第13話:Process4[つよつよエニア無双です!]Flow2
魔物に襲撃されたと聞いて駆けつけてみれば、その魔物はエニアの新武装によって全滅していた。
見た感じ、怪我を負っている人もいないっぽい。
俺達は魔物に初勝利したエニアに駆け寄った。
「その武器……完成したのか!」
「はい。ギリギリでしたけど、調整が間に合いました。各種エネルギー弾を射出し、相手の方に誘導させる武器、名付けて【誘導魔弾砲エーテルチェイサー】です」
「すごーい! かっこいい!」
プリシラははしゃいでいたが、俺は普段のおぞましい感触が無いことに違和感を覚えた。
「なんか……普通の名前だな」
「まあ、まだ試作機ですからね。かっこいい名前を付けるのは、もっとふさわしい完成度になってからです」
「そうか、じゃあ完成しない方がいいな」
「どういう意味ですか!!」
そんな仲間の無事を刺激的に彩るリガルさんジョーク(ただし本音に限りなく近い)が場を和ませたところで、俺は微かに人の気配を感じた。
「まて、誰かいないか?」
「うん、そんな気がするね」
クードも勘づいたようだ。そこでエニアが【観測機】を操作した。
「え? ちょっと待ってください、今モードを……」
そして【観測機】に表示されるふたつの光点。
「あ、本当に人がいます! 逃げてるみたいですね」
「リガル、捕まえよう! エニアちゃん、方向は!?」
そしてエニアが試験場から少し離れた林の2方向を指さす。
「あっちとそっちです!」
「へ~い。じゃあぱぱっと捕まえてきますか。俺右ね」
「分かった! じゃあ僕は左を!」
そして俺達は怪しい人影を追った。
▽ ▲ ▽ ▲ ▽ ▲ ▽
はい有言実行。ホントにぱぱっと不審人物を捕まえた俺とクード。
相手ド素人だったし、ラクなもんだった。
その相手は、昨日タバサが捕まえた怪しい男達と似た格好をしていた。
ひとりは20代くらい、もうひとりは40代くらいの男。
そして、黙りこくったまま何も話さないのも同じ。
まあでも、せっかく捕まえたので目的でも訊いてみよう。
「あんたら誰だ? ここを襲った魔物はあんたらの仕業か? この頃この工房に盗みに入ったのもそうか?」
「「………………」」
やっぱり何も答えないか。
ここでクードが提案してくる。
「リガル、彼等の持ち物を改めよう。なにか分かるかも」
「そうだな」
そして怪しい二人の身体検査をすると、見覚えのある物が出てきた。俺達に縁のある物だ。
「うわ、これは……」
「ウィリオンさんが使役した魔物を商品化したヤツですよね……」
そう。今エニアが言ったとおり、1ヶ月程前の魔物暴走事件の主犯・ウィリオンが『使役した魔物の商品化』なんて裏商売をしやがったときの商品が出てきた。
ウィリオンの異能【収納】で使役した魔物を封じている札。
それが中年の男の方が持っていた。
しかし、それを見て驚いているヤツは俺達だけではなかった。
若い男の方がこう言った。
「お、お前、なんでそれ全部使わなかったんだよ!?」
うかつなヤツだ。
「それはつまり、魔物はお前達の仕業ってことだな?」
俺に続けてエニアやプリシラも糾弾する。
「な、なんのためにこんなことを!?」
「みんなすっごく危なかったんだぞ、このバカー!! 誰か死んじゃったらどうするつもりだったのさー!!」
ただ、それを聞いた中年の男はひどく辛そうな表情を浮かべた。
「違う……俺達はただ、魔物を使って人を追い払って、その娘の持っているクラウ・ソラスの技術を盗もうとして……」
自分のやったことを告白しかけている中年の男の言葉を聞いて、若い方は慌てている。
「おい! 余計な事を言うな!!」
しかし中年の男の懺悔にも似た言葉は止まらなかった。
「俺は本当はここまでしたくなかったんだ……でも、クラウ・ソラスの技術を手に入れるためにはこうするしかないってあの商人が……」
やっと有益な情報が出てきた。
「あの商人って?」
「デボンという男だ。なんでも、裕福で権力のある商人っていう話だった。俺達はアイツに協力していた……」
「協力していた……って、つまりあんたらはデボンの部下とかじゃないんだな? どこの人間なんだ?」
「それは……」
さすがに中年の男も言えない情報があるらしい。ここで口を閉ざした……と思ったら。
「それはワシから説明するわい」
俺達の後ろから掛けられる厳格そうな声。
「魔物は無事片付いたのか? ジーさん」
そう。男達の身元を知っていると言い出したのは、ジョルジオのジーさんその人だった。隣にタバサもいる。
「こっちの方も無事片付いたわい。紋様付きにはワシが対応するしかなかったがのう。あれはあれでたいしたもんじゃあ」
「ところで会長、この者達の出身をご存じなのですか?」
ジーさんに質問するタバサ。頷くジーさん。
「そうじゃ。やれやれ、もっと早く明かしておけばよかったのう……」
そして怪しい男達について説明するジーさん。
「こいつらはのう、太古の昔にダーナ=マリー・シャトレがクラウ・ソラスを封印した遺跡を守る隠れ里、『ダーナの里』の住民じゃあ」
それを聞き、エニア達は驚いていた。タバサもだ。
その中で『きらーん』状態になったエニアがジーさんに質問した。
「それではジョルジオ様、クラウ・ソラスは実在するんですか!?」
「そうじゃ。そして、その力を二度と悪用されんように、本来はこの男達の里のもんが人知れず守っとる」
クラウ・ソラスが実在すると分かり、エニアのテンションは更に上がった。
「ま、まさか実在するなんて……! それなら、クラウ・ソラスを見せてもらって技術を解析すれば、『プロジェクト・レグルス』を実行することも夢では……ふっふっふ……」
そしてニヤニヤし始めたエニア。俺としては『プロジェクト・レグルス』とは何かが気になったが、次にプリシラが手を挙げて至極真っ当な質問を投げかけた。
「じゃあなんで、おじーちゃんは知ってるの?」
「ワシがこの地を治めることになったときに行った調査で知ったんじゃあ。ワシとそこの酋長とは協力関係にある」
次に質問したのはタバサだ。ジーさんに隠し事をされていたのが少しショックだったみたいだが、上手く自制しながら質問した。
「そ、それでは会長、なぜその一族の人間が、クラウ・ソラスを狙って我が工房を狙っているのでしょう?」
「それがのう、ダーナの里の一枚岩ではなくてのう。クラウ・ソラスを封じたままにするべき酋長達と対立して、その技術を利用して利益を得ようとしている輩がいる。コイツらはその一部じゃろう」
残念、ダーナの里の代表の方針を知って、エニアは一転して消沈してしまった。
「封じたままにするべき……そ、そうですか……」
そして今度はクードが口を開く。
「なぜ彼等は、エニアちゃんの新武器にクラウ・ソラスの技術が使われていると思っているのでしょうか? エニアちゃん、ラヴィナさんにそう言ったんだよね?」
「は、はい。そのはずなんですけど……」
「それはワシにもよく分からん。じゃが、魔物を利用して民に危害を加えたことは事実じゃあ。騎士団も動かして本人に直接問いただしてやるかのう」
ジーさんはそう言って通信魔道具で騎士団に連絡を取り始めたが、相手は海千山千であろう豪商だ。そんなにうまく行くかどうか、俺は確信が持てなかった。
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