Side Process[あの日の会話]Flow1
大きい本棚で囲われた、入り口のない部屋。
そこに突然現れる二人の人物。
ひとりは息も荒く、床に四つん這いになっている、粗末な服を着ているが鍛え上げられた肉体の男。
もうひとりは、上質な椅子に座って彼を見下ろす、薄いグレーのジャケットの、整った身なりの男。
粗末な服の男は、状況が飲み込めていないようにあたりを見回しながらつぶやく。
「ここは……自分は、いったい……」
「ここは異世界だ」
ジャケットの男は端的に、粗末な服の男にとっての事実を告げた。
「い、異世界……?」
粗末な服の男は、この状況と、初めて聞く単語に混乱していた。
「貴公の住んでいた世界とは別の世界だ。貴公が処刑される寸前、ここに転移させた」
ジャケットの男はそういうが、粗末な服の男の混乱を収めるには不十分だった。
「転移? 異世界に、自分を……? な、なぜそのようなことを……」
「私は貴公のような人間を処刑するようなことは間違っていると考えているからだ」
ジャケットの男の答えは、答えているようでありながら数段階話が飛んでいる。
ゆえに粗末な服の男の質問は続く。
「な、何ですか、それは……? 私の、処刑が間違っている……? 貴方は、私の罪が何か知った上でそうおっしゃっているのですか?」
ジャケットの男は首肯した。
「貴公は軍の作戦中、唯一の家族である姉を人質に取られた。しかし上官は敵をその姉ごと大規模魔法で皆殺しにしようとした。貴公はそれを止めようとしたところを拘束されかけ、結果味方を殺さざるを得なかったのだろう?」
自身の事情を滞りなく突き付けられ、粗末な服の男はうなだれた。
「う……そこまでご存じなら、どうして……」
そこでジャケットの男は、まるで関係ないように聞こえる話を始めた。
「人間に自由意志はあるのだろうか」




