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神剣のプロトコル ~底辺まで落ちた元S級最強剣士の俺が、錬金術師少女に『武器の臨床評価』とかやらされ、結果的に世界を救うまで~  作者: 深井立花 数白
第3章:転移術師の犯罪学

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第20話:Process4[悪しき原因]Flow6

 リガルがライヒアルトと対峙しているまさに同時刻、ファシエとメイを除くエニア達はマーサの家へ向かっていた。


 連絡を受けたスコットはすぐさま内通者を抑えて、緊急命令を発令、マーサの家の周囲の包囲を開始した。


 そして、マーサの家に到着したエニア達。


「じゃあ、いきますよ。皆さん……!」

 エニアの表情の中には、マーサを許さないという怒りと、リガルが不在であることへの緊張が垣間見える。


「よーし! やっちゃうかー!」

 プリシラはいつも通り何も考えていない。


「ファシエさんを傷つけた報い……その身にキザんでやる……フフ、クククク……」

 クードの雰囲気は、むしろ犯罪者側のそれになっている。そして、


「く、くーど……殺しちゃダメだからね、分かってるよね……」

 ヒスイは犯罪者より、クードの方にビビっている。


 そして、エニアはマーサの家の玄関ベルを鳴らす。ひとつだけ、『仕込み』をしてから。


「はいはい、どちら様でしょうかねえ~」


 立ち入り調査をした時と同じように返事があり、ドタドタという足音がする。

 そして開いたドアから見える、マーサの顔。その表情は相変わらず人の良さそうなものだ。


 マーサには、以前の立ち入りで顔を合わせていたエニアがあいさつする。


「こんにちは、マーサさん。ヒューレ錬金術工房のエニアです。先日の立ち入り調査ぶりですね。突然の訪問、失礼します」

「おや、本当だ。あのときのお嬢ちゃんじゃないかい。どうしたんだい、そんなにおっかない顔して」

「実は、折り入ってお話があります。人に聞かれると……そうですね、あなたが不利になるかもしれません。中に入れていただけますか?」

「あたしが不利って……なんだかわからないけど、立ちっぱなしで話をするものなんだからねえ。まあ、中へお入りよ」

「では、失礼します」


 そして、マーサの家のリビングに通されるエニア達。そのまま机に着くように促される。


「ちょっと待っててくださいねえ。今お茶の用意をさせますんで」


 そしてマーサはキッチンの方に向けて、


「アンタたち、お客さんだよ! 『あのハーブティー』をお出ししな!」

「は、はい! 少々お待ちください!」


 それを待ちながら、エニアは今日マーサの家を訪ねた理由を話し出す。シュラーの残した魔道具を解析したこと。その魔道具を作った男を特定したこと。そして、マーサがその商人から魔道具を大量に買ったことまで調べがついていることを話した。


 そしてハーブティーが運ばれてくる。マーサはそれに口を付けながら、


「そんなこと言われてもねえ……買ったのが本当にあたしだって証明できんのかい?」

「それは、今日現物を押さえればいい話です」

「そんなもん、いったいどこにあるって……」


 その会話の途中、出されたハーブティーを飲もうとしたプリシラの手をクードがつかんで止めた。


「プリシラちゃん、飲んじゃだめだ。毒が入ってるよ」

「ええ、マジで!?」


 驚いたプリシラがカップを落とし、ハーブティーがあたりにこぼれる。

それを見たマーサは、フッと笑った。


「惜しかったねえ。一人だけでも減らせれば楽だと思ったけど……こういうことに慣れてそうだねえ、そっちの兄さんは」

「まあ、それなりにね……試してみますか?」


 クードは早くも【魔双剣サーヴァ】を抜いている。

 マーサはなおも余裕のある態度を崩さない。


「クク、その前に、これを見てくれるかい……アンタたち!」


 そうしてマーサは地下室へ続く通路に呼びかける。


 ……しかし、呼びかけた割には返事がない。


「どうしたアンタたち!? 早くガキどもを人質に……」


 とマーサが言いかけた時だ。


「「ぎゃあぁあああああっ!!」」


 使用人夫婦が地下室への通路から吹き飛んできた。

 マーサは夫婦、いや夫婦の振りをしていたであろう二人に怒鳴る。


「い、一体何してんだい! 早くガキどもを……」


 対して、吹き飛んできた男は、


「だ、だれか居やがるんだよ、地下室に! 見えないヤツが! そいつが邪魔をして――」


 しかし、男の言葉は続かなかった。

 その顔面に『何か』がぶち当たり、再び吹き飛ばされたからだ。


「な……!」


 マーサは驚き、地下通路の方を見やる。

 そこにいるのは、槍と大盾を構えつつ、異能【拒絶の盾】で通路をふさぐヒスイ。


 ヒスイの姿を見たマーサは、驚きを隠せない。


「あ、アンタ、誰だい!? いつの間に地下室に……!」

「透明化の魔術を掛けていたんですよ。加えてヒスイさんは猫の獣人です。足音を立てずに移動するのはお手の物です」


 そう。実はヒスイは、マーサの家を訪れる前からアホ毛様による幻覚魔術を掛けられており、姿が見えなかったのだ。


 その目的は、地下室にいるだろう誘拐された子供たちの安全を確保すること。


 マーサは子供たちを人質に逃げるつもりだったのだろう、服の下に隠し持っていたショートソードを取り出し、


「そこを退きな!!」


 とヒスイに襲い掛かる。が、ヒスイがマーサに槍の先端を向けた瞬間、


「ぐうッ!!」


 マーサの体に見えない『何か』がぶつかり、吹き飛んだ。

 それを見たヒスイはぽつりとつぶやく。


「やっぱりこれ、いい武器……」


 ヒスイの手にあるのは、エニアがヒスイ専用に作った槍、【妖猫槍ケット・シー】。エニアの専用武器【誘導魔弾砲エーテルチェイサー】の技術を転用し、不可視の魔力の弾丸を、無音で射出する機構を組み込んだ槍であった。


 本来は、目立ちたくない自分でも動かずに、しかもバレずに敵を攻撃する手段としてエニアに注文したものだった。


 一方、体制を立て直したマーサは、


「結界を張りな!!」


 と大声で何者かに指示を飛ばしながら広間の方へ逃げる。使用人の振りをしていた男と女もそれにつづく。


 すると、エニアの【観測機(ヴァリィ)】に強力な魔道具の反応が映った。同時にプリシラも叫ぶ。


「みんな! この家、結界で覆われてる!」

「なるほど……騎士団の介入を邪魔しつつ、私たちの誰かを人質にして逃げるつもりでしょうね」


 それを聞いたクードは提案する。


「じゃあ、エニアちゃんは騎士団と通信を試みてみて! ヒスイちゃんはここで子供たちとエニアちゃんの守りを! マーサたちは僕とプリシラちゃんで制圧する!」

それを聞いたエニアはちょっと不満そうだった。

「むむむ……私も戦いたいですが……仕方ないです。騎士団と通信できるの、私だけですし……クードさん、プリシラさん、私の分まで、あいつらをぶっ飛ばしちゃってください!」

「ああ!」

「まーかせて!」


 そしてクードとプリシラは、マーサ一味が待ち構えているであろう屋敷の広間に飛び込んだ。

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