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神剣のプロトコル ~底辺まで落ちた元S級最強剣士の俺が、錬金術師少女に『武器の臨床評価』とかやらされ、結果的に世界を救うまで~  作者: 深井立花 数白
第3章:転移術師の犯罪学

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第6話:Process1[導かれた少女]Flow6

 メイの父親、シュラーの手記。

 そこには、シュラーが児童連続誘拐事件の犯人であるとうかがい知れる内容が書かれていた。


「メイ、お前、お父さんが何してたか分かってたんだな……」


 メイはもう言葉も出せないらしく、こくりとうなずいただけだった。

 そしてバカな俺はやっと思い至った。メイが万引きしようとした薬、あれは精神疾患を治す薬だったはずだ。


「お父さんを治すために薬を手にいれようとしたのか……」


俺がそう口にすると、とうとうメイの口から嗚咽が漏れだした。


「お父さん、なんだかおかしくなっちゃって……でもメイ、どうしたらいいか分からなくて……マーサ伯母さんは怖いし、騎士団の人に言ったら、きっとお父さん捕まっちゃうから……だからお薬があればと思ったんだけど……もうお家にはお金なくて……」


 俺はメイに目線を合わせ、頭を撫でてやった。


「そうか。お前は頑張ってたんだな。辛かったな……」

「リガルお兄ちゃん……お父さん、悪いことしてるんだよね……」

「多分な……」

「止めないと、辛かったり、怖い思いをする人が増えるんだよね……」

「ああ、そうだ」


 そしてメイの目からまたひとつ、涙がこぼれた。


「お兄ちゃん。騎士団に、お父さんのこと、話す……一緒にいてほしいの……ついてきてくれる?」

「もちろん。お前は強いな、えらいな……」


 そして俺たちは手をつなぎ、騎士団の本部へ向けて歩き出した。


 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


 そして到着した騎士団本部。俺は【神剣】時代から知っている、信用できる騎士・スコットに来てもらった。『シリウス・カリバー』の正体が『リガル・フェイル』だと知っている数少ない騎士だ。彼に俺とメイの話を聞いてもらった。 


 やはりスコットも、シュラーの手記に目を通し、彼が児童連続誘拐事件の犯人だと感じたらしい。苦々しい顔をしていた。


「くっ……まさかシュラー殿が……ご子息を失ってから消沈して退職されたと聞いていたが……」


 そしてスコットはメイに向かって姿勢をただし、敬意を払うように礼を述べた。


「お嬢ちゃん、ありがとう。よく勇気を振り絞って話してくれたね。お父さんは私たちが必ず止めて見せる」

「うん……おねがい……」


 メイ、頑張ったな。あとは俺たちの役目だ。


「スコット、この案件、冒険者ギルドに協力依頼は出そうか?」

「出るだろうね。悔しいが、シデロの騎士団にシュラー殿を止められる腕を持つものはいない……」

「そうか……分かった」

「……もう、大丈夫なのか?」


 俺がその協力依頼を受けることを察したのだろう、心配してくれるスコット。こいつは俺がヘタレていた時期を知ってるからな。


「ああ、シュラーがどんな奴だろうが任せとけ。そのための【隋変一心流】だ」

「フッ、頼もしいな……では、君を指名して依頼を出しておくぞ? 明日にでも知らせが冒険者ギルドに届くだろう」

「了解だ」


 スコットの要請を受けることを決めた俺だが、メイはただならない空気を感じ取ったのだろう。俺を心配そうに見上げてきた。


「リガルお兄ちゃん、もしかして、お父さんと……」

「そうだ。俺に任せとけ。こう見えても俺、超強いんだぜ?」


 メイは俺と父親が戦うところを想像したのだろう、うつむいてしまったが、すぐ顔を上げて言った。


「うん。お父さんをお願い、リガルお兄ちゃん。メイ、いい子で待ってるから……」

「ああ、ちゃんとお父さんを止めてやるよ」


 そして俺とメイは工房に帰ることにした。


 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


 工房に帰ると、メイは控室のベッドに横になり、すぐに寝息を立てていた。


「やっぱり疲れていたんでしょうね……」


 メイの毛布を直してやりながら言うエニア。もうみんなには、今日あったことは話している。

 そして俺は、今ちょっと後悔するような気分を抱えていた。それがエニアにも分かったのだろう、


「リガルさん……大丈夫ですか?」


 なんて心配させてしまった。


「すまん。メイが万引きをしたときのこと考えててさ……」

「万引きしたとき、ですか?」

「ああ、あの時、俺がうやむやにしないで、ちゃんと騎士団に調べてもらっていれば……と思ってさ。そうすればシュラーのことも早く分かって、エレオス殿下の誘拐もなくて、メイが今ほど傷つくことはなかったんじゃないか……ってな」


 俺の懺悔にも似た話を聞き、エニアは悲し気な顔で慰めてくれた。


「でもそれは、可能性の話ですし。第一、シュラーさんの犯行はリガルさんには何の責任もないことじゃないですか……」

「それでも、俺が児童連続誘拐の事態を悪化させたんじゃないかって気がしてならないんだ。俺がメイの罪にちゃんと向き合っていれば……」

「リガルさん……」

「悪い、心配させたな。でも大丈夫だ。騎士団からのクエストを受領して、とっととシュラーを取っ捕まえてやるぜ」


 俺がそういうと、エニアのテンションはたちどころに上がった。


「え!? もしかして、S.Ⅱ、【神剣】シリウス・カリバー、復活ですか!?」

「ちがうちがう、あくまで『リガル・フェイル』に宛てたクエスト指名だって」

「ええ~、なんでですか!」

「この歳で『シリウス・カリバー』は恥ずかしいんだよ!」

「なんでですか! すっごくかっこいいのに! あ、そうです、聞いてください! 私が『持ち主の意志を読み取って動く鎧』を開発し、冒険者になった暁には名乗ろうとしているものを考えたんです! その名も、【月影の……」


 エニアが自分の妄想を言いかけている。イヤだ。聞きたくない。聞いてるこっちが恥ずかしい。脳が汚染されてしまう。

 俺は耳を手でふさいだ。


「あ~、あ~、聞こえません聞こえません」

「な~ん~で~で~す~か~! 聞いてくださいよ~、最強にかっこいいんですから!」


 そのあとも、俺は寝ているメイの前で、エニアの『私の考えた最強の冒険者の名前』とかなんとかを延々と聞かされるハメになった。


 もしかすると、エニアなりの励ましだったのか……? いや、違うな。エニアのヤツ、目が『きらーん!』ってなってたし。


 まあでも、そんなくだらない会話のおかげで、俺はまた思いつめなくても済んだのは確かだ。明日から騎士団に協力して、シュラーをなんとしても見つけよう。


 だが、このときの俺にはひとつだけ誤算があったことを、後になって知ることになる。


 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


 翌日、俺は冒険者ギルドに向かい、俺宛ての『誘拐犯捜査および確保依頼』を受けるつもりでいた。

 しかし、まさに家を出るとき、俺の【SABER】専用通信魔道具に、ギルドからの連絡が届いた音が鳴った。何かと思ったら、


『重要クエスト受領命令』

命令者:ゲンデハウザー・サウザンドマッシブ

対象者:シリウス・カリバー

クエスト内容:シデロの街における児童連続誘拐事件の最有力容疑者、シュラー・エウケイロスの捕縛


「……あれ?」


 なんでシリウス・カリバー名義なんだ? ゲンさんに確認すると、


「うん。確かに、サルティヴ王国騎士団・シデロ駐留部隊から、シリウス・カリバー宛ての協力要請だよ」

「お、俺、本名名義の方で受けたつもりだったんすけど……」

「それがねー、私も詳しい事情まで把握していないんだけど、シュラーには、エレオス殿下の誘拐容疑までかかってるらしいんだよね。だから捕縛の重要性が跳ね上がったみたいだよ」

「マジすか」


 え、じゃあ俺、『シリウス・カリバー』として騎士団に合流しなくちゃいけないの?

 ……【神剣】シリウス、マジで復活させなきゃいけないの?


 やべえ! 鎧、どこ置いたっけ? 錆びてないといいけど……!


 そんな感じで、復活したS.Ⅱ【神剣】シリウス・カリバーのお披露目は唐突に決まった。

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