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【第2章まで完結済】神剣のプロトコル ~底辺まで落ちた元S級最強剣士の俺が、錬金術師少女に『武器の臨床評価』とかやらされ、結果的に世界を救うまで~  作者: 深井立花 数白
第2章:クラウ・ソラスはかく語りき

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第20話:Critical Process[遺跡の番竜vsヒューレ錬金術工房+【戦執事】タバサ]

 クードとタバサは火竜のほうへ駆け出し、プリシラは杖に魔力を集中し始めた。


「ねーエニちゃん、火の竜って、やっぱり氷が効くの?」

「はい! 氷や水が弱点です!」

「よーし、じゃあやっちゃうよー!」


 そしてクード達の後方で杖を構えるプリシラ。そして、


「では私も……」


 タバサも近接ではなく、まずは魔術を試そうというようだ。

 火竜は真っ先に飛び込んだクードに気を取られている。


 そこにプリシラの放った氷の杭が激突、さらにタバサによって追加された魔術によって着弾点を中心に氷に嵐が巻き起こった。


 たちまち火竜の身体から発せされる赤い炎の光が弱まっていく。


「やるなあ、ふたりとも。僕も負けてられないな……っと!」


 そう言ってクードは火竜の前足の関節を狙う。

 ふたりに魔術で弱っていたその部分は大きく斬り裂かれ、火竜はバランスを崩してダウンした。


 そして、動きが止まった所に、エニアの放った大量の電撃弾が降り注ぐ。

 火竜は感電して叫び声を上げて動きを止め、大きな隙をさらした。


「クード様、翼を!」

「そうだね!」


 息を合わせて飛びかかったクードとタバサの鋭い双閃で、火竜の翼は両方とも斬り落とされてしまう。

 しかも今度はプリシラが魔術の鎖を展開し、火竜の上体をがんじがらめにしてしまう。


 その連携を見て、ヒスイとトーヌフは感嘆の声を漏らした。


「やっぱり、みんな凄い……!」

「ええ、大したものですな……!」


 そしてタバサはここが好機とみたのか、一際魔力を集中させる。


「クード様、私が首を凍らせますので、一撃お願いします!」

「了解!」


 しかしタバサが魔術を発動したその時、部屋にもうひとつ赤黒い魔法陣が出現、火竜のものではない雄叫びが聞こえた。


 するとタバサが放った氷の嵐は向きを反転させ、タバサ自身に襲いかかった。


「なッ!?」

「タバサちゃん!」


 トーヌフが叫ぶ。


「いけない! もう一体でてきます!」

「え、え、どういうこと?」


 プリシラはどうすればいいのか判断できない様子だ。

 その間にも、魔法陣から新たに出てくる巨大な魔物。火竜と色違いにも見える、青い光を放つ鱗の竜。


 エニアはそれをすぐさま【観測機(ヴァリィ)】で分析した。


「氷の竜です!」


 エニアの言うとおり、魔法陣から出てきたのは氷竜・『アイスドラゴン』。この魔物が、先ほどのタバサの魔術の事象干渉力を奪い、タバサ自身にぶつけたのだ。


 もうタバサの足は凍り付いてしまって身動きがとれない。

 しかも、この間に体勢を持ち直した火竜の尻尾が狙っている!


「くうッ!?」

「タバサちゃん!!」


 火竜の一撃が振るわれる寸前、炎の刃でタバサを足を解放するクード。そのままタバサを突き飛ばす。

 しかし、代わりにクードに火竜の薙ぎ払う尻尾が直撃した。


 悲鳴も上げられずに壁まで吹き飛ばされるクード。


「う、あ……はは、やっぱりリガルのようにはいかな……ぐうッ!!」


 咳き込むクードの口からは血の塊が迸った。そこに駆けつけるプリシラ。


「クーくん! 待ってて、今治してあげる!」


 一方、クードにかばわれたタバサの方は放心してしまった。

 その彼女を、エニアはなんとかヒスイの【拒絶の盾】の内側まで引きずってくる。


「タバサさん! しっかりしてください!」


 エニアはタバサに呼びかけるが、彼女の顔はもう青白く、戦意を喪失したことは明らかだった。


「私は、私のせいでまた、私は、私では、会長のお役には……」


 エニアは懸命にタバサに呼びかけた。


「何言ってるんですか! そんなことありません!」

「しかし私はいつも失敗ばかりです。エニア様とは全く違う……技師としての才能もなく、執事としても、冒険者としてもこの有様では、私では、会長のお役には……」


 エニアはこのとき、タバサも苦しみを抱えてたのだという事を悟った。

 自分のなりたい姿。

 しかしそうはなれない現実。

 そのなかでもがいても、自分の足りない部分にばかり目が向いてしまう。


 エニアはタバサの思いの半分は理解できた。しかし、もう半分は共感できなかった。

 だから――


「なんでですかああああああ!!」


 ぴこーん!!


 タバサの頭を何かが打ち、場違いな快音が鳴り響いた。


 それはエニアにリガルがプレゼントしたピコハン。

 その一撃は、エニアからタバサへ向けた喝であった。


「なんでですか!? なんでそんなにすぐ諦めてしまうんですか!? まだちょっと失敗しただけじゃないですか! 今の力が足りなくても、そこから頑張って、工夫していけばいいだけじゃないですか!」

「え、エニア様……」


 突然まくし立てたエニアの言葉を、タバサは呆然と聞いていた。


「今だって、私たちがいます! 力を合わせれば、ここからだって巻き返せます! さあ、立って下さい! 今ここで、タバサさんの再評価をしてやるのです!!」


 エニアの心からの激励を聞いたタバサ。その瞳には、徐々に生気が戻っていった。エニアの言葉が響いたのだ。


「くっ……うう……い、言われるまでもありません!」

「では私とヒスイさんで、なんとか氷竜の相手をします! その間に、タバサさんは火竜を!」

「承知しました!」


 そして火竜の方へ駆け出すタバサ。

 一方、ヒスイの方は氷竜に怯えっぱなしだった。


「ひいぃいいいいい!! こっち来る!!」

「そのまま引きつけてください! 私が攻撃します!」

「ひいぃいああああ!!」


 そしてクードの回復をしていたプリシラも叫ぶ。


「アホ毛様、お願い! アタシの魔力を使って、二人を手伝ってあげて!」

『がってん!』


 そして戦いはエニア+タバサ+アホ毛様VS火竜+氷竜の構図にもつれ込んだ。


 まずタバサは魔術の乗っ取りを警戒し、レイピアに氷の魔力を付与させての接近戦に切り替えた。

 一度精神的に立ち直れば、そこはさすがにA級10位だ。火竜の牙、爪、尻尾、ブレスを華麗に回避しながら氷の斬撃をたたき込み続けている。


 エニアの方も、エーテルチェイサーで炎弾を連射し、次々と氷竜に打ち込む。

 それらはなかなか有効打とはならないが、氷竜の方も無視できないのだろう、エニアに狙いを定めて噛みつきや前足で薙ぎ払おうとしてくる。


 しかし、その程度の攻撃ではヒスイの【拒絶の盾】は破れない。

 しかも近づけば、ヒスイが必死に振り回るスピアの餌食になってしまう。


 近接戦は意味がないと見たのか、氷竜は飛び退き、氷のブレスを吐いた。

 それはたちまち猛吹雪となり、【拒絶の盾】の範囲全体を覆ってしまった。


「と、閉じ込められちゃった……」

「溶かします! ちょっと熱いですけど、我慢してください!」


 そしてエニアが、自分たちへのダメージを覚悟して氷を破壊しようとしたとき、氷の下に魔法陣が出現、底から突き出た石の杭で氷の檻は破壊された。


「え……今の、あほげさま……?」

「ありがとうございます!」


 そして再び氷竜に降り注ぐ炎弾の雨。それはゆっくりとだが、確実に氷竜の体力を奪っていっているように見えた。


 タバサの方も、時折アホ毛様の魔術の支援を受けながら、火竜に攻撃を加えていく。

 このまま行けば、エニア達の勝利も時間の問題であった。


 しかし、それに最初の気づいたのはエニアだった。


「え!? ラ、ラヴィナさん!?」


 そう、エニア達に守られていたはずのラヴィナがこっそりと抜けだし、あろうことかクラウ・ソラスの眠る最奥の部屋に近づいていたのだ。


「こ、この部屋に、クラウ・ソラスが……私の栄光が……」


 しかしそれは、火竜と氷竜に気づかれてしまう。

 2体は示し合わせたかのようにエニアやタバサを振りほどき、牽制する。


 そして二人の攻撃が止んだ一瞬、最奥の扉から漏れる光が一段と強まり、2体の竜の身体は赤黒い魔力の塊となった。そしてそれはひとつに合わさり――


 更なる巨体を持つ、黒い鱗の竜へと変貌した。

 その身体には、赤と青が混じったオーラが揺らめいている。


 その黒龍の視線の先には、ラヴィナ。


「ひ、ひぃっ……!」


 ラヴィナはすでに腰を抜かし、壁際まで後ずさることしかできない。


「ラヴィナさん!!」

「逃げてください!!」


 すかさずタバサがレイピアで刺突や斬撃を加え、エニアが炎弾を浴びせるが、その攻撃はまったく効いていない。


「くッ……!!」

「だ、ダメです! 敵、全属性に耐性があります!」


 黒龍はタバサ、エニアの攻撃をものともしない。

 それでもあきらめずにタバサは斬りかかり、エニアはさまざまな属性の誘導弾を放ち、アホ毛様も魔術で攻撃するが、黒龍は全く意に介した様子も見せない。


 そして、ラヴィナに黒龍の鋭い牙と爪が迫る。

 ラヴィナの命はここで終えようとしていた。


 しかし、黒龍のその爪先がラヴィナに届こうとしたとき、黒龍は動きを止めた。そして、


 スッ――


 その身体に真一文字に剣閃が走り、黒龍は、消滅した。


 そして、エニア達は見た。黒龍がいたところの向こう側に、ひとりの剣士が立っているのを。


 長く青みがかった髪を後ろで無造作にまとめ、いたって普通のコートにボトムス、ブーツ姿。そして手には淡く緑色に光る【仮面剣ユング】。

 そう、つまりその人物は――


「よっす。なんか間に合った感じ?」

「リ、リガルさん!!」


 元世界最強の剣士、シリウス・カリバーことリガル・フェイルであった。

少しでも面白いと思っていただけたなら、

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よろしくお願いします。

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