第11話:Critical Process[児童連続誘拐犯シュラーVS【神剣】シリウス]
シュラーの長剣が月の光を反射した。
それを追いかけるように、俺へ殺到するシュラーの刃。
俺はバスタードソードでその攻撃線を封じつつ、剣同士がぶつかる衝撃で自分の方の攻撃線を変え、その流れでシュラーの左足を狙う。
が、トンっと軽く跳躍し、シュラーはそれを躱した。そのまま俺の頭上を越え、背中側へ。俺が振り向く間もなく首筋を狙って一閃するが、さすがにそれくらいの攻撃を喰らう俺ではない。
身体を捻り、低い姿勢でシュラーの長剣をくぐり、相手の着地を狙って斬り上げる。
シュラーは身を丸めて着地のタイミングをずらしつつ、俺のバスタードソードの振りに合わせて長剣の根元で受け流した。そしてその場で素早く後転し、着地し、バックステップ。すこし長めに距離を取った。
まだお互いの手の内を探っているくらいだと言える。
しかし、シュラーが逃げる前の斬り合いのときから、俺は違和感を感じていた。
空虚さだ。
シュラーの剣は技術的に達人と言っていいレベルにある。さすがはシデロの騎士団に武術を指南していただけはある。
だが、その剣には何の意思も宿っていない。まるで、他人に操られた人形と戦っているようだ。
【棄却】が発現していない今は余裕がある。俺はシュラーに話しかけた。
「シュラー。あんた、何のつもりで子供たちをこんなところに連れ去った? 子供たちに何をした?」
しかし、
「ああ、テッド……お父さんは悪い狼さんには負けないよ……だから安心して待っていておくれ……」
「シュラー!! メイのためにも、もう止めろ!!」
「ああ、テッド、テッド……」
どうやら俺の声は全く届いていないらしい。一発どついてやらなきゃいけないみたいだ。
そして俺は一気に彼我の距離を詰め、上段からシュラーの長剣を狙う。
シュラーの剣が相当な業物なのはわかっている。エニアのバスタードソードをもう何合か受けてるからな。並みの剣なら俺にサックリいかれてるだろう。
しかし、武器破壊で無力化できるなら、それに越したことはない。シュラーを必要以上に傷つけなくてすむ。
だが当然シュラーの方は、あくまで自分の邪魔をする俺を排除したいようだ。俺が武器破壊を狙っていることに感づいたのだろう、必要最小限の衝撃で済むように受け流している。そして俺のバスタードソードと正面からぶつからない攻撃線を選んで攻めてくる。やはり強い。
「メイ……悪い、親父さんにちょっと痛い思いさせちまうかも」
そこで俺はバスタードソードをわざと受け流しやすいような軌道で振るい、シュラーの長剣の上を俺のバスタードソードが滑っている一瞬の間に、左腕の収納錬装具からエニアのロングソードを取り出した。
そして右手のロングソードと左手のバスタードソードで挟み込むようにシュラーの長剣に斬撃を加えた。
結果、2方向から力を加えられたシュラーの長剣は真っ二つに折れた。
すかさず、体制を崩したシュラーの足首を軽く斬る。軽くでいい。武器を破壊できた以上、逃げられなくすればいいだけだ。
しかし、おぼつかない足取りでシュラーは逃げようとする。
「ああ……テッド、すまない。この狼さんを倒すには、準備がいる……待っていてくれ……必ず、私は戻ってきて、お前に……」
なんて呟きながら、教会の入り口から逃げようとする。
俺はシュラーを捕縛しようと、収納錬装具から縄と借りていた手錠を取り出し、掛けようとした。
教会の入り口から外に出たシュラーを追いかけ、俺も外にでる。
俺はそこで妙な人物を見た。
やたら大柄な、全身を黒いフードとローブ、ついでに包帯で隠した人物がシュラーに魔術かなにかを掛けている。
すると、シュラーはたちまちその場から消えてしまった。
しかも、その黒フードの横に暗い穴が出現し、そいつはそこへ入っていこうとする。
「待て!!」
俺は一瞬で間を詰め、事象干渉力を纏わせたロングソードで暗い穴を斬る。黒フードの人物も危険を感じたのか、暗い穴から飛びのいた。
そのまま暗い穴を両断する俺。
「おいお前、誰だ!? シュラーに何をした!?」
「………………」
問い詰めるも、黒フードは何も答えない。
しかもそいつは収納錬装具でも使っているかのように、虚空からハルバードを取り出し構えた。
「……答えないのなら、拘束させてもらう。多少痛いが、我慢しろ」
「………………」
そして俺は黒フードに斬りかかる。
俺のロングソードの先端をハルバードで受ける黒フード。そしてロングソードの根元の方まで滑らせながら巻き取り、俺の左に弾こうとしてくる。
俺は跳躍し、倒立した姿勢になることで巻き取りを解除、そしてハルバードの内側へロングソードをくぐらせ、黒フードの右腕を狙う。
黒フードは右に姿勢を傾けてこれを回避。すぐさま突きを放ってくる。普通ならこの場面でアウトだろう。
しかし、今の俺はある程度身体能力を取り戻している。
なにができるかというと、事象干渉力を込めた足で空中を蹴り、駆けたり跳躍したりできる。
それに加え、ロングソードを振る反動を利用し急降下する俺。突きは回避した。
そして突き出されたハルバードをくぐり、相手が重心を乗せている右足を狙う。
しかし、確実に相手の足を捕えたはずの俺の剣は届かなかった。
黒フードの足元に魔法陣が出現し、見えない力でロングソードの軌道を変えられたからだ。
「――ッ!」
攻撃が失敗に終わり、一旦距離を取る俺。そして構えなおす黒フード。
魔法陣がでたということは魔術だ。見えない力を操る魔術。風の塊をぶつけられたようではないが、そうとも思えるような勢いだった。
だが、それが何の魔術なのかは次の瞬間に分かった。
俺の後ろに魔力の流れを感じた瞬間、地面が隆起して岩の壁を作った。しかもそこには別の魔法陣。
そして俺の体は魔法陣に吸い寄せられ、宙に浮き、岩壁に叩きつけられる。
地属性の魔術。それも重力をコントロールできるまで高等な地魔術だ。やるな。だが、プリシラほどの出力じゃない。
黒フードはその隙を逃さず俺に向かって急接近、紫色に光る魔力を纏ったハルバードを突き出してきた。
俺は岩壁の魔法陣に拘束されながらもロングソードでそれを迎え撃つ。
なんとか弾いたが、重い! 多分、ハルバードが纏う紫の光も凝縮された重力だ。こんなもので貫かれたら最後、体内で重力が爆ぜて即死するだろう。
そしてその隙に背中の岩壁を斬り潰し、俺に攻撃を弾かれて姿勢を崩した黒フードのローブを斜めに断ち切った。
俺の斬撃によろめく黒フード。
しかし、俺は追撃を放てなかった。
俺は、驚いていた。
その黒フードの中身が、S.Ⅸ、【罪引き】ライヒアルト・エルゴーだったからだ。
「なっ……!? お前なんで……」
しかし俺が問いかける時間も与えず、ライヒアルトは再び暗い穴を作り出し、その中に消えていった。
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