第16話:Process4[悪しき原因]Flow2
ファシエが自身の心中を吐露した翌日、リガルが騎士団との捜査をしている時だ。
スコットから借りていた闇魔道具の解析がやっと終了し、エニア達はその周囲に群がった。
「エニアちゃん、なにか分かりそうかい?」
「はい。この魔道具の魔力回路部分の内部解析ができました」
「ま、まりょくかいろぶぶんのないぶかいせき……????」
エニアの説明はプリシラには早かったらしい。その肩をヒスイがぽんぽんと叩く。
「ぷりしら、どんまい……わからないなら、しょうがない……」
そして昨日、自分の辛い話を聞いてもらってから張り切っているファシエが、エニアに聞く。
「それで何かが分かったのですか?」
「はい。この結果と闇魔道具商のデータを照合すれば、どの人物がこの闇魔道具を作ったか判別できます。しかも、騎士団はすべての闇魔道具商の居場所を特定していますからね」
「では、シュラーのほかにその魔道具を買った人物がいれば……」
「模倣犯の容疑者が絞り込めるね!」
「そういうことです!」
とんとん拍子に会話をすすめるエニア、クード、ファシエ。
その後ろでプリシラは、会話の内容が全くわからず呆然としていた。
その肩をまたヒスイがぽんぽんと叩く。
「ぷりしら、どんまい……」
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
その日の夜、商業区画の裏路地を深く進んだ先。
そこには闇魔道具商のひとりが店を開いているという情報がある。違法性が低いとされ、摘発する優先順位もまた低いとされていた人物だ。
そこへ、サングラスをかけた少女たちと青年の姿がある。
エニア達である。ファシエは体調を考慮し、店で待機している。
「……ね、ねえエニアちゃん」
「はい、なんでしょう?」
「本当にサングラス必要あったのかい?」
一行の中で最もサングラスの似合わない少女、エニアはそれでも主張する。
「当然じゃないですか! 相手はこのシデロの闇商人のひとり、なめられたら終わりです!」
「でもさー、エニちゃん。暗いところでこのメガネかけてると何にも見えないんだけど」
めずらしく、プリシラがもっともなことを言う。
「ええ~、でも、ヒスイさんは平気そうじゃないですか」
「わたし、夜目使えるから……」
「よ、夜目ですか? ナイトアイですか? か、かっこいい……ずるいです!」
そうして一人以外あまり周りが見えていない集団は、闇魔道具商の店の前まで来た。
エニアはためらわず扉を開き、ずんずんと勇ましく進んでいく。
店主の男は、エニア達を見てニヤニヤと笑っている。
「なんだい嬢ちゃんたち。来る場所間違えてねえかい? ここにはミルクもおしゃぶりもないぜえ?」
店主は明らかに小柄なエニアをバカにしている。
「な! 私はそんなんじゃないです! 私たちは、その……そうです! 秘密騎士団です!」
「え、そうだったの……もがもが……」
エニアのアホな発言に反応したプリシラだったが、とっさにクードに口をふさがれた。
しかし店主は、当然と言っては当然だが、大笑いして言った。
「だあっはっはっは!! そうかい、その『こども秘密騎士団』が俺になんの用だい?」
しかしエニアが件の闇魔道具をとりだすと、一瞬にして店主の表情が険しくなった。
「この魔道具、作ったのはあなたですね? 巧妙にごまかしてますが、あなたが作った他の魔道具と、魔力回路の構造に同じ癖があります」
「へえ……あんた、同業かい?」
「一緒にしないでください。私は正義の錬金術師にして、秘密騎士団のリーダーです」
「へへ、そうかい。で? それがウチの製品だったらなんか問題あんのかい?」
「帳簿はありますか? 最近、この魔道具を複数買った人がいるはずです。すべて教えてください。さもないと……」
エニアは目つきを鋭くして(というつもりで)店主を睨みつける。
店主は、へっ、と鼻で笑い、一度奥へ引っ込み、帳簿を持ってくる。
それを受け取り、最近の日付からさかのぼって読んでいくエニア達。しかし……
「シュラーの名前がないね……」
「はい、おかしいですね。じゃあシュラーさんはどうやって……いや、もう一度確認しましょう」
そうして再び帳簿をめくっていくと、あるページでヒスイの目がある人物の名前を捕えた。
「みんな、見て! この名前……」
ヒスイの指さす先、そこにあったのは――
「こ、この人って、確か……」
マーサ・カリス。シュラーの姉だった。
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