↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神剣のプロトコル ~底辺まで落ちた元S級最強剣士の俺が、錬金術師少女に『武器の臨床評価』とかやらされ、結果的に世界を救うまで~  作者: 深井立花 数白
第3章:転移術師の犯罪学

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

77/102

第5話:Process1[導かれた少女]Flow5

 翌日、なんだか温かいものがわき腹に当たっているのを感じ、俺は目を覚ました。


 ……俺の隣、布団が不自然に盛り上がっている。

 布団をめくってみる。


「すー……すー……ん……リガルお兄ちゃん…………」


 メイがすやすや眠っていた。何してんだコイツ。夜中に潜り込んできたのか?


「おい、メ……」


 起こしかけて、やめた。安心してゆっくり眠れているなら、それでいい。孤児院での活動が活きたな。

 そう考えて俺がめくった布団をメイにかけたやろうとしたときだ。なんだかどこかで誰かがドタバタしている。そして、


「リガルさん! 大変です!」


 エニアが慌てた様子で控室に飛び込んできた。


「後にしてくれ。俺は今比類のない神々しいような瞬間を迎えつつあってだな……」

「同じボケを何回も繰り返すのはよくありません! 読者は常に新しい刺激をさがして……」


 そしてエニアの目線が、俺の隣で眠っているメイに向けられる。

 エニアの顔がどんどん赤くなっていく。


「リ、リガルさん、まさか……」

「誤解だ。まさかもカシューナッツもない。多分メイが夜中に潜り込んできて……」


 しかしエニアは俺の話を全然聞いていない。それどころか【誘導魔弾砲エーテルチェイサー】を取り出し、


「せ、せくはらですーーーー!!!! てんちゅーですーーーー!!!!」


 俺に向かって容赦なくぶっ放した。


 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


「ねえ、リーくん。なんか今日、ちょっとコゲてない?」

「そうなんだよ。どっかの『はやとちりピンク脳錬金術師』のせいでな」

「? 誰それ、どゆこと?」


 プリシラとそんな感じの会話を開店準備中にしている間も、エニアは依然ちょっと赤い顔で俺をじとーっとにらんでいた。


「むー、私は悪くないです……リガルさんの日頃の行いが悪いからです……」

「いや、読者たるエニアさんが常に新しい刺激をさがしているからだろ? 店長の書庫で、夜中に」

「すみませんわたしがわるいですだからそれいじょうはいわないでくださいおねがいします」


 エニアは俺の一太刀の前に全面降伏した。【神剣】の斬れ味、知りえたか?


「なになに? なんの話?」

「エニアのせいで俺が焦げたってことだ」

「そっかー、エニちゃんのせいかー、ならいいや」


 ならいいんだ。


 俺は釈然としない気持ちを抱えながらも、控室に目をやる。まだベッドの上ではメイが眠っている。よほど疲れていたのだろう。自然に起きるまで寝かせてやろう。


 そうしているうちに、残りのメンバー、ヒスイ、クード、ファシエが出勤してくる。


「おはよーさん」

「ん……おはよ」

「おはよう、リガル」

「おはようございます。今日も頑張りましょうね……あら?」


 ファシエは控室のベッドでメイが寝ているのに気付いたらしい。


「メイちゃん、昨日はエニアさんのお部屋で寝かせるって聞いてましたが……はっ!」


 ファシエは何かに気づいたように口元を押さえ、さっきのエニアよろしくみるみる赤くなっていく。


「まさかリガル、寝床を提供する代わりに、メイちゃんに……」

「なんもしてねえよ! 途中から俺の布団に潜り込んできただけで、最初はエニアのところにいたってば!」

「最初はエニアさんだったのですか!? その次がメイちゃん!? じゃあいよいよ今夜は私が……」


 視線を泳がせてもじもじするファシエ。


「お前の妄想にフィットするところだけ理解するな!」

「私だって、何もされてません!」


 しかしファシエは俺の話もエニアの話も聞かずに、ごにょごにょ言い続けている。

 クードはクードで、


「ああ……今夜ついにファシエさんがリガルに……! そして、僕はそれを扉の隙間から見ることしかできず……くっ、なんだ!? か、身体の芯が熱い!」

「変な方向にレベルアップしてんじゃねえ!」


 そしてヒスイは、


「みんな、おバカ……」


 そんな俺たちを冷ややかな目で見ていた。


 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


 目を覚ましたメイは、やはり俺にくっついて離れようとしなかった。俺はすっかり「親切な人」と認識されたらしい。


「なあ、メイ」

「なあに? リガルお兄ちゃん。『こんいんとどけ』、もらいに行くの?」

「行きません」

「じゃあ結婚して」

「しません」

「リガルお兄ちゃん……焦らすの上手……メイ、ドキドキしちゃう……うふふ……」


 なんで俺、こんなマセた幼女ばっかにモテんの? あと、早くもちょっと病んでない?


「そうじゃなくてさ、お前の家、もう一回見に行こうぜ。お父さん、帰ってるかもよ?」

「お父さん……」

「そうそう、俺もついてくからさ」

「メイのこと、お家に置いていかない……?」

「いかないって」

「メイのこと、ずっと見ててくれる……?」

「見てる、見てるって」


 なんかだんだん質問の内容が重くなっている気がしたが、メイを動かすために俺は話を合わせた。


「じゃあ、『こんいんとどけ』もらってから行く」

「もらいません。直接行きます」

「わかった……保証人を見つけるまで我慢する」


 なんで婚姻届についてそんなに知ってるの? もしかしてこの子、実は結構ヤバい子?

 そんな一抹の不安を抱えながら、俺たちはメイの家まで向かった。


 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


 しかし、やはりというべきか、メイの家に父親は帰っていなかった。

 メイは俺の服の裾をぎゅっとつかんで、それも泣かないようにしている。


 俺は思った。父親になにかあったとみるべきだろう。

 俺はメイに目線を合わせて話しかける。


「なあメイ、やっぱり何かおかしいぜ。騎士団に連絡して、調べてもらおう」


 しかし、メイは俺の提案を強く拒絶する。


「ダメ! それだけは、ダメ……リガルお兄ちゃん、お願い……」

「そ、そうか、そんなにダメか……じゃあ、せめて俺にこの家を調べさせてくれないか? 親父さんになにかあったのか分かるかもしれない」


 すると、メイはしばらく悩んでいた。そして、


「分かった……リガルお兄ちゃんなら、いい……」

「ん、そっか。ありがとな」


 そして俺はメイを連れて家を探索する。辺りはやはり、本や服なんかで散らかっている。だが、調べるとなれば、やはり父親の部屋だろう。俺はメイに案内されて、その部屋にたどり着いた。


「そういえばメイ、お父さんの名前はなんていうんだ?」

「シュラー……」

「シュラーさんか。じゃあシュラーさん、ちょっと失礼します」


 俺はいちおう、その場にいないシュラーさんに断って、その部屋に入った。

 ぱっと見は、他のところと変わらない。本やら服やら食器やらで散らかっている。


 しかし、部屋にしつらえられた品の良いデスク。そこにシュラーさんの手記らしきものがあった。すぐそばにペンも落ちている。なにか書いていたのか?


 俺はちょっとバツの悪さを感じながらも、それを読むことにした。

 そこに書かれていたのは、まずは病死した息子への謝罪だった。


「メイ、お前、お兄さんか弟がいたのか?」


 するとメイはうつむき、


「うん、テッドお兄ちゃんがいた……でも、病気で死んじゃったの……」

「そっか、悲しいこと聞いてごめんな。どのくらい前か教えてくれるか?」

「ううん、大丈夫……テッドお兄ちゃんが死んじゃったのは、半年前くらい……」


 それは確かに、手記に書かれている日付と一致する。

 俺は手記を読み進めてみた。

 すると、いろいろ分かった。


 シュラーの奥さんはメイを生んだ直後に他界し、シュラーは男手ひとつでメイとテッドを育ててきたこと。

 シデロの騎士団の武術指南役をつとめていたこと。

 そして半年前、仕事が忙しくて病気になったテッドに十分についていてやれず、死なせてしまったことを悔いていたこと。


 ただ、ここからがすこし怪しくなる。どうやらシュラーは、テッドを死なせてしまったことを周囲の人間から激しくとがめられたらしい。


『私は親としても、人間としても未熟でどうしようもなく愚かだった』

『皆のいうとおり、仕事など放ってテッドについていてやるべきだった』

『なぜ病院へ連れていくことさえできなかったのか』

『どうやったらテッドに償えるのか』


 こういった悲痛な叫びが、手記のページを削り取るような筆跡で書かれていた。


「メイ……お父さん、苦しんでたんだな……」

「うん……」


 メイもうつむいたまま、悲しそうだ。

 そして、俺が一番引っかかった一文、


『テッドが寂しくないように、お友達を天国へ連れていく』


 どういう意味だ? 天国へ連れていく? 友達になりそうな子供を殺すってわけじゃないだろうな。


 いや、待て。まさか――


 はっととして横を見ると、口をぎゅっとつぐんだまま、メイは静かに涙をこぼしていた。

少しでも面白いと思っていただけたなら、

下にある「ブックマークに追加」をクリックしていただけたり、

「☆☆☆☆☆」を「★★★★★」にしていただけると励みになります。

よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。