第19話:Process5[クラウ・ソラス防衛戦です!]Flow2
その後も、負傷者を見つけてはポーションを配布しつつ拘束しながらエニア達はラヴィナの後を追った。
第3層まで行くと、討伐されていない魔物や破壊されていない魔水晶も見られるようになり、また負傷者の数も増えていった。トーヌフ曰く、
「ある程度速度を重視して強行突破しているところもあるのでしょうな……」
ということだった。
自分の部下達が傷ついてもお構いなしなのか。
エニアは憤りと悲しさ、そしてそら恐ろしいものを感じながら遺跡を進んだ。
そして第4層に突入すると、そこではまだ魔水晶が多く残っていた。最早戦闘を最小限にして突き進んでいるのだろう。負傷者が発生していないらしい事だけは幸いだった。
その右へ左へめまぐるしく曲がる通路をエニア達は、魔物と魔水晶を撃破しながら進む。
そしていよいよラヴィナの兵達に追いついた。第5層へと続くであろう下り階段の前で魔物達と戦っている。
そしてクードが指示を出す。
「とりあえず、邪魔な魔物を排除しちゃおう。プリシラちゃん、タバサちゃんもお願い。エニアちゃんは相手の兵士を逃がさないようにね」
「「「了解!」」」
そして瞬く間に倒されていく魔物達。それが消滅すると、残るのは疲労の色が見えるラヴィナの兵士達。
「酋長やジョルジオの手の者か!? くそ、もうここまで来たのか!」
その兵士にトーヌフが告げる。
「そうです。クラウ・ソラスを兵器利用させるわけには参りません」
しかし、兵士側の士気は高かった。
「そんなことはさせない! それはラヴィナ様の悲願なのだ! そして酋長、お前が抑えつけてきた里の一部の者達も同じように思っているのだぞ!」
「それでも、クラウ・ソラスの悪用を見過ごすことはできないのです。道を空けていただけませんかな?」
「断る! 我々の邪魔をするというならお前達を排除して――」
「あのー、悪いこと言いませんから、道を空けていただいた方が……」
トーヌフと兵士の会話にクードが割り込んだ。
その隣には『きらーん』状態のエニア。
「ねえ皆さん、撃っていいですか? もういいですよね?」
エニアはまた自分が活躍できる場面だと思って、さっきからわくわくしていたのだ。
そんなこととはつゆ知らず、兵士はエニアを威圧する。
「なんだぁ、この小さいガキは? まさかラヴィナ様の精鋭である我々に勝てるつもりなのか? ハハハハハ!! お前のような子供に遅れをとる我々ではあばばばばばば!!」
そしてエニアの電撃弾を浴びて倒れる兵士。
「こ、コイツ!」
「やっちまえ!!」
当然、残りの兵士は色めき立ってエニアに向かっていくが、「あばばばば」を量産しただけに終わった。
「フッ、またつまらぬモノを撃ってしまいました」
ドヤ顔のエニアにクードが引きつった笑顔で尋ねる。
「ね、ねえエニアちゃん。気のせいかな? だんだん見境なくなってないかい?」
「気のせいです。でもせくはらしたらその限りじゃないです」
「あはは……今後のリガルが心配だね……」
ともかく、エニア達はラヴィナの兵士を無効化した。彼等の拘束と見張りに里の兵士達は全て割り当ててしまったが、それでもラヴィナを止めるべく、一行は最深部に突入した。
▽ ▲ ▽ ▲ ▽ ▲ ▽
ダーナの里の遺跡の最深部。そこはそれまでの遺跡と同一のものと思えないほど広大な空間を持った部屋だった。小さい村ならまるまるひとつ入ってしまうだろう。
そしてエニア達は空間にふさわしい巨大な魔物が暴れているのを目にした。
深紅の鱗をもつ巨大な火竜、『フレイムドラゴン』だった。
ラヴィナの兵士は隊列を組み、複数の魔術師と大盾持ちが火竜のブレスを防いでいる。
そしてブレスが途切れた隙に、剣や槍を持った兵士が飛びかかる。しかし、顔や足に突き立てられる刃はほとんど通っていない。
エニアはその光景に慄かざるを得なかった。
「トーヌフ様、あれがこの遺跡のボスなのですか!?」
「いえ! 私の知っているモノと違います!」
「ええ!?」
この部屋の奥にある扉、クラウ・ソラスがあるであろうそこからは、赤黒い光が漏れ出ている。
「この遺跡の【百害】があんな光を放つところは見たことがありません! もしかしたら、何らかの暴走状態にあるのやも……長い間ここで手つかずの状態でしたからな、何があってもおかしくありません!」
一方、ラヴィナの兵士はもう満身創痍であった。ほとんどの者が立っているのがやっとの状態だ。そこにまだ無事な魔術師が回復魔術を掛けている。
その後ろで檄を飛ばすラヴィナ。
「皆、あと一息、こやつさえ倒せばシャトレ家は大いなる繁栄を得ますわ! そうなれば望みの褒美をとらせましょう!」
だが兵士達の力は残り少なく、火竜の尻尾の一振りでまとめて吹き飛ばされてしまう。
そして火竜の前にひとり取り残されるラヴィナ。彼女はそれでも剣を抜き、果敢に火竜に斬りかかった。
しかしあっけなくその剣は弾かれてしまう。
そして火竜ににらまれたラヴィナがすくんだそのとき、火竜の頭部にエニアの電撃弾と、プリシラ、タバサの氷の槍が直撃した。
その隙に飛び出すクード。素早くラヴィナを拾い上げ、【拒絶の盾】を発現するヒスイの後ろへ。
「あ、あなたたちは! 私達の邪魔をしに来たという訳ですか!?」
助けられて礼も言わないラヴィナにトーヌフが答える。
「その通りです。クラウ・ソラスの技術を兵器に利用するなど、ダーナ様がお許しにならないでしょうからな」
「その子孫の私がクラウ・ソラスを差し出せと言っているのです!」
「とうてい聞き入れられません。あなたの考えはこの世界に戦乱をもたらすものですからな」
「くっ……」
ラヴィナが言葉に詰まったタイミングで、クードがトーヌフに素早く確認する。
「さて、これでこの遺跡から退散すればいいのでしょうか?」
「そうですな。結局クラウ・ソラスの部屋には到達されていないようですし、【百害】の暴走は気になりますが、一旦外に出て立て直してからにいたしましょう」
「了解です。みんな、退くよ!」
そのクードの号令にエニア達は従い、第4層への出口に向かう。
しかし、突如火竜が雄叫びを上げた。それと同時に――
「何っ!?」
「で、出口が……!」
そう。第4層への上り階段へ続く出口、そこに赤黒い魔法陣が出現し、通れなくなってしまった。
予想外の事態が続き、さすがに余裕がなくなってきたのだろう、トーヌフが驚いて叫ぶ。
「こ、こんなことが起こるなんて……!」
「トーヌフさん、この遺跡は元からこういう仕掛けなのですか!?」
「いえ、違います! 最奥の部屋の【百害】に何か起こっている影響かと……」
すかさずエニアは【観測機】で魔法陣、火竜、そして最奥の部屋から漏れる光を分析する。
「皆さん! あの火竜を倒さないと、魔法陣は解除されない仕組みになっています!」
「はは……やっぱりこういうときは、そう簡単にはいかないものだね……」
笑えない状況だがお約束の展開に、クードは苦笑していた。そのクード、そしてタバサにエニアは意見を聞いた。
「クードさん、タバサさん、どうでしょう?」
「瞬殺って訳にはいかないね。結構時間かかっちゃいそうだな」
「しかし、私、クード様、プリシラ様がいれば負けるとも思えません」
「そうだよ! アタシ達なら倒せるって!」
クード達の頼もしい返事に、トーヌフは申し訳なさそうな表情をした。
「くっ……では、申し訳ありませんが、お願いいたします……!」
「任せてください!」
「しばしお待ちを」
「れっつごー!」
そしてエニアもやる気であった。
「私も後方から援護します!」
と、エーテルチェイサーを構える。
エニア達とフレイムドラゴンとの戦いが、始まる。
少しでも面白いと思っていただけたなら、
下にある「☆☆☆☆☆」を「★★★★★」にしてもらえると励みになります。
よろしくお願いします。




