第15話:Process4[つよつよエニア無双です!]Flow4
デボンとの攻防からしばらくの間、高級宿から出たリガル達は魔力車の中でデボンの言葉について話し合っていた。
「なんかさー、ラヴィナがデボンに、事実と逆のことを言っていたのが変だよな」
「そうですね……なんでそんな事言ったんでしょう……?」
しかし、ここで考えていても埒があかないとみたのだろう、ジョルジオが言い出した。
「う~む……こりゃああの娘にも話を聞かんといかんのう……」
「ジーさん、どこにいるかは分かってんのか?」
「確かこことは別の宿に泊まっておるはずじゃあ」
「……ジーさん、屋敷に泊めてやったりしないんだな。相手一応貴族だろ?」
少し呆れ気味のリガル。しかしジョルジオは剛毅なものであった。
「ふん、呼んでもいないのに来たヤツを泊める部屋なんぞないわい。さて、あの娘の宿は確か……」
そしてジョルジオがラヴィナの泊まる宿を魔力車の運転手に伝えようとしたときだ。
「……む?」
ジョルジオの通信魔道具がピーピーと音を立てている。着信があったのだ。しかし、
「むう……あちらから来たか……どうしたものか……」
ジョルジオは通信魔道具を手に、着信に出ることをためらっていた。
「出ないのか? ジーさん」
「そうじゃな……いい頃合いじゃろう」
「なんのこと?」
ジョルジオはリガルの問いかけに中途半端に答え、着信に出た。
「ワシじゃ、そちらからとは、珍しいのう」
このときジョルジオが使っている通信魔道具は、【SABER】専用の物とは違い、相手の姿も映らない声だけ通信するものとなっている。
そして、相手の話を聞いたジョルジオが一瞬のうちに驚愕の表情に変わる。
「何っ!? 里が襲われ、占拠されたじゃと!?」
その物騒な言葉に、リガル達も反応する。
「里が占拠? どういうことだ?」
「それはじゃのう……ちょっと待っておれ」
そしてジョルジオは、通信の相手に何やら話し出した。そしてその後、エニア達の方に向き直り、こう話した。
「これから話す内容は他言無用で頼む。相手は……ダーナの里の酋長じゃあ。ちょっとマズい状況にあるらしい」
それを聞いて驚くエニア達。
「え? 私たちが聞いて大丈夫なんですか?」
「もうダーナの里があることは話してしまったからのう。まあ、ひとまずは酋長の言葉を聞いてくれい……ではそちらで何があったのかを話してくれんか? この者達は信頼の置ける者じゃわい」
通信魔道具をスピーカーモードに切り替え、の相手に話を促すジョルジオ。そして返ってきたのは、年老いた男性の声だった。
「……それでは、私はダーナの里の酋長をしております、トーヌフと申します。そして端的に申しますと、何者かに占拠された里を解放していただきたいのです」
「相手はどんなやつじゃ?」
ジョルジオが問う。
「それが……一部は我が里の急進派の者達なのですが、他は見当が付きません。どうやら位の高い、若い女性が率いているようです。オレンジの髪で、ドレスを組み合わせた赤い鎧の女性です」
酋長の言葉を聞き、エニアは驚いた。
「ラヴィナさんじゃないですか!!」
そしてジョルジオが次の問いを投げかける。
「里の者は無事なのか? ヤツらの目的は?」
「まだ危害は加えられていないようですが、目的は分かりません。と言っても急進派の者がいるので、クラウ・ソラスの入手だとは思いますが……」
「分かった。こちらからも戦力を送り込むわい。いつもの場所で待っとってくれ」
迷いなく応援を差し向けようとするジョルジオに対し、酋長は申し訳なさそうだった。
「申し訳ありません。我が里の問題に巻き込んでしまい……」
「謝るでないわ。クラウ・ソラスの問題はひとつの里で抱えておける物ではないじゃろう……しかし、弱ったのう……」
ここで初めて、ジョルジオが困ったような顔を見せた。それについて尋ねるエニア。
「何か問題があるのですか?」
「うむ……ワシはこれでもこの国の貴族じゃ。ワシの持つ戦力を国外に出して行使することはできん」
「そ、それではどうやって……」
「じゃから、恥を忍んで頼む。小童ら、ダーナの里へ向かってくれんか?」
そうしてジョルジオは若者達に頭を下げた。一瞬、車内が緊張感に包まれる。
しかし、それをリガルが真っ先に破った。
「しゃーないな、行ってやるよ。お前らはどうする?」
そのリガルの問いに、エニアは真っ先に答えた。
「私も行きます! そんな形で無理矢理クラウ・ソラスを手に入れようなんて、許せないです!」
そしてエニアは、他のメンバーの方を向き、自分からも懇願した。
「皆さん、お願いします! クラウ・ソラスの防衛に力を貸してください!」
それに対し、クードとプリシラは快諾した。
「僕は構わないよ。犯罪者を捕らえるのにも慣れているしね」
「アタシもー! 悪いヤツならみんなぶっ飛ばしてあげるよー」
唯一即答できなかったヒスイも、
「わ、わたしも、えにあ守るだけでいいなら……」
という訳で、全員ダーナの里の解放に向かう意志を示した。それを聞き、通信魔道具の向こうのトーヌフは感謝を通り越して、少し感激しているようだった。
「なんと……来ていただけるのですか! 見知らぬ我らのために……!」
そのトーヌフに、リガルはいつも通りの軽さで応じる。
「気にすんなって。困ってるヤツを助けるのが冒険者の仕事みたいなもんだから」
それにエニアも続く。
「リガルさんからそんな台詞を聞くことが驚きなのですが、錬金術師もそうです!」
そして、そんな彼等にジョルジオは感謝し、同時に詫びた。
「すまん、おぬしら。ワシらがふがいないばかりに厄介ごとに巻き込んでしまったのう……」
「会長……」
普段の覇気のないジョルジオの姿を、タバサは心配そうに見ていた。
しかし、そんなジョルジオにエニアは言った。
「そんな、クラウ・ソラスの事は、きっとみんなで考えるべき事ですから!」
「そうか……そう言ってくれるとありがたい。おぬしらに頼んでよかったわい」
そして一行は、魔力車でトーヌフとの合流に向かうのだが……。
「すまんタバサ。ダーナの里の事は可能な限り秘密にしておきたくてのう。おぬしは連れて行くわけにはいかん」
「……わかりました……皆様、お気を付けてください……」
そして悔しそうな顔をしたタバサを街に残したまま、魔力車はジョルジオの運転でトーヌフとの合流場所に向かおうとした。
しかし、その時であった。
リガルの【SABER】専用通信魔道具に着信があったのだ。それを見たリガルは舌打ちし、車から出る。
「ウソだろ、ギルドマスターからの緊急案件だと……こんな時に限って……!」
それを聞いて慌てる一行。
「え、リガルさん、大丈夫なんですか?」
「ダメだ! 極秘のクエストの命令らしい! お前らは先に行け! 俺はこっちの用事を速攻で片付けてから追いかける! ジーさん、2往復させちまうがそれで頼む!」
「そうするしかないかのう。ではおぬしら、先に行くぞ」
そしてエニア達はトーヌフとの合流場所に向かった。
【神剣】を欠いた状態で。
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