第14話:Process4[つよつよエニア無双です!]Flow3
工房への盗難、および村や工房への魔物の襲撃。それらを指示した容疑者である豪商デボンの元に、俺達は騎士団と共に赴いた。
着いたのは、ジーさんの街には似合わないくらいゴテゴテした4階建ての高級宿。
天井にはシャンデリア、革張りのソファ。真っ赤っかなデカいなんかの花。なんの模様なのか全く分からない、やたら毛の長い絨毯。いかにもな成金趣味だ。とりあえず派手にしておけば満足でもするのだろうか。
そこに、ジーさんを先頭に俺達は乗り込んでいく。
すぐさま、受付から連絡を受けたであろう支配人っぽい人が慌てて飛んできてジーさんに話しかける。
「ジョルジオ様! いかがなさいました……?」
「ここにデボンとかいう商人が宿泊しておるじゃろう。ソイツに用があってのう」
「それは、ど、どのような御用向きで……」
その続きは、一緒に来てくれた騎士団の隊長が引き継いだ。
「デボン氏には先日、近隣の村を魔物に襲撃させた容疑がかかっています。調査にご協力をお願いいたします。ご協力いただけない場合は……」
「な……! し、承知いたしました……ご案内いたします」
そして冷や汗をかいている支配人に案内され、最上階の一際豪華な造りの部屋の前にたどり着く。
支配人はそのドアをノックしてデボンを呼び出した。
「デ、デボン様……失礼いたします」
すると中から偉そうな声で返事がある。あのオッサンの声だ。
「なんですかな? ワタクシはこれからアフタヌーンティーを……」
「恐れ入りますが、領主様がデボン様にお会いしたいといらっしゃっております……」
「なんと! ジョルジオ卿がワタクシに!? すぐお通ししますぞ!」
言葉だけ聞くと驚いているようだが、もしコイツが魔物をけしかけた黒幕なら、今日俺達が踏み込んで来ることも考慮していたハズだ。
そしてドタドタという重い足音の後に扉が開く。
「ぬふふ。よくいらしてくれましたジョルジオ卿。まさかアナタの方から来ていただけるとは、うれしいかぎりですぞ! ……おや、騎士団の方々も一緒なのですか。なにかあったのですかな?」
ニタニタと笑いながらそんなことをぬかし、俺達を部屋へ通し入れるデボン。太え野郎だ。
そのデボンに騎士団隊長が問いただす。
「デボン殿。貴方には昨日、魔物を使役して村を襲撃させた事件の指示者である容疑がかかっております」
「なんと、ワタクシが!? いったいなぜ? どのような根拠があってそんなことをおっしゃるのですかな?」
白々しく両手を広げて驚いてみせるデボン。そして、村や工房を襲撃していた男達が騎士団に引き連れられて入ってくる。
「なんですかな? この小汚い者達は?」
汚らわしそうに顔を歪めるデボンに向かってジーさんが説明する。
「こやつらは使役された魔物を使って、村やウチの工房を襲ったヤツらじゃあ。なんでも、おぬしからの指示じゃったと吐きよったわい」
「まさかジョルジオ卿、そのような世迷い言を信用している訳ではございませんでしょうな?」
「いや、こやつらの言うとおりじゃと思うとる」
「おお、なんということでしょうか。なにか証拠でもあるのですかな?」
俺はジーさんとデボンのやり取りを聞いていて、自分の予想通りの展開になっちまったなあと思った。
やはりデボンは、これくらいでは自分の関与を認めないか。
そして今度は、騎士団の隊長がデボンに要請する。
「それを詳しく調べるためにも、事情聴取にご協力いただけませんか?」
「お断りですな。そんな者達の言葉に惑わされる愚かな騎士団に協力するほど、ワタクシはヒマではございませんので」
うーん……やっぱり騎士団の聴取にも応じないか。困ったもんだな。
なにか良い手段はないのものか考える俺。となりにいるエニアも焦っている。
「リ、リガルさん、どうしましょう。どうすればあの人に、自分の罪を認めさせることができるでしょうか……?」
「魔物の買い付けの証拠でもあればいいんだが……それをどうやって行うかだよなあ……」
「そうですね……」
俺達が悩む間もジーさんと騎士団の隊長、デボンは言い争っていたが、デボンは全く尻尾を出さなかった。そして、
「ぬふふ。そろそろお引き取りいただけますかな? ワタクシも忙しいのです」
デボンが俺達を追い出そうとしたところでジーさんが言い出す。
「それなら、領主としてお前さんの身辺の物を差し押さえる命令を出すまでじゃあ!」
「おお、そのような強引な真似をしてよいのですかな? もし何も出なければ、商業ギルドを通じて各方面へ抗議を出させていただきますぞ?」
「ふん、それくらいの覚悟はできておるわい」
マズいな。ジーさんの命令にもデボンは動じていない。おそらく証拠は入念に処分してあるのだろう。
デボンはダーナの里の男達を一瞥し、吐き捨てる。
「それならばお好きになさってください。ワタクシとそこの薄汚い犯罪者共に接点などありはしないのですからな」
それを聞き、今まで言われたい放題だったダーナの里の男達も声を上げる。
「ふ、ふざけるな! アンタがやれって言ったから、俺達はあんなこと……!」
しかし、やはりデボンには全く堪えていない様子だ。
「やれやれ、何の恨みがあってワタクシに罪を着せようとしているのか……」
ここで、意外な人物が口を開いた。
「じゃあ、おっちゃんは何もしていないって言うのー?」
プリシラだ。なんだコイツ? どうせ今までの話なんて理解していないだろうに、なんでいきなり……と思った時、デボンが予想外の返答をする。
「そんなことはありません。ワタクシはそこにいる者達に使役された魔物を渡し、時間差で村と工房を襲わせ、クラウ・ソラスの技術が使われた武器を奪おうとしました」
「は?」
……いきなり罪を認めた……?
「なんじゃと?」
「はッ!? ワ、ワタクシはなぜ本当の……い、いや、今のはただの言い間違いですぞ! ワタクシは断じて……」
デボンは今の自白(?)に対する言い訳をしようとしたが、またもプリシラが質問した。
「なんでおじーちゃんのところにクラウ・ソラスがあると思ったのー?」
「それは、ラヴィナ嬢がそのように言っていたから……って! いや、違いますぞ!」
何で自分の主張と正反対の事を言い出したのは分からないが、それを聞きのがすジーさんと騎士団ではない。
「やっぱりおぬしが一枚噛んどったのか!」
「聞き逃すことはできませんな。重要参考人として、詳しい話を聞かせていただきます」
しかしデボンも当然抵抗する。
「こ、これは何者かの陰謀です! ……そうです、きっと誰かが催眠魔術などを使ってワタクシに事実と異なることを言わせたのです!」
だが、騎士団の隊長にそれは却下された。
「そのような高等な魔術が使われて形跡はない! 言い逃れするな! それではジョルジオ様、我々はこの者の取り調べに参りますので……」
「うむ、よろしく頼んだぞ」
「ワ、ワタクシは本当に……」
そしてデボンは騎士団に連行されていった。
残された俺達は首をひねる。
「な、なんで急に関与を認めたんでしょうか?」
ジーさんも不思議がっている。
「わからんのう……小童ら、なにかしたか?」
「いや、なんにも」
俺以外のメンバーもみな、首を横に振っている。
だが経緯はどうあれ、騎士団がこれから詳しい調査を行ってくれるだろう。俺達は宿を後にすることにした。
しかし帰り際、ふとアホ毛様を見ると、『♪』の形になってみせた。
……やりやがったな。この謎存在め。
少しでも面白いと思っていただけたなら、
下にある「☆☆☆☆☆」を「★★★★★」にしてもらえると励みになります。
よろしくお願いします。




