第8話:Process2[試練なんて楽勝です!]Flow4
廃坑道から屋敷に戻ってきたエニア達を迎えたのは、出発前までのトゲトゲしい雰囲気が少し収まったタバサとリガルだった。
「お帰りなさいませ、エニア様。首尾はいかがだったでしょうか?」
「怪我とかしてないだろうなー?」
「ふっふっふ。ご覧のとおりです!」
エニアはそう答え、収納錬成具から取り出したユニコーンライト鉱石を自慢げにタバサに差し出した。
それをタバサは受け取り、軽く眺める。
「……なるほど。しかし本当にユニコーンライトかどうか、こちらで鑑定させていただきます。その前に皆様、昼食の用意が出来ておりますが、いかがなさいま……」
「ごはん! ごはん、食べます! 無いっていっても、むりやり食べます!!」
もはやタバサを食おうとしているのではないかと思えるほどの反応をヒスイが見せた。
思えば、魔力車での移動中もずっとひもじそうにへろへろしていた。そろそろ我慢の限界だったのだろう。
「そ、それでしたら、先に食堂へまいりましょうか……食事を持ってまいります……なるはやで」
そして若干引き気味のタバサに連れられ、食堂へ向かった。
ヒスイが何回おかわりしたかは、推して知るべしである。
▽ ▲ ▽ ▲ ▽ ▲ ▽
昼食を終えて一休みしていたころ、タバサがエニア達を迎えに来た。食事の間にユニコーンライト鉱石の鑑定を手配していたのだ。
「それではエニア様。鑑定の準備が整っております。作業場へお来しいただけますか?」
「え、もう作業場に入っていいんですか?」
「……まあ、見た限り十中八九ユニコーンライト鉱石ですからね。鑑定は念のためです」
そういうタバサは、なぜだかエニアの事をもう認めているような、そんな気がした。
そのタバサに向かってプリシラが言い出す。
「ねえねえ! アタシも作業場ってどんなとこか見たい!」
その申し出をタバサは許可した。
「作業場のものにむやみに触らなければよいと会長の許可をいただいております。問題ありません」
そして一同は屋敷を出て工房のある建物へ向かう。
その途中にクードが話を切り出した。
「そういえばタバサちゃん。廃坑道に怪しい人影を見かけたんだよ」
「人影……ですか? あのダンジョン化した場所でですか?」
「あ、そうでした! 姿はよく見えなかったんですが、確かに人がいました!」
作業場に入れることで頭がいっぱいだったエニアはすっかりそのことを忘れていた。
そして歩きながら事情を話した。
廃坑道に壁に偽装された扉があったこと。
それをプリシラが早まって爆破したこと。
しかし中にいた人物は爆破の煙に紛れて奥へ逃げてしまったこと。
謎の人物達が隠れていた部屋はまだ新しく、山賊の類のねぐらではないと思えたこと。
それらの情報を一通り聞いたタバサは首をひねっていた。
「あのあたりには、山賊はもちろん、人の集落とかもなかったハズですが……会長と騎士団にも報告しておきましょう」
そして話が一段落したところで作業場に着いた。頑丈そうな扉をタバサが力を入れて開く。
「では皆様、中へどうぞ」
「お、お邪魔します……!」
そして中でエニアが見たものは……、
「わあ……!」
分厚い専門書が並ぶ本棚。
設計やシミュレーションに用いる大型の演算器。
各種魔力変換素子が並んでいるであろう棚。
設計中の機械の小型模型。
それらはみな魔法機械工学に専念できる環境であり、ヒューレ錬金術工房の設備とはまた異なっていた。
「すごいです! さすがジョルジオ様の工房です!」
そして、感動しているエニアの元へ工房の職員が集まり、その先頭にいる男が挨拶を述べた。
「初めまして。ヒューレ錬金術工房のエニアさん達ですね? ようこそ、テイドマン魔法機械工房へ。私は主任技師を務めております、ロナルド・テイドマンと申します」
その男、ロナルドは整えられた黒い短髪、ガッシリとした体格に赤銅色の肌、しかし表情や雰囲気は人当たりの良さそうな人物であった。
彼が差し出した手と握手しながら、エニアも挨拶する。
「は、初めまして! ヒューレ・プラーグマの弟子のエニア・コレクトです。この度はよろしくお願いします! ……あの、テイドマンってお名前、もしかして……」
「はい。会長のジョルジオ・テイドマンは私の父です。よろしくお願いします」
そして両者の挨拶は和やかに終わりかけたが、職員の中からひときわ若い、ロナルドと同じ髪と肌の色をした青年が出てきてエニアに突っかかる。
「お前が祖父さんが言ってたヤツか? 間抜けそうなツラしてんな~。タバサの爪の垢でも煎じてもらったらどうだ?」
初対面の相手に失礼な言葉を吐く青年。エニアもカチンと来て言い返す。
「むっ、どちら様ですか。いきなり間抜けとはなんですか」
「俺サマか? 俺サマはニック・テイドマン! 将来この工房の主任技師になるおと……いでっ!!」
青年・ニックの名乗りは最後まで続かなかった。ロナルドの拳骨がニックの頭に落とされたからだ。
遠慮の一切無い一撃にエニアはびっくりしてしまった。あと、後ろで誰かがビクッとした気配もあった。多分ヒスイだろう。
殴られた青年は声を上げる。
「なにすんだ親父!」
「それはこっちの台詞だ! お客様になんてことを言うんだお前は!」
そしてロナルドは、自身をにらみつけるニックを押さえつけてむりやり頭を下げさせる。
「エニアさん、大変失礼いたしました。こちらは愚息のニックと申します。この工房で見習いをしております。この馬鹿者にはよく言い聞かせておきますので……」
「あ、は、はい。私は全然大丈夫なので……」
エニアとしてはそう言わざるを得ない。
後ろではリガルとクードが、
「なあクード、よくいるよなー。ちょっと才能あるからって、あんな風にめっちゃイキってるやつ」
「4年前のリガルとかね」
「ぐはッ……」
「あはは。さすが君が投げたブーメランは威力が桁ちがいだねぇ~」
「言うようになったな……」
なんてバカな話をしている。
一方、ロナルドはニックに謝罪させようとする。
「お前も謝れ!」
「わ、悪かったよ……」
そこへタバサからもニックに向けた苦言を呈する。
「そうですよニック様。お客様に失礼な言動は慎んでいただきたく……」
「なんだよタバサ、俺サマは将来お前の主になる男だぞ。その俺サマに向かって……」
「ニ・ッ・ク・さ・ま」
「ちぇーっ、分かったよ……」
こうしてグダグダ感はあったものの、エニアとロナルド達の挨拶は交わされた。
▽ ▲ ▽ ▲ ▽ ▲ ▽
それから数日の間、エニアとロナルド達はお互いの技術を積極的に学んでいった。特にエニアは、ジョルジオの武装にも利用されている、熱・光・雷のコントロール技術を瞬く間に吸収していった。
そして1週間も経たずに自身専用の新武装の試作機を組み上げた。
反対に、ロナルド達はエニアの合金の製造方法を教わり、再現しようとしたのだが、どうしても上手くいかなかった。
なぜかエニアが行うと成功するのだが、なぜそうなるのかは分からず、ロナルド達はエニアの合金の製造方法を研究していた。
そんなある日、エニアは新武装の試作機のテストを行うべく、屋外の試験場へやってきていた。機嫌良く試し撃ちと各種設定値の調整を繰り返していくエニア。
そこへ、声が掛けられた。
「貴女、ちょっとよろしいかしら?」
「はい?」
振り向くエニア。
そしてそこにいたのは、数日前ジョルジオにクラウ・ソラスの調査許可をもらおうとしていた貴族、ラヴィナだった。
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