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【第2章まで完結済】神剣のプロトコル ~底辺まで落ちた元S級最強剣士の俺が、錬金術師少女に『武器の臨床評価』とかやらされ、結果的に世界を救うまで~  作者: 深井立花 数白
第2章:クラウ・ソラスはかく語りき

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第22話:Dummy Process[なんでですか]Flow2

 太古からのふざけたメッセージを受けたエニア達の反応はそれぞれだった。


「会長になんと報告すれば……いえ、これはこれでよかったのでしょうか……?」

 戸惑い、考え込むタバサ。


「こ、これがクラウ・ソラスの真実……私はいままで、なんのために……」

 放心しているラヴィナ。


 そして、


「わ、私のプロジェクト・レグルスが……最強剣士計画があ……仲間が最強の武器って、そうですけど……そういうんじゃないです! そういうんじゃないですー!! なんでですかああああああ!!」

 もう床をバンバンしてめっちゃ嘆くエニア。


 一方のトーヌフは、

「いやはや、まさかこんなことになるとは……これを知れば、いままでの外部との断絶は何だったんだという意見もでるでしょうなあ……」


 里が守っていたものが実はないと知り、複雑な表情を浮かべていた。

 結局、全員で遺跡中を探し回ってもクラウ・ソラスや隠し部屋などというものは見つからなかった。


   ▽ ▲ ▽ ▲ ▽ ▲ ▽


 トーヌフは里へ帰った後、住民に全てを打ち明けた。当然、これまでの生活は何だったのかという落胆の声が多かった。捕らえられた急進派の者からも同様の声は挙がった。


 その様子を見ながら話し合うエニアとリガル。


「これから、この里の皆さんはどうされるんでしょうか?」

「まあ多分、ジョルジオのジーさんと話しながら方針を決めるんだろうな。隠れ里を続けるのか、ジーさんとことでも交流を始めるのかは分からんけど」


 これからの里の平穏と発展を祈りつつ、エニア達はオルデンブルクへ戻ることにした。


   ▽ ▲ ▽ ▲ ▽ ▲ ▽


 まずはトーヌフとの合流に使った地点でジョルジオと待ち合わせた。

 そこには魔力車の他に、捕らえたラヴィナ達を運ぶ馬車も用意されていた。


 そして予想通り、タバサの報告を聞いて複雑な表情を浮かべるジョルジオ。また、タバサは深く頭を下げ、今回の勝手な行動を謝罪した。


 その頭にぽんと手を置き、少し撫でてやるジョルジオ。


「まあ、今回の事は大目にみてやるわい。おぬしなりに一生懸命じゃったんじゃろう」

「はい……」

「それにおぬしはどこかスッキリしたいい顔をしておるわい。なにか、大切なものを見つけたような顔じゃ。ま、ワシの気のせいかも知れんがのう」


 優しい言葉を掛けるジョルジオ。その彼に、タバサは自分の思いを語る。


「いえ、確かに……私はエニア様達との出会いで、大切なものを取り戻した気がします。会長、私は……もう一度、技師の勉強をしてみようと思います。もちろん、仕事に影響のない範囲でいたしますので……」


 それを聞いたジョルジオは満足そうに頷いていた。


「おお、そうか。それでは、帰ったら忙しくなりそうじゃ。ロナルド達にも協力してもらわんとのう。期待しておるぞ」

「は、はい!」


 一方ラヴィナは、ダーナの里やジョルジオ、エニア達を始め全員に謝った。


「皆様、この度は申し訳ありませんでした。こんな言葉は都合が良いと思われるでしょうが、私はリガル様の言葉で目が覚めました。デボン様を唆した罪も含めてお詫びし、償うことにいたしますわ……」


 そして彼女は、部下の兵士達の方にも向き直り、頭を下げた。


「皆も、こんな私に付き合わせてしまって申し訳ありませんわ。誰も命を落とさなかったことが唯一の救いです……」


 そんな彼女に、兵士の一人が言葉を返す。おそらく隊長格のひとりなのだろう。


「ラヴィナ様、ここにいるのものは皆、放浪の身であったり、他の貴族のところを追放されたのをラヴィナ様に拾われた身です。これからもそのご恩を返すべく、ラヴィナ様にお仕えしたいと思っております」


 その言葉はラヴィナの心の奥深くに届いたようだ。彼女を頬を一筋の涙がつたう。


「皆、ありがとう……これからは皆に恥じないように生きていきますわ」


 そしてラヴィナは、オルデンブルクに戻った後、自ら騎士団に出頭した。


 しかしエニアの方は、シデロの武器屋に戻っても消沈し、休憩室の机でいじけていた。


「うう……プロジェクト・レグルスが……世界最強の夢がぁ……結局、いいところもリガルさんに持って行かれちゃいましたし……いじいじ……うじうじ」


 そんな彼女をリガルはなんとか励まそうとしていた。


「ま、まあ、でもさ。お前も一応は戦えるようになったわけだし……」

「むっ、それはイヤミですね? 私のことをろくに移動もできない固定砲台だってさげすんでいるんですね?」


 しかし、リガルの言葉はエニアには届かなかった。それどころか、


「第一、シリウス・カリバーの正体がリガルさんみたいなヘタレせくはらお兄さんでなければ、私はなにも不満に思うことはなかったんです! あれもこれも、全部リガルさんのせいですー!!」


 エニアはピコハンを取り出して思う存分、リガルをピコピコしはじめた。

 それはもう、潔いほどのやつあたりであった。


 そこに新たな嵐が加わる。

 リガル大好き幼女、クララの襲来である。


「お帰りなさいリガル! わたしに会えなくてさびしかったでしょう? さあ、存分にわたしに甘えて……ってこらメギツネ! 何をしているのかしら!? リガルをいじめるのは止めなさい!」

「違います! これは正当な裁きですー!」


 片や、リガルに自分勝手な制裁を加えようとする運動神経少女。

 片や、それからリガルを守ろうとする5才の幼女。

 二人の争いは熾烈を極めた。端からみればじゃれ合っているようにか見えないが。


 リガルは早くも二人の争いを止めることを放棄しているようだ。椅子にもたれながら二人の様子を眺めている。


 そんなゆるい混沌と化した部屋に、ヒスイがおっかなびっくり入ってきた。


「え、えにあ。なんかお手紙が届いたから受け取ったんだけど……」

「えっ! は、はい。ありがとうございます!」


 ヒスイからエニアに渡される手紙。それは、それこそ貴族たちが使うような上質な封筒だった。

 封蝋にも、どこかの家紋がしっかりと浮き出ている。


 その差出人は――


「あ、ラヴィナさんからです!」

「んん? あのお嬢様から?」

「むっ、誰かしらそれは? またリガルに言い寄る悪い女じゃないでしょうね!」

「旅先で出会った貴族の方です。ええと、読んで見ますね……」


 先日の騒動は、ダーナの里の存在をまだ公にできないこと、死者が出なかったこと、ラヴィナ本人が深く反省している事もあり、執行猶予がついた。


 ラヴィナはシャトレ家の屋敷で謹慎しながら手紙を書いたらしく、その内容はやはり先日の騒動について改めて謝罪するものであった。


 それだけなら良かったのだが……手紙の続きにはこう書かれていた。



 私は間違っておりました。やはり実力というのは、たゆまぬ努力と工夫によってもたらされるべきものですのね。

 あのとき、リガル様が一刀に伏したのはなにも黒龍だけではありません。

 私の間違いをも断ち切ってくれたのです。

 そのとき、私にははっきりと分かりました。

 私はこの方の子を産むために、女に生まれてきたのだと。

 リガル様、待っていてください。

 私は必ず貴方にふさわしい女になって、貴方のものになりにまいりますわ!



「「「………………」」」


 エニアが手紙を読み終わった後、3人の間にはしばらく沈黙が降りた。

 しかしそれもつかの間、やがてクララが爆発する。


「リガル! これはどういうことなの! わたしの目の届かないところで、他の女にちょっかい出していたのね!」

「出してねえよ! そんで、出してたらなにかお前に関係あんのかよ!?」

「あるわよ! わたしはリガルの未来のお嫁さんなのよ!」

「あっ、それ最近言いふらして回ってるだろ! 止めてくれ! 最近なんか変な目で見られんだよ俺!!」

「それは、きっと私たちを祝福してくれる人の眼差しだわ!」

「ぜってー違えよ!!」


 エニアはリガルとクララのギャーギャーしたやり取りをジト目で聞いていた。

 そうしていたら、ふつふつと怒りが湧いてきた。エニアは腹立たしかった。認められなかった。


 そしていつもの攻めの姿勢が戻ってくる。


「そうです! やっぱりこんなロリコンせくはらお兄さんが世界最強の剣士だなんて認められません! プロジェクト・レグルスを成功させて、私が世界最強の名を手にしてやるのですー!!」


 こうして、クラウ・ソラスを巡る騒動は一段落した。

 エニア・タバサ・ラヴィナの心にそれぞれの変化をもたらして。

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