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神剣のプロトコル ~底辺まで落ちた元S級最強剣士の俺が、錬金術師少女に『武器の臨床評価』とかやらされ、結果的に世界を救うまで~  作者: 深井立花 数白
第3章:転移術師の犯罪学

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第11話:Critical Process[児童連続誘拐犯シュラーVS【神剣】シリウス]

 シュラーの長剣が月の光を反射した。


 それを追いかけるように、俺へ殺到するシュラーの刃。

 俺はバスタードソードでその攻撃線を封じつつ、剣同士がぶつかる衝撃で自分の方の攻撃線を変え、その流れでシュラーの左足を狙う。


 が、トンっと軽く跳躍し、シュラーはそれを躱した。そのまま俺の頭上を越え、背中側へ。俺が振り向く間もなく首筋を狙って一閃するが、さすがにそれくらいの攻撃を喰らう俺ではない。


 身体を捻り、低い姿勢でシュラーの長剣をくぐり、相手の着地を狙って斬り上げる。

 シュラーは身を丸めて着地のタイミングをずらしつつ、俺のバスタードソードの振りに合わせて長剣の根元で受け流した。そしてその場で素早く後転し、着地し、バックステップ。すこし長めに距離を取った。


 まだお互いの手の内を探っているくらいだと言える。

 しかし、シュラーが逃げる前の斬り合いのときから、俺は違和感を感じていた。


 空虚さだ。


 シュラーの剣は技術的に達人と言っていいレベルにある。さすがはシデロの騎士団に武術を指南していただけはある。


 だが、その剣には何の意思も宿っていない。まるで、他人に操られた人形と戦っているようだ。


 【棄却】が発現していない今は余裕がある。俺はシュラーに話しかけた。


「シュラー。あんた、何のつもりで子供たちをこんなところに連れ去った? 子供たちに何をした?」


 しかし、


「ああ、テッド……お父さんは悪い狼さんには負けないよ……だから安心して待っていておくれ……」

「シュラー!! メイのためにも、もう止めろ!!」

「ああ、テッド、テッド……」


 どうやら俺の声は全く届いていないらしい。一発どついてやらなきゃいけないみたいだ。


 そして俺は一気に彼我の距離を詰め、上段からシュラーの長剣を狙う。

 シュラーの剣が相当な業物なのはわかっている。エニアのバスタードソードをもう何合か受けてるからな。並みの剣なら俺にサックリいかれてるだろう。


 しかし、武器破壊で無力化できるなら、それに越したことはない。シュラーを必要以上に傷つけなくてすむ。


 だが当然シュラーの方は、あくまで自分の邪魔をする俺を排除したいようだ。俺が武器破壊を狙っていることに感づいたのだろう、必要最小限の衝撃で済むように受け流している。そして俺のバスタードソードと正面からぶつからない攻撃線を選んで攻めてくる。やはり強い。


「メイ……悪い、親父さんにちょっと痛い思いさせちまうかも」


 そこで俺はバスタードソードをわざと受け流しやすいような軌道で振るい、シュラーの長剣の上を俺のバスタードソードが滑っている一瞬の間に、左腕の収納錬装具からエニアのロングソードを取り出した。

 そして右手のロングソードと左手のバスタードソードで挟み込むようにシュラーの長剣に斬撃を加えた。


 結果、2方向から力を加えられたシュラーの長剣は真っ二つに折れた。

 すかさず、体制を崩したシュラーの足首を軽く斬る。軽くでいい。武器を破壊できた以上、逃げられなくすればいいだけだ。


 しかし、おぼつかない足取りでシュラーは逃げようとする。


「ああ……テッド、すまない。この狼さんを倒すには、準備がいる……待っていてくれ……必ず、私は戻ってきて、お前に……」


 なんて呟きながら、教会の入り口から逃げようとする。

 俺はシュラーを捕縛しようと、収納錬装具から縄と借りていた手錠を取り出し、掛けようとした。


 教会の入り口から外に出たシュラーを追いかけ、俺も外にでる。

 俺はそこで妙な人物を見た。


 やたら大柄な、全身を黒いフードとローブ、ついでに包帯で隠した人物がシュラーに魔術かなにかを掛けている。


 すると、シュラーはたちまちその場から消えてしまった。

 しかも、その黒フードの横に暗い穴が出現し、そいつはそこへ入っていこうとする。


「待て!!」


 俺は一瞬で間を詰め、事象干渉力を纏わせたロングソードで暗い穴を斬る。黒フードの人物も危険を感じたのか、暗い穴から飛びのいた。

 そのまま暗い穴を両断する俺。


「おいお前、誰だ!? シュラーに何をした!?」

「………………」


 問い詰めるも、黒フードは何も答えない。

 しかもそいつは収納錬装具でも使っているかのように、虚空からハルバードを取り出し構えた。


「……答えないのなら、拘束させてもらう。多少痛いが、我慢しろ」

「………………」


 そして俺は黒フードに斬りかかる。

 俺のロングソードの先端をハルバードで受ける黒フード。そしてロングソードの根元の方まで滑らせながら巻き取り、俺の左に弾こうとしてくる。


 俺は跳躍し、倒立した姿勢になることで巻き取りを解除、そしてハルバードの内側へロングソードをくぐらせ、黒フードの右腕を狙う。


 黒フードは右に姿勢を傾けてこれを回避。すぐさま突きを放ってくる。普通ならこの場面でアウトだろう。


 しかし、今の俺はある程度身体能力を取り戻している。

 なにができるかというと、事象干渉力を込めた足で空中を蹴り、駆けたり跳躍したりできる。


 それに加え、ロングソードを振る反動を利用し急降下する俺。突きは回避した。

 そして突き出されたハルバードをくぐり、相手が重心を乗せている右足を狙う。


 しかし、確実に相手の足を捕えたはずの俺の剣は届かなかった。

 黒フードの足元に魔法陣が出現し、見えない力でロングソードの軌道を変えられたからだ。


「――ッ!」


 攻撃が失敗に終わり、一旦距離を取る俺。そして構えなおす黒フード。

 魔法陣がでたということは魔術だ。見えない力を操る魔術。風の塊をぶつけられたようではないが、そうとも思えるような勢いだった。


 だが、それが何の魔術なのかは次の瞬間に分かった。

 俺の後ろに魔力の流れを感じた瞬間、地面が隆起して岩の壁を作った。しかもそこには別の魔法陣。


 そして俺の体は魔法陣に吸い寄せられ、宙に浮き、岩壁に叩きつけられる。

 地属性の魔術。それも重力をコントロールできるまで高等な地魔術だ。やるな。だが、プリシラほどの出力じゃない。


 黒フードはその隙を逃さず俺に向かって急接近、紫色に光る魔力を纏ったハルバードを突き出してきた。

 俺は岩壁の魔法陣に拘束されながらもロングソードでそれを迎え撃つ。


 なんとか弾いたが、重い! 多分、ハルバードが纏う紫の光も凝縮された重力だ。こんなもので貫かれたら最後、体内で重力が爆ぜて即死するだろう。


 そしてその隙に背中の岩壁を斬り潰し、俺に攻撃を弾かれて姿勢を崩した黒フードのローブを斜めに断ち切った。


 俺の斬撃によろめく黒フード。

 しかし、俺は追撃を放てなかった。


 俺は、驚いていた。


 その黒フードの中身が、S.Ⅸ(セイバー・ナイン)、【罪引き】ライヒアルト・エルゴーだったからだ。


「なっ……!? お前なんで……」


 しかし俺が問いかける時間も与えず、ライヒアルトは再び暗い穴を作り出し、その中に消えていった。

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