第17話:Process4[悪しき原因]Flow3
エニア達が模倣犯の手がかりを探して魔道具の解析をしている間、俺はいつも通りシリウスモードで騎士団の捜査に協力していた。
ライヒアルトがバールーフの渡した転移魔道具を使って消えたことは話してある。なので魔術捜査班は、冒険者ギルドを通してバールーフの転移魔道具を借り、何か分析する方法はないか模索している。
それ以外の騎士は、基本的に見つかっていない子供を探している。魔道具で昏睡させられていた子供の反応はヒューレ店長の分析結果では見つからなかったので、本格的にしらみつぶしだ。
そして、スコットおよび信頼のおける数名で、騎士団内部に本当に内通者がいないか探っている。
俺は基本的に子供たちを探す方に参加している。もしかすると、ライヒアルトやシュラーと対峙する可能性があるからだ。
しかし、やはり子供たちは見つからず、バールーフの魔道具の方にも何も進展はなかった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
その日の夜、エニア達が闇魔道具の調査をしている間、俺はバールーフを呼び出していた。
先日の問いについて、俺なりの答えを告げたいというと、バールーフは興味を示していた。
そして先日とは逆に、噴水広場のベンチで待っていると、いつの間にかバールーフが近づいてきていた。
俺にさえ気配が分からない移動方法だ。敵にしたくない男だ。
そしてベンチから立ち上がった俺に話しかける。
「すまない、貴公。少し待たせてしまっただろうか?」
「まあ、少しだけですけどね。あなたが時間に遅れるとは、珍しいですね。知恵の輪にでも夢中になってましたか?」
俺がちょっとからかってみると、バールーフは意外そうな顔をした。
「んん? 貴公、なぜ分かったのだ?」
「マジっすか」
「うむ、マジっす、だ。ところで貴公、鎧を着ていないときは、私に丁寧語を使うのか?」
痛いところを突いてくるバールーフ。
「うっ……そこは、まあ、年上ですし……なんというか、真面目に話さなきゃいけないオーラがあるといいますか……とにかく、そんなもんだと思ってくださいよ」
顎に手をやり、俺の言葉を興味深げに聞いていたバールーフ。とりあえず「そんなもん」なのは分かってくれたらしい。
「それでは貴公、罪を裁くことに関して、考えを聞かせてくれるだろうか」
「ええ、そのつもりです」
「ではまず、貴公はシュラーを捕まえてどうするつもりなのだ?」
俺は緊張していることを自覚し、呼吸を整えながら話す。
「この国の法によって裁きます」
「ほう」
バールーフは意外そうな、それでいて予想通りなような表情で俺の答えに反応した。
「でも、シュラーがなぜ犯行に至ったかは徹底的に調べなければいけないと思います。それは、シリウスの名前で世界に訴えかけて知らしめ、強引に処刑するようなことはさせないつもりです」
「そんなにうまくいくと考えているのか?」
「そのときは、あなたもなんか言ってやってください」
俺がぶしつけにそういうと、なぜかバールーフは納得するように頷いた。
「確かに、私が脅迫すれば、各国は従わざるを得ないだろう」
「すげえこと言いますね」
「事実だ」
「確かに」
そしてバールーフは俺に尋ねる。
「シュラー・エウケイロスは外的要因によって罪を犯したと考えるか?」
「それもあると思いますが、そこに至るまでにシュラーの内的要因がまったくないわけじゃないと思います。ただ、今回のケースは外的要因が圧倒的に大きい。シュラーの環境を考えると、そう思いますね」
バールーフは、ふむ、と考える素振りを見せる。
「シュラー・エウケイロス以外の犯罪者に対しても、同様の手順をもって裁くべきと考えるか?」
「ええ、外的要因がどれくらいのものだったかを考えてから裁くべきです」
「それが今の世界に可能だと思っているか?」
「思っています。今すぐは反対の声もあるでしょうが、始めなければ変わりませんからね」
「それも真理かもしれんな……」
バールーフは、ある程度俺の考えに納得してくれているみたいだ。
ここで、俺は懸念している部分を伝えた。
「でも、誰が、どれだけ外的要因によって動かされていたのか、なんて評価するのは難しい方法だと思います。どうやって考えればいいのか、なんてわからない……」
「うむ、確かにそれは難しい命題だ」
「まあ、答えになってなくて悪いんですが、ただ、犯罪者を裁くことには、なぜ犯罪者が犯罪を行うに至ったかを考えるのに必要なことだと思うんですよ」
「ほう」
俺の答えは、少々バールーフにとって意外なものだったらしい。生温い風が広場を吹き抜ける中、また顎に手を当てて俺の話に耳を傾けていた。
「それをちゃんとみんなで考えないと、ウチのファシエみたいに、関係ないはずの人が恨みの矛先を向けられたりします。だから、どんな事情があろうが、罪を犯したら裁きの場に出さなければいけない。俺は、そう思います」
ちょっと拙い説明だったかなとは思うが、俺の考えはバールーフに伝わったらしい。なにかに納得するように頷いていた。そして、
「貴公、非常に興味深い答えだった。それを聞くことができたことは有益だ」
「はあ、有益っすか」
「そうだ。礼を言う、貴公」
「ど、どうも……」
そして、なんでお礼を言われたか分からない俺を残して、バールーフは去っていった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
そして工房に戻った俺。もう夜遅かったが、ファシエとメイの様子を見るつもりだった。エニア達が戻ってきているかもわからないし。
工房に入ると、控室でファシエがメイを寝かしつけた直後らしく、安らかに寝息をメイと、それを微笑んでみているファシエの姿があった。
「ファシエ、お疲れ様。気分はどうだ?」
俺が尋ねると、ファシエはにっこりと笑いかけてくれる。
「はい、もう大丈夫です。皆さんやメイちゃんのおかげですね」
「はは、俺にできたことはあまりないけどな」
「そんなことないですよ。きっと……」
そして、ファシエは顔を赤くして、なんだかもじもじし始めた。イヤな予感がする。
「り、リガルには悪いことをしてしまっただけでなく、恩まで作ってしまいました。もはやこれは、『りょーじょく』まっしぐらの……」
「だからそんなことしません!」
「やだ、リガル、はずかしいです……寝ているメイちゃんのすぐ横でなんて、そんな……途中でメイちゃんが起きたら、私、私は………………ぽっ」
「ファシエさ~ん、話聞いて~。『ぽっ』、じゃないから、『ぽっ』、じゃ」
なんてバカな話をしていると、突然【SABER】専用通信魔道具に着信があった。
俺はその画面を見て凍り付いた。
「リガル殿……折り入って、お願いがあります」
相手が、全身を黒い甲冑で覆った人物――
行方不明の【罪引き】ライヒアルトだったからだ。
少しでも面白いと思っていただけたなら、
下にある「ブックマークに追加」をクリックしていただけたり、
「☆☆☆☆☆」を「★★★★★」にしていただけると励みになります。
よろしくお願いします。




