。
「そうそう、谷のほうに行こう。俺、準備してくる」
言うが早いか、もう、駆け出していた。
*
智也が言うには、数日前、湯のさらに上に、谷を見つけたらしい。
そこにも、湯が湧いている。
食材を運んで、野営しよう――そう、持ちかけた。
六人は、たがいに、顔を見合わせた。
行かない、と言う者は、いなかった。
この世界への好奇のほうが、恐れより、ずっと大きかった。
支度するものが、思いのほか、多い。
曜吾郎が、ふもとの農家で、馬車を借りてくる、と言った。
曜吾郎が出ていったあと。
残った五人で、食材を、荷造りしはじめた。
半分ほど詰めたころ。
ブルースが、その山を見て、智也を見た。
「お前、どれだけ持ってきた?」
智也。「食う分」
ブルース。「へへへ! こりゃ二十人前だぞ」
智也は、少し考えて。
「念のため」
蒼鷹が、こめかみを、押さえた。
玄墨は、黙って、運びはじめた。
瑛子は、そのわきにしゃがんで、食材の山の、光と影を、見ていた。
曜吾郎が、馬車を駆って、戻ってくる。
五人が立っていて、そのわきに、食材の小山が、できている。
三秒、黙った。
「……どれだけ、運んだんだ」
ブルース。「たいしたことない。これだけだ」
智也。「ちょうど、食う分」
曜吾郎は、その山を見て、馬車を見た。
「載るのか?」
蒼鷹。「たぶん、いける」
玄墨。「理論上は」
瑛子が、片目を閉じて、その山に、ずっと、框を合わせている。
「……載る」
みなが、瑛子を見た。
瑛子。「光の角度は、計算した」
三秒、沈黙。
曜吾郎。「……わかった。積もう、積もう」
――第十七話〈そりゃそうだ〉へ――




