第11話:Process3[盗人は許せないです!]Flow3
夜の見張り中に突然聞こえた、「犯人を捕まえた」というタバサの声。
それを聞いて、俺とクードは目を見合わせた。
「捕まえたって……本当かな?」
「わかんねえ。下手するとホンモノのニックをニセモノとして捕まえてたりしてな」
「さ、さすがにそれは……」
「まあいい、ちょっと見てくる。見張りの交代はその後で」
「うん、分かった」
そしてクードと分かれ、タバサの声のした方へ急ぐ俺。そこで見たのは――
「どうですリガル様! 私が本気を出せばこんなものです!」
と、自慢げに胸を張っているタバサと、
「……………」
手足を氷漬けにされて地面に転がされている、見たことのない格好の不審な男だった。
「こいつ、何してた? 昨日のヤツと同じヤツか?」
「昨日の盗人ではありませんね。ただし、屋敷の敷地内でコソコソしていたので声を掛けたところ、逃げ出したので捕まえました」
「コソコソって、具体的には?」
「物陰に隠れるようにしながら、作業場の方を観察していたように見えました」
「なるほど。そりゃ怪しいな」
その怪しい男は、口をへの字の曲げたまま、不機嫌そうなツラでこちらに目を合わせようとはしない。
とりあえず会話する意志はなさそうだ。
「よし、とりあえずジーさんに報告して、みんなに来てもらうか」
「そうですね」
そしてタバサは通信魔道具を取り出して、ジーさんやロナルドさん達に連絡を取りだした。
▽ ▲ ▽ ▲ ▽ ▲ ▽
タバサが連絡してから数分、見張り中のクードを覗いた全員が夜の庭に集合する。
そしてジーさんが怪しい男に尋ねる。
「おぬし、どこのモンじゃあ? オルデンブルクの者ではないな」
「………………」
やはり男はこたえない。
男の格好は、俺たちのように服屋で買った綿の服のようなものではなく、麻の繊維を使って自分たちで手作りしたようなものだった。
繊維の太さや織り方にムラがある。プロの仕事じゃない。貧しい村とかの出身に見えた。
少なくとも、こういった人物がシデロやオルデンブルクにいたら浮いて見えるだろう。
「小童、小娘達も。コイツに見覚えはあるかの?」
ジーさんは俺やエニア達にも聞いてくるが、当然全員見覚えはない。
「シデロでも、貧民街くらいじゃないと見かけないぞ、こんなヤツ」
すると、ある意味被害者の一人であるニックが声を上げる。
「あのデブのオッサンの子分とかじゃねえか!?」
その主張に、やはり冷静なロナルドさんが質問を投げかける。
「クラウ・ソラスを探しに来たっていうことか?」
「きっとそうだって!」
「じゃあ、なんでエニアさんの試作機が重点的に狙われている?」
「あ、えっと、それは……」
確かに。それならジーさんの工房が開発した物が狙われるはずだ。それに、作業場以外が狙われた形跡も、今のところない。
すると今度は、タバサが言い出した。
「もしかすると、ラヴィナ様が雇ったりしたのではないでしょうか……? 私、ラヴィナ様がエニア様の試作機の試し撃ちを見に来ているのを何回か見ています」
お、そんなことがあったのか。
「じゃあラヴィナは、エニアの試作機にクラウ・ソラスの技術が使われていると思った可能性があるのか……」
しかし、ここでおずおずとエニアが手を挙げた。
「あの、ラヴィナ様の仕業ではないと思います。実はラヴィナ様と直接お話しすることがあって、その時に私の新武装にはクラウ・ソラスの技術は使っていないと伝えているんです。それに、ラヴィナ様が欲しているのは、クラウ・ソラスの技術というより、クラウ・ソラスそのものであるように思います」
「え、お前、あの貴族のお嬢様と話ししてたの?」
「はい、試験場で一度だけですけど」
そんな話をしていると、プリシラが痺れを切らしたらしく、こんな提案をし出した。
「もうさー、分かんないならさー、本人に催眠魔術掛けて白状させちゃわない?」
「ええ!? プリシラさん、それはちょっと……」
俺も驚いた。プリシラが催眠魔術なんて精密な魔力コントロールを要する魔術を使えることにも驚いたが、コイツがそんな物騒な……と思った時に気がついた。
コイツ、〝アホ毛様〟の方じゃねえか!! プリシラの身体で好き放題言いやがって!!
しかし、幸いにもジーさんの鶴の一声が発せられる。
「ここで話していても埒があかん! この者は騎士団に預けて、身元を調査させておく! 小童、今夜はコイツの見張りについてくれい!」
「へいへい、りょーかーい」
▽ ▲ ▽ ▲ ▽ ▲ ▽
そして翌日、怪しい男をしかるべきところへ引き渡した俺。そのままエニアの様子を見に試験場へ行った。
そこでは、設置された的相手に試し撃ちと調整を続けるエニアの姿。
たいしたものだと思う。コイツは自分に足りない才能を他の部分の努力と工夫で補おうとしている。
その上、試験機が盗まれたり壊されたりっていう災難にもめげずに行動し続けている。
それだけ、『かっこいい冒険者』ってのがエニアの中で大きな夢なんだろうなー。
そういえば、孤児院で冒険者を目指した頃の俺も――
なんて思っていたときに、【SABER】の通信魔道具に着信があった。発信者はジーさん。
出ると、珍しくジーさんは少し慌てていた。
「小童! 手を貸してくれ! 魔物が大群で出たんじゃあ!」
「ジーさんでも手に負えなさそうなヤツか?」
「いや、場所の問題じゃ! 同規模の大群が2カ所で村を襲っておる! 片方はワシとタバサで行く。もう片方を頼む!」
「そういうことなら、分かった。任せとけ」
そして俺は作業場に駆け込んだ。幸い、クード、ヒスイ、プリシラの3人ともエニアの手伝いでいたからちょうど良かった。
「クード! ヒスイ! プリシラ! 近くの村で魔物の大群が出た! ぶっ飛ばしてこいってジーさんに頼まれたから行くぞ!」
俺の声に、やはり真っ先に反応したのはクードだ。
「分かったけど、エニアちゃんはどうする?」
「どんなヤツがいるか分からない。危険だから俺たちだけでいこう」
「分かった」
そして、「魔物ぶっ飛ばすなら任せてー!」と飛んできたプリシラと対照的に、ヒスイはビクビクしている。
「わ、わたしもいかなきゃだめ……?」
「お前の防御で守らなきゃならない人がいるかも知れない。来てくれ!」
「うう……わかった……」
そして俺たちは気乗りしないヒスイを励ましながら、ジーさんが手配してくれた魔力車に乗って南の方にある村へ急いだ。
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