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神剣のプロトコル ~底辺まで落ちた元S級最強剣士の俺が、錬金術師少女に『武器の臨床評価』とかやらされ、結果的に世界を救うまで~  作者: 深井立花 数白
第3章:転移術師の犯罪学

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第8話:Process2[久しき銀狼]Flow2

 翌日、俺とスコットの隊はマーサの屋敷を訪れていた。最も怪しい立ち入り先なので、特別に【観測機(ヴァリィ)】を持つエニアも同行している。


「エニア。汝の【ヴァリィ】とやらには、今も確かに地下室と、そこにいる複数の人物が映っているのだな?」

「はい、そうです。リ……シリウス様」


 なるほど、それならやっぱり怪しそうだな。俺の隣でスコットも険しい顔をしている。ここにエレオス殿下が囚われているかもしれないのだ。


「では、行きましょう。シリウス様、エニア殿」


 そしてスコットはマーサの家の玄関ベルを鳴らす。


「はいはい、どちら様でしょうかねえ~」


 メイの万引きを見逃したときにも聞いた声が、部屋の中から聞こえてくる。そしてドタドタという足音。

 やがて玄関のドアが開き、マーサの人の良さそうな顔が見える。


「おや、騎士団の方でしたか。なんの御用でしょう?」

「失礼、私はスコット。ただ今、エレオス殿下の捜索のため、市民の皆様の住居への立ち入り調査にご協力いただいているところです」


 マーサは「立ち入り調査」の言葉を聞いても微動だにしなかった。事件に全く関係ないか、もしくは肝が据わっているのか。しかも、立ち入りを許可するどころか、


「おやおや、殿下の捜索ですか。お疲れ様です。あたしも殿下がご無事なことを祈っておりますよ。そのためにウチの調査が必要なら、よろこんで協力いたしますとも」


 なんて言っている。しかし騎士に交じって俺の姿を見たときはさすがに驚いたらしい。


「あらまあ、これは、まさかシリウス様? ここしばらく活動をしてらっしゃらないとお聞きしてましたけどねえ」

「うむ。実は2年ほど、事情があって汝らの前に姿を出せなかったのだ。しかし今はエレオス殿下の危機だということで、騎士団からの依頼を受け、協力している」

「そ、そうだったんですねえ、それはそれは、お疲れ様でございます。では騎士様、シリウス様、中へどうぞ……」


 なんだろう。俺に対しては若干緊張している感じがある。


 そしてマーサの家に入る俺たち。見た感じはきれいに片付いているが、食器や椅子などの数が多い。まだマーサ一人しか会っていないが、6人家族くらいの物の量がある。


 俺と同じことが気になったのだろう、スコットが尋ねた。


「失礼ながら、マーサ様にご家族は……?」

「夫には先立たれましてねえ。子供もいないので、私と使用人しかおりませんよ」

「使用人は何人ですか?」

「4人ですよ」


 4人? 主人ひとりに対して? なんかおかしいが、スコットに任せよう。


「なぜそんなに多いのですか?」

「使用人の子供も住まわせているんですよ。もともとは遠い親戚だったんですけどねえ。借金のカタに家を取られて、かわいそうなんでウチに使用人として住まわせてやってるんですよ」

「その方たちは、今どちらに?」

「ちょうど私室にいますねえ」


 スコットとマーサが話している間に、俺はマーサを観察して気づいた。


 コイツ、武術の心得がある。しかも相当強い。シデロで一番の騎士を無力化して、エレオス殿下を誘拐することも可能に思えるほどだ。しかし、襲われた騎士本人も「シュラーの動きだ」と言っていた。シュラーが最有力の実行犯であることは変わらない。


 しかし、先ほどの肝の据わった態度もあるし、なにか気になる。

 俺がそう考えていた時に、スコットの部下が戻ってきた。


「小隊長、やはり地下室がありました」

「そうか、ご苦労。……マーサ殿、この屋敷には地下室があるようですが、そこを見せてもらっても?」


 しかし、やはりマーサには慌てるそぶりもない。


「ええ、構いませんよ。ただ、使用人たちの私室になっているので、ちょっとごちゃごちゃしてますがねえ」

「分かりました」


 そして俺たちは地下室に案内され、中にいた使用人家族にいったん出てもらい、足を踏み入れたが……。


「ふむ、やはり普通の部屋ですね」

「少しお見苦しいですけどねえ……」


 スコットとマーサの言う通り、その部屋には見た感じ変わったところはなかった。普段暮らしている部屋をじろじろ見られて、使用人たちは居心地が悪そうだった。


「マ、マーサさん……なぜ私たちの部屋を……」

「ぐだぐだ言うんじゃないよ! 殿下の捜索のためなんだよ!」

「も、申し訳ありません……」


 なんて会話をしている。

 しかし、俺は気づいた。

 この使用人たちも、全員戦闘の心得がある。親の服にしがみついている子供の方までだ。なんだこの家……?


 あと、そうだ。確認しておこう。俺は傍らのエニアに耳打ちする。


(エニア、隠し部屋とかないか?)

(すでに調べましたけど、ありません。ただ、気になることが……)

(どうした?)

(ここにある服や毛布、どれも新しいです。全然繊維が消耗していません。最近買ったものばかりだと思います)

(……? どういうことだ?)


 俺はマーサに聞いてみることにした


「マーサ、汝が彼らを使用人として雇ったのはいつのことだ?」

「え? ええ、シリウス様。大体3年前ですねえ」

「ふむ、分かった。礼をいう」

「……?」


 しかし、それ以上怪しいところは全く見つからず、不信感を抱えたまま俺たちはマーサの家を後にした。


 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


 その日、何件もの住宅や建造物の立ち入り調査をしたが、結局シュラーにつながる手がかりは見つからなかった。


 やっぱり一番怪しいのはマーサの家だ。マーサの「遠い親戚を使用人として住まわせているのは3年前」という証言と、エニアの「服と毛布などが全然消耗していない」というのが引っかかる。しかし、エレオス殿下や他の子供たちはいなかったしな……。


 なんて考えていた時だ。【SABER(セイバー)】専用通信端末に着信があった。予想通り、ライヒアルトだ。


「よお、ライヒアルト、何か用?」

「はい、シリウス殿がエレオス殿下の捜索任務を受領したと聞きまして。自分が手伝えることはありますか?」


 マメなやつだなー。自分だって担当地域の任務で忙しいだろうに。


「いや、まだ捜査段階だから大丈夫だ」

「相手は手練れと聞いておりますが」

「大丈夫だ。それに、俺が何とかしてやりたいんだ」

「と、おっしゃいますと?」

「その犯人、いや一応、最有力容疑者だったな。そのシュラーってヤツはもう完全に精神がおかしくなっているみたいなんだが、その娘が先日の、薬を万引きしようとした子なんだよ。俺が、万引きについて詳しく追及していれば、王族の誘拐なんてことは防げたかもしれないんだ」


 俺がそういうと、なんだかライヒアルトは考え込んだ様子だった。


「そうですか……リガル殿も……原因のひとつに……」

「ん、どした?」

「あ、いえ、なんでもありません。ちなみに、シュラーは息子の病死について周囲から責められ、それで精神がおかしくなったとクエスト詳細には書いてありますが、確かですか?」


 ずいぶん細かくチェックしてるな。この事件に興味あるのか? まあいいけど。


「確かだ。それが書かれた日記を見つけたのがおれなんだよ」

「そうだったのですか……」

「だから、俺がメイのためにもなんとかしてやりたくてさ。だから、いったん任せてくれ」

「そういうことでしたら、承知いたしました。ご武運を」


 その日の会話は、それで終わった。俺は明日以降も続くであろう立ち入り検査への同行に備えて、休むことにした。


 しかし、ヒューレ店長の調査結果があり、騎士団の懸命の捜査にもかかわらず、なんの手がかりもみつからず、そのまま3日が過ぎた。

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