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神剣のプロトコル ~底辺まで落ちた元S級最強剣士の俺が、錬金術師少女に『武器の臨床評価』とかやらされ、結果的に世界を救うまで~  作者: 深井立花 数白
第3章:転移術師の犯罪学

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第9話:Process2[久しき銀狼]Flow3

 翌日、俺は騎士団と別行動を取り、冒険者ギルドで情報収集をすることにした。

 昨日もそうだったが、俺を遠巻きにみる人の多いこと多いこと。まあ、2年振りだからなあ。俺がシリウスの姿で人前に出るの。


 そして冒険者ギルドの玄関を開けたときはスゴかったよ。俺が姿を現した瞬間に、冒険者も職員もみんな硬直してた。特に、ケンカ中だったらしい冒険者が、バツが悪そうに拳を引っ込めて机に着いたのには笑いそうになっちまった。


 とにかく、冒険者ギルドが何か情報をつかんでいないか聞きたい。俺は受付に話しかけた。以前、エニアの依頼で呼び出されたときに対応してもらった、新人の受付だ。あの時は陰で「チッ、E級かよ」とか言ってたヤツだ。


「失礼。汝、すこしいいだろうか?」

「はい! もちろんでございます。シリウス様……!」


 そういって受付はうっとりした顔つきで俺の対応をしてくれる。『リガル・フェイル』のときと同一人物か疑わしいくらいだ。


「エレオス殿下誘拐の件で、ゲオルグ支部長と話がしたい。取り次いでいただけるか?」

「いくらでも取り次ぎますわ! 少々お待ちくださいませ!」


 そうして奥へ向かっていく受付の女性。その途中で、


「はあ…やっぱり【神剣(じんけん)】はオーラが違うわ……。リガルとかいうE級なんて、シリウス様と比べたら腐った魚のようね……」


 腐った魚で悪かったなコノヤロー。あと、D級に昇格してるっつーの。


 しかし速攻で取り次いでくれたらしく、俺は久しぶりに支部長・ゲオルグの部屋を訪れた。


 その部屋で書類だらけのデカい机に着き、仕事をしている筋骨隆々のヒゲ男。俺を見てニヤリと笑い、姿勢を起こした。


「はは、久しぶりだな……『シリウス・カリバー』。武器屋の嬢ちゃんの仕事はどうだった?」

「む……その件は……汝の世話になった。ゲオルグ支部長」

「んん? しゃべり方はそのまんまなのか?」


 意外そうな支部長。


「この格好でいるときはな」

「そっか、まあ世間体もあるもんなあ。で? 話はエレオス殿下たちの誘拐事件についてだったな」

「そうだ。冒険者の間で広まっている噂でもなんでもいい。気づいたこと、変わったことはないだろうか?」


 しかし、支部長は首を横に振る。


「いやあ、それが特にねえな。有益な情報があったら騎士団に連絡しようと思ってるんだが、何もつかめねえ」

「そう簡単にはいかないか……」

「そうだな。誘拐された子供の中には冒険者の子供もいてよお。そいつが『誘拐犯見つけてぶっ殺してやる!』とか物騒なこと言って、仲間と一緒にかけずりまわってる……なんてこともしてるみてえだが、いまのところ成果は出てねえらしいな」

「そうか……それではしかたない。支部長、仕事の邪魔をして悪――」


 俺が「悪かった」と言いかけた時だ。

 俺と支部長の視線は一瞬である一点に吸い寄せられた。

 音も気配も何もなく、突然人が室内に現れたからだ。


 しかし、俺と支部長はすぐに事態に合点し、警戒をといた。というのも――


「貴公ら。すまないが、私にも話を聞かせてはくれまいか?」


 現れたのがS.Ⅰ(セイバー・ワン)、【安全装置(セイフティ)】バールーフだったからだ。


 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


「バールーフ……なんというか、めずらしいな……。王族が混ざっているとはいえ、10人にも満たない被害人数の事件に……あんたが首を突っ込むなんて」


 支部長は俺ほど『世界最強の存在』の威圧感に慣れていないらしい。いくぶんか緊張した様子で話しかけた。反対にバールーフは、だれにでもそうするようにあっさりと答える。


「この事件の容疑者に興味があるのだ。なんでも周囲からの非難の声に耐えられず、精神を病んで犯行に及んだと聞いている。王家からの要請にも、事件の収束にも興味はないが、犯人の方は興味深い」

「汝……王家の要請を無視しているのか……」


 ちょっとあきれた俺。しかしバールーフはどこふく風といった様子で、全く悪びれた様子はない。しかも、俺をじろじろと見て、


「ふむ……訂正する。シリウス・カリバー、貴公も興味深い」


 その言葉にちょっと支部長が笑った。

 うっせーなコノヤロー共が。シバくぞ。


 そしてマイペース方面でも世界最強なのか、バールーフはずけずけと聞いてくる。


「それで、捜査状況はどうなっているのだ?」

「汝、王家の要請を蹴っておいてそれか……」

「それでも、私が捜査状況を聞くことは事態が好転する方向に働く」

「うおお……すげえセリフ」


 支部長も引いてんじゃねえか。


「し、仕方ない……では説明する。現在のところ、我々は……」


 そして俺はバールーフに説明した。


 騎士団が住居の立ち入り調査をしていること。

 ヒューレ店長の大型魔道具を使用し、誘拐の特徴に該当する場所を絞り込んだこと。

 しかしそれでもシュラーも殿下たちも見つからないこと。

 など、知っていることすべて。


 それを聞いたバールーフはこう言った。


「ヒューレ・プラーグマでも直接は探知できないか……では囮捜査をしてはどうだ?」

「囮捜査?」


 俺は『ある存在』を知っているせいで、「そんな手もあるな」くらいにしか思わなかったが、支部長の方は猛反対した。


「おい待てバールーフ! アンタまさか、子供を囮に使えってんじゃねえだろうな!?」


 支部長の意見はもっともだ。囮役のこどもが危険すぎる。しかしバールーフは落ち着き払って言う。


「いや、そうではない。幻覚魔術を使う」

「な、なんだ。そういうことかよ……」


 そう。幻覚魔術で子供に見せかけてシュラーをおびき出せばいい。それでも、考えなくてはならないことはある。


「囮捜査といっても、どこで行う? 汝はシュラーが出てくるまで、街の端から端まで囮を歩かせるつもりか?」


 俺の疑問にも、バールーフは首を振った。


「いや、そうではない。特定の場所に絞れると考えている。シリウス・カリバー、貴公、被害にあった子供たちはどこの家の子供か覚えているか?」

「ああ、覚えている」


 そして俺は被害者がどんな家の子供か、列挙した。


 パン屋の家の長女。

 大工の家の長男。

 医師の家の次女。

 冒険者の三女。

 騎士の家の三男。

 そしてエレオス殿下。


 それを聞いた支部長は、こんな感想を述べた。


「なんか……特徴がねえな……ただ無作為に誘拐しているだけじゃねえのか?」


 しかしバールーフは言う。


「貴公は無作為に王家の子息を誘拐しようと狙うのか?」

「まあ、確かに……」


 そしてバールーフは俺に再度問う。


「シリウス・カリバー、先ほど、シュラー・エウケイロスの手記には『息子のために友達を天国へ連れていく』と書いてあったと言ったな?」

「ああ、そうだ」

「では、こうは考えられないだろうか? 『シュラー・エウケイロスは息子が楽しく暮らせるように、天国に快適な街を作ろうとしている』と」

「おいおい、マジかよ……」


 支部長は半ば呆れている。俺も同感だ。すげえ発想だな。


「では汝は、ここにいない職業、例えば農家や商人の子供が狙われる可能性が高いというのか?」

「私なら商人でなく服職人の方が可能性が高いと考える。シュラー・エウケイロスは、息子の世話を十分にできていなかったことを悔いていたのだろう? ならば天国の息子に対しても、衣食住、そして医療の心配はするはずだ」


 しかし、支部長はまだ難しそうな顔をしている。


「だがよバールーフ。場所を絞ったとしても、いるかどうかわからないシュラーに幻覚を見せるってことは、辺り一帯の全ての人に幻覚魔術を掛けるってことだろ? そんな高等な魔術使えるやついるか? 他の【SABER(セイバー)】の協力得るくらいしか思い浮かばねえぞ、俺は」


 それでもバールーフは余裕の態度を崩さない。


「それについては心当たりがある。貴公もそうなのだろう? シリウス・カリバー」

「ああ、汝の言う通りだ」


 高度な幻覚魔術をつかえる存在。

 ウチの武器屋にいる、『アイツ』だ。

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